第36話 関白

秀吉は征夷大将軍になるために、朝廷に働きかけることにした。


秀吉「でもさ、朝廷に働きかけるって、どうすりゃいいのかな」


兵士「じつはですね…。きょうの朝刊にこんなのが入ってました」


秀吉「なにこれ」


兵士「征夷大将軍募集のチラシです」


秀吉「おお~」


兵士「裏が申し込み用紙になってます。これに記入してFAXすればOKですよ」


秀吉「さっそく応募しよう」


兵士「じゃあ、住所、氏名、年齢、職業、電話番号を書いてください」


秀吉「この欄はどう書けばいいの?」


兵士「どれです?」


秀吉「『あなたは源氏の子孫ですか? 平氏の子孫ですか?』っていう欄」


兵士「源氏と平氏って、知ってます?」


秀吉「名門ってことくらいは」


兵士「武家の2大名門ファミリーです。秀吉さんはどっちの子孫ですか?」


秀吉「どっちでもないよ」


兵士「それはマズイなぁ」


秀吉「だっておれ、もともと農民の出身だし」


兵士「あ、そうでしたね」


秀吉「そんな名門の血、ひいてないよ」


兵士「うーん…」


秀吉「じゃあここは空欄でいいか」


兵士「いや、それだと書類審査で落とされるかも」


秀吉「それ、困るね」


兵士「適当に書いちゃいましょう。源氏と平氏どっちにします?」


秀吉「じゃあ平氏」


兵士「即答ですね」


秀吉「『平』っていう字のほうが簡単で書きやすいしょ」


秀吉は申込用紙を記入し、朝廷にFAXした。




ここは朝廷。


朝廷の人1「おもしれー」


朝廷の人2「なに面白がってるのさ」


朝廷の人1「FAXじゃんじゃん来るぅ」


朝廷の人2「え、なんで?」


朝廷の人1「きょうの朝刊にね、征夷大将軍の募集チラシ、入れたんだよね」


朝廷の人2「マジ?」


朝廷の人1「そしたら応募のFAXじゃんじゃん来てさ。ククク」


朝廷の人2「そんなに面白いかな」


朝廷の人1「世の中がおれの手のひらで踊ってる気しない? ククク」


朝廷の人2「べつにしないけど」


朝廷の人1「いろんなところから申し込みのFAX来てるよ。一枚、見てみ」


朝廷の人2「ふーん」


朝廷の人1「志望動機とかみんな神妙に書いててウケるしょ」


朝廷の人2「あれ? なにこれ?」


朝廷の人1「ん」


朝廷の人2「応募用紙のこの欄。『あなたは源氏の子孫ですか? 平氏の子孫ですか?』ってやつ」


朝廷の人1「ああ、一応そういう欄もつくってみたの」


朝廷の人2「だって、征夷大将軍って源氏しかなれないじゃん」


朝廷の人1「うん」


朝廷の人2「わざわざここに『平氏です』なんて書いてくるやつ、いないよ」


朝廷の人1「だれかこれに引っかかるかな~と思って、罠っぽく仕掛けてみたんだけど…」


朝廷の人2「だれも引っかからないしょ?」


朝廷の人1「うん」


朝廷の人2「そんなのに引っかかる無知なやつ、いるはず…」


朝廷の人1「いた――!」


朝廷の人2「うそぉ?」


朝廷の人1「ほら見てコイツ。平氏ってかいてある」


朝廷の人2「うわー、イタいね」


朝廷の人1「イタすぎだね」


朝廷の人2「だれさ、それ」


朝廷の人1「えーとね……。Σ( ̄□ ̄; 秀吉さん!」


朝廷の人2「えっ」


朝廷の人1「秀吉さんだ…」


朝廷の人2「秀吉さんって、あの?」


朝廷の人1「うん」


朝廷の人2「秀吉さんほどの実力者なら、征夷大将軍にしないわけにはいかないしょ」


朝廷の人1「でも、平氏を名乗ってる人間を征夷大将軍にするなんて、前例がないし…」


朝廷の人2「ここで断ったら、秀吉さん怒るよ」


朝廷の人1「やっばいな~」


朝廷の人2「あ、いいこと思いついた!」


朝廷の人1「なに?」


朝廷の人2「征夷大将軍が無理なら、関白にしてあげれば?」


朝廷の人1「ああ、関白ね」


朝廷の人2「ぶっちゃけ関白のほうが偉いしさ」


朝廷の人1「そうだね。そうしよう」




翌日。

とある道端で…


朝廷の人2「こんにちは。朝廷のものです」


秀吉「あ、朝廷さんですか。FAX見てくれました?」


朝廷の人2「征夷大将軍への応募、ありがとうございました」


秀吉「えへへ」


朝廷の人2「というわけで、あなたを関白に任命します」


秀吉 (゚∀゚)ん?


朝廷の人2「おめでとうございます。じゃ私はこれで」




朝廷の人2は去った。




すこし離れた場所で…


朝廷の人1「どうだった?」


朝廷の人2「有無を言わさず去ってきた」


朝廷の人1「見て。秀吉さん、キョトンとしてるよ」


朝廷の人2「ホントだ」


朝廷の人1「無理もないか。征夷大将軍に応募したら関白に任命されたんだもんね」


朝廷の人2「わけわかんないもんね」


朝廷の人1「わけわかんないね」


朝廷の人2「…見て。まだキョトンとしてる」


朝廷の人1「必死に事態を理解しようとしてるのかな」


朝廷の人2「でもぜんぜん理解できないんだろうね」




秀吉は平氏を名乗ったため、征夷大将軍になれなかった。


そのかわり…

西暦1585年7月11日、関白に就任した。

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