女騎士の、な・い・し・ょ♡

さいとう みさき

私は誇り高きアスラド家の騎士だ!!


「国を守り、領地の住民の安全を守るのが我がアスラド家の役目、私が先陣を切って出なくてどうする!?」



 ここはファンタジーな世界。

 説明するのが面倒なので、ざっくりと。

 いま魔王軍の侵攻にアスラド家領主の娘で領主、エリクス=ラバ・アスラド十八歳がお付きの者たちを振り切り、鎧に身を包んで出陣をしようとしていた。



「しかしお嬢様、そのようなお姿では!!」


 気苦労を重ねるセバスチャン六十七歳はエリクスの足にしがみつき何とかそれを止めようとしている。


「ええぇい、放さんか!! 私が先導を取らなくてどうする!」


 そう言ってエリクスは大きな胸をぶるんと揺らす。

 何故そんな凄い事が分かるかというと、エリクスはアスラド家に伝わる魔法の武具を身に着けているからだ。

 巷ではそれは「ビキニアーマー」と呼ばれている。


「しかしお嬢様、嫁入り前の淑女がそのような格好を成されては!!」


「ええぇぃい、放さんか! この我が家に伝わる魔法の武具、『魅了のビキニアーマー』は乙女でなければ着こなせないのだ! しかも乙女ならばチャームの効果を利用して敵を骨抜きに出来る、魔族相手でも有効なのはご先祖様が実証済み!!」


 アスラド家に伝わる「魅了のビキニアーマー」は処女が身に着けるとその効果を発揮する。

 それはとても強力で、魔族ですら魅了し屈服させる。

 もっとも、若い男なら誰でも魅了……もとい、前かがみになるだろう。


 なにせ金髪碧眼、長い美しい髪を結い上げ、しなやかなうなじを露出し、抜群のスタイルを誇る美人のエリクスである。

 それがほとんど先端と大切な所しか隠していないような超マイクロビキニアーマーに身を包んでいるのだ。

 もうほとんど裸同然である。


「しかしお嬢様、そのような装備ではせっかくの柔肌が傷ついてしまいます!!」


「安心しろ! このアーマーは肌がむき出しした所も保護されていて、並大抵の攻撃では傷つく事は無い!! ほれ見ろ!!」


 そう言ってエリクスは何処からともなくデカい蝋燭を取り出し自分の肌にかける。



 ぽたぽた



「あんっ♡ あっつぅ! が、しかし見よ! 火傷一つ負ってないだろう?」


 何故か自分のお尻に蝋燭を垂らし、そこに傷跡が無い事をセバスチャンに見せる。


「しかしお嬢様!」


「まだ信じられんか? 誰か鞭をもて! そして私を打ってよみ!!」


 セバスチャンを安心させるためにエリクスは今度は従者に鞭を持たせ、自分を打たせる。



 ぴっしゃぁ~ん!!



「あふぅっ♡ ま、まだまだぁ! もっと打ってこぉい!!」



 ぴっしゃーんっ!

 ぴっしゃーんっ!!



「おふっぅっ♡! い、いいぞぉ、もっとだぁ♡」


 なんども鞭に討たれるエリクス。

 しかしダメージを受けるはずの肌は一向に裂ける事無くその柔肌を保っている。



「はぁはぁ、なかなかの鞭だったな♡ どうだセバスチャン、これでわかっただろう?」


「しかしお嬢様、万が一剣や槍でしたらいくら何でも……」


「まだわからぬか? ではこの盾はどうだ! 我が家に伝わる『拘束の盾』だ! これはこう、攻撃を受けると『バインド』の魔法が発動して相手をがんじがらめにするのだ! 見ていろ!!」


 そう言ってエリクスは盾を立てかけてそこに槍で攻撃をする。 

 すると攻撃を受けた楯は即座に反応して蜘蛛の糸の様に前面にあった穴から「拘束」の魔法のひもを吐き出す。



 しゅるしゅるしゅる~

 びしっ!



