短編集(仮)
伏見
#1 霊感テスト
少し前に流行った、霊感テストはご存じだろうか。
方法は下記の通りだ。
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1.目を閉じて、自分の家の玄関の前に立っている姿を想像する。
2.鍵を開けて家に入って行き、部屋の窓を全部開けていく。
3.開けた窓を全部閉め、最後に玄関に鍵をかけて出て行く。
以上の作業を頭の中で思い浮かべるうち、何かの生き物(人間)とすれ違ったシーンを想像した人には霊感がある可能性が高い。
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というものだ。
これから話すのは、私が霊感テストをした時の話だ。
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午前2時。前日の疲れから大昼寝をした私は、かれこれ2時間ほどまぶたを眺めていた。眠れないが暇ではある。かといって、スマホを見ると余計に眠れなくなることは自明である。
目をつむったままいろいろ考えていたところ、ふと霊感テストのことを思い出した。丁度いい機会だ。昔からオカルトは好きだし、霊感があればなぁと思ったこともあった。早速、一人暮らしを始めた時に住んでいたワンルームのアパートを思い出す。生まれ育った実家はとても広く、窓を全て開けるのが面倒だし、今の家でやるのは怖いから、昔住んでいた部屋で試してみた。
住んでいた建物をゆっくり思い出しながら、エントランスの前に立つ。エントランスの扉はオートロックだったけど、大概開いてて意味を成していなかった。若干建付けが悪くなった扉を引くと、きぃいいいと音を鳴らして開く。
エントランスを抜け、自室の前へ。扉からすぐの1階の角部屋。エントランスがザルな代わりなのか、部屋の扉は鍵穴が2つある。
解錠し、扉を開ける。部屋は最新の記憶、引っ越しを済ませた物がない状態だった。
懐かしさを覚えながらいると、後から入ってきた彼女が靴を脱ごうとしていた。ワンルームで玄関が狭く少し慌てている彼女に「ゆっくりでいいよ」と声をかけつつ、部屋を見渡す。見た感じ特に異常はなさそう──
──ん?なんで彼女がいるんだ?
振り返ると、まだ靴が脱げていない彼女。想定外の光景に呆然と立ち尽くす私。よく見ると彼女は玄関ではなく、玄関の外で靴を脱ごうとしている。部屋には入っていないのだ。狼狽える私の脳は1つの可能性を出した。
私が入室の許可をしてないから入れないのではないだろうか。
その瞬間、今まで下を向いていた彼女がガバッと顔を上げ、ニタァと口角を上げた。彼女ではない別の顔が、しわしわで土のような色をした顔が、こっちを向いて笑っている。怖くなった私は、そいつを突き飛ばしてドアを閉め、一気に意識を戻す。
目を開けるといつもの部屋だった。幸い、私にも彼女にも今のところ特に害はない。家の中に生き物はいなかったから、霊感はないってことだと思う。たぶん。
1つだけ気がかりなのが、ワンルームの窓を開けっぱなしにして戻ってきたことだ。何もないとは思うが、もう一度行く勇気はない。
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