第38話「巨大迷宮『栄華の夢魔』 4」
カンナ:調子に乗ったら痛い目に遭った。自重します。
アオ:企み中の悪魔。思ったよりもサクサク進むのでラッキーと思ってる。
ネネ:アオの隠し事をすべて暴くぜ! 気分は探偵。
ヴァン:全てにおいて空気。それこそが影の真価。寂しいとか思っていない。
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前回のあらすじ。光魔法はもしかしたら国を支配できるかも! でも使い手が使い手だった。
10階層の階層ボス、ビックキングスライムを倒したわたし達はその後も順調に階段を降り、20・30・40階層のボスを倒した。
「いやぁ、まさかキング系が連続だったとは。ゴブリンとか大変だったね」
「ゴブリンキングそのものはそこまで強いわけじゃないけどな。周りに従えているゴブリンの数が3桁超えているせいでめんどくさいモンスター扱いだ」
20階層のボスはゴブリンキング。ちなみにゴブリンっていうのは、緑の小さいおじさんみたいな見た目をした魔物。それになんか王冠みたいなのがくっついてちょっと大きくなったのがゴブリンキング。
「いやいや、そこまでってめっちゃ強かったよゴブリンキング。と言うか硬かったよ。ネネの攻撃がまともに入ってなかったじゃん」
「ヴァンの援護でどうにかなってただろ。闇魔法の連発は避けるべきだし、それだけをメイン武器にするわけにも行かないだろ」
「だから無理やり炎魔法だけを矯正させてたんだ。でも! そのせいで! 炎魔法があまり効かないセイレーンクイーン相手にどんなだけ苦汁をなめさせられたか!」
セイレーンというのは、上半身は女性。下半身は魚という魔物だ。たまに下半身が鳥のやつもいる。その中の女王、それがセイレーンクイーン。30階層のボスだ。
「アオだって知ってるでしょ! わたしは全く戦いの経験がないってこと!」
わたし達の中で、特にわたしは戦いというのに向いていないし経験が少ない。だから基本的にネネがメインとして作戦が立てられる。けど今回のセイレーンクイーンは水の魔物。炎が全く効かなかった。
「わたしが……ヒック、わたしが前線に立たされて……ヒックウッグ、怖かったぁ……っ!」
「メソメソすんなめんどくさい。カンナの光魔法なら何も問題ねぇよ。実際倒せたじゃんか」
「そうだけどそうじゃない!!」
「代わりに40階層のボスであるレッドオーガはヴァンがやってくれたじゃん」
40階層のボスであるレッドオーガ。でっかい巨体に鉄よりも硬い皮膚。天に伸びそうな角を持っているそれがオーガ。つまりアオの親戚。鬼である。アオ曰く鬼とオーガじゃ強さも格も何もかも違うらしいけど、些末な問題だ。
「うん、格好良かったね。風魔法を鎌鼬みたいに攻撃してさ」
「いい魔法の使い方だったよ。魔力の流れ方も他の同い年の魔法使いと比べれば頭一つ抜けているだろうよ」
「ねー……」
本当に格好良かったよ。うん……本当に。
「ご、50階層にいたボスもすごかったね。マスターリッチだっけ? 魔法を使ってくる魔物」
「あいつはなぁ、基本的に使ってくる魔法は火と土。それ以外を使うリッチはいない。だからそれを理解できていれば勝てる相手だ。つまり雑魚だ」
それはアオだけだアホ脳筋。マスターリッチの使う魔法は確かにアオの言う通りだけど、その練度や精度は私達なんかと比べ物にならない。ネネの炎魔法が押し負けたんだから。……普通に強くて泣きそうだったんだけど。今まで戦ってきた相手でもトップ走ったよ! アオのバカ!
「ほんと、大変だったなぁ……」
「……先程から聞いていたけど、なんで前回のあらすじ。みたいな話し方しているのかしら? なんで20階層から50階層までの今までを振り返っているの」
それはもちろん、色々すっ飛ばしたからです。大人の事情です。そこに深く突っ込んだら駄目です。
「……俺の戦闘シーン……」
それは本当に、どんまいです。
「で、でも本当に50階層に行けるなんて思ってもいなかったよ。階段降りてばっかだけど流石に疲れた」
「そうだな。この裏ルートから行けば道中魔物に遭遇することは基本ないし、いい感じだから今日はここまでだな」
底が見えないほどの長い階段。その踊場でアオが立ち止まる。アオの休息の言葉に、わたし達は腰から下の力が一気に抜けた。自分でも気づかないうちに肩に力が入りすぎていたらしい。それが全部抜けてもう動けなかった。スライムよりもデロデロだ。
「あ、アオ〜……」
「ハハッ、よくもったほうだな。頑張ったじゃねぇか。筋はいいほうだったぞ?」
「最初から最後まで見守っていた人にだけは言われたくないわよ」
そうだそうだその通りだ! 一切手伝わなかったんですけどこの鬼悪魔! オーガよりも酷い!
「オーガ程度と同列に扱うんじゃねぇ。……へいへい、こっからは私が面倒見てやるよ。初回サービスってやつだ」
「わたし唐揚げ食べたい」
「私はオムライス」
「……寝たい」
「わがままっ子かよ、お前ら。そんな上等なもんダンジョンにあるわけねーだろうが。携帯食だ、携帯食」
こうして、わたし達のノンストップダンジョン、50階層攻略は順調に幕を下ろした。
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