「あはぁん♡!!」


 エリクスはすぐさまその強力な魔法の縄で拘束される。

 その縛り方は何故か亀さんの模様の様にも見える。

 そして両手両足を後ろで縛られ、宙に吊らされる。


「ど、どうだ、んっ♡! み、見事な食い込み……もとい、縛られっぷりだろ♡」


「お嬢様ぁ~」


 縄がいろんなところに食い込んでいる。

 もちろんエリクスの大切な所にも。

 そして宙にぶら下げられているので、少しでも動くと更にイケナイ所に縄が食い込んでエリクスが変な声を上げる。


「んはぁん♡ 食い込みがすごぃいいぃん♡」


「お嬢様ぁっ!!」


 セバスチャンは使用人に手伝わせてエリクスを束縛から解放する。

 しかし何故かエリクスははぁはぁと赤い顔してよだれを垂らしていた。


「こ、これで分かったか? 我が家の秘宝が有れば私は無敵だ!」


「しかしあんなに縄が食い込んではいくらお嬢様でも!」


「あんずるな! 私は日ごろから木馬を使って鍛えておる! ほれ見ろ!!」


 そう言ってエリクスは今度はいつも使っている木馬にまたがる。

 何故か座る所が三角になっていて座るには痛そうだ。

 しかしビキニアーマーのままエリクスは木馬にまたがると、また奇声を上げる。


「おふっ♡ 食い込みがぁッ!!」


「お嬢様ぁーっ!!」


 既にセバスチャンは涙目である。

 しかしエリクスはしっかりと太ももに力を入れ、そのダメージを最小限にとどめている。


「こ、これで分かったかぁ! 私は日頃より鍛錬をしているから大丈夫なのだぁッ!!」


「お嬢様ぁっ! それ鍛錬違いますぅっ!!」


 流石にセバスチャンは突っ込まずにはいられなかった。

 ハンカチを取り出し、涙をぬぐいながら言う。


「亡くなった旦那様の代わりに領主をお勤めになるのは嬉しゅうございます。しかし、しかし年頃の若い娘が何と言う事ですか!」


「何故泣くセバスチャン? 私は家宝を使い迫りくる魔王軍の軍勢よりこの国、我が領地を守ろうとしているのだぞ?」


「それはご立派ですが、いくらなんでも破廉恥すぎます!!」


「破廉恥!? 何を言っているセバスチャン!? 私の何処が破廉恥なのだ!?」


 いや、もう全部と誰もが突っ込みを入れたくなるその様にセバスチャンは涙ながらに訴える。


「お願いですお嬢様、どうかまっとうな格好をしてください~!!」


「これの何処がイケないのだ!? そうか、防具だけがイケないのか!! ならあんずるな、我が家に伝わる秘剣、アナルバスターがある!!」


「もう名前からしてダメなやつですぅっ!!」


 流石にたまらずセバスチャンはエリクスの足に再度しがみつき、懇願をする。

 が、それでも平常運転のエリクスは何となく握り手が変な格好の剣を取り出し言う。



「これぞ我が家に伝わる秘剣、アナルバスターよ! いいかこれはだなぁ~」


「お願いもう止めてぇ~っ!!」


 ぼろぼろと涙を流すセバスチャンを他所に、エリクスはその剣をお尻に装備する。



 ずぶっ!



「あはん♡ よし、これで! はぁ~っ!!」


 何故かお尻に剣を装備して力んだエリクスの前方に、ぱお~んが生えて来る!?


「見よ、このアナルバスターの威力を!!」


「へっ?」



 ずぶっ!!



「あ”あ”あ”ぁ”ぁ”----ッ!!!!」


 哀れセバスチャンはエリクスに初めてを奪われるのだった。



 * * * * *



 その後、魔王軍に戦慄が走る。


 曰く、とある王国のとあるアスラド領と言う所にはアマゾネスが現れ、数々の勇猛なる戦士たちがことごとく尻を押さえる羽目になったと言う。

 中には精神的にも大きな負傷を負って、再起不能になる者もいたとか。

 特に若くて美男子の魔族はことごとく駆逐され、全員病院送りになっているとか。



「魔王様、如何なさりましょうか?」


「……そこだけは避けて通れ。それと、ヤられた戦士たちに哀悼の意を」



 魔王軍はその後アスラド領にだけは手を出す事は無かったと言う事だ……   




「女騎士の、な・い・し・ょ♡」


―― おしまい ――



**************************************

あとがき:

 いやぁ~やっぱコメディー入れると筆の滑りが違う。

 ここまで一気に書き上げてしまいました(笑)。

 たまにはこう言う異世界物も良いかなと。

 ビキニアーマー、最近はあまり見ないような気もしますが日本が広めたクレイジージャパンですよね?

 おおもとはアメリカか何処からしいですが、それを美少女に着させて戦闘させるとか、頭おかしいですよね?

 どう考えても傷だらけになりそうなのに……

 それに直に鎧のブラとか下着とか、蒸れるって(笑)。

 まぁ、見た目にはインパクト大で好いのですが~。

 そんなビキニアーマーを装着して変態お嬢様は今日もゆく♪

 楽しんでいただけたら幸いです。

 あ、今回判定は多分低いので笑っていただけたら十分です♡

 

  

 

 

 

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