第25話「その女、公爵令嬢失格 6」
カンナ:あくどい事を考えていても空回りやすい。なぜならアホだから。
アオ:割と考えていることが顔に出やすい。面倒なものは嫌いだ。
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前回のあらすじ。カンナの一世一代の賭けが始まる。鬼悪魔相手にディベートで勝てるのか!?
『……はぁ? 何いってんだ』
「だから、わたしが戦うの! 闇魔法と対抗できるのは光魔法だけ! ならわたしが戦うほうがこの状況を変えれるかも知れない!」
自分で言うのも何だけど、正直勝算は薄いかも知れない。そもそもあのアオにディベートで勝てるのかなんてわかんないし! でも、ここでアオの協力がなくちゃ間違いなくネネさんは魔力切れを起こしてしまう。あの様子じゃ、自分の生命活動に必要な魔力すらも使っているだろうし。
だから今ここで大事なのは、如何にしてアオをやる気にさせるかだ。
『お前なぁ、ガキのお遊びじゃねぇんだぞ。カンナが行ってどうこうなるならとっくにどうにかしているわ。第一、お前魔法なんてまともに操れないだろ』
「ん……けど、アオ一人でもどうにもならないのは事実なんでしょ?」
そうだ、アオ一人でどうにかならないならここでわたしと共闘するっていう手もある。アオの選択肢を減らして、戦う戦わないの前提を「戦う」ということにしておけば、アオは戦ってくれるかも知れない。こういうのをなんとかの何とかっていうんだよね!
『……いーや、やっぱり私があのガキのために戦うなんて筋が通ってないし、カンナに危険が及ぶならまず駄目だな。却下』
「す、筋……」
やっぱり破れかぶれの交渉じゃ駄目だ。わたし自身を交渉のカードにしたら、それこそアオは無理やりでもわたしを連れ戻すはず……。じゃ、じゃあどうしたら。うーんうーん。
『というわけで、私達はここでお暇だ。後のことなんて私に任せとけば』
「と、友達を! 助けたい!!」
『!』
結局悩んだ末に出てきた言葉は、自分でも何を言ってんだと呆れるような言葉だった。もっと別に言葉が……ああ駄目だ! 全然出てこない!!
「友達を助けたいの! だから、アオが駄目だって言ってもわたしは助けたい!!」
『……』
黙るアオに冷や汗が流れる。頑として動きませんスタンスを取るわたしを見下ろすだけで、アオは何も言ってこない。なんで何も言ってくれないのこの人。いや、人じゃないけど。ええ、今何を思っているの。何考えているの。怖いよーママー!
『……はぁーーーー……、しゃーねぇな』
「えっ」
『アイツ、助けたいんだろ。なら、お前も腹くくって戦えよ』
顔を上げた先にいたアオの顔は、仕方なさそうに笑いながら刀を手にした。魔法維持が難しいこの状況で、こうも完璧に形を保っているアオにも驚きだけど、それよりも驚いたのはアオの言葉だった。
「い、いいの?」
『ま、このまま行けばカンナに友だちができないかも知れねぇしな。それにちょうどいい機会だ。お前に魔法戦闘を教えてやる』
相手が圧倒的な魔法技術も魔力量も誇っていた場合の、戦い方をな。そう笑うアオのなんと邪悪な顔なのでしょう。
「……わかりました」
多分、わたしなにか間違えた気がする。
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さて、そもそもカンナが来た時点で助けるつもりではあったが、なんともまぁいい感じに機会を作ってやれたじゃねぇか。そうほくそ笑む私を知ってか知らずか、カンナは青ざめた顔をして覚悟を決めていた。
「うあああああああああああ!!!」
周囲を破壊しながら大暴れするネネ・ゴールデン。あの様子を見るに、意識の混濁による暴走状態で間違いない。トラウマでも刺激されたのか?
『よしじゃあカンナ。あの暴走状態のお嬢さんが放つ魔法。あれは何だと思う?』
「え! えっと、闇魔法で魔法も物体も何もかもを飲み込む魔法……でしょうか!」
『その通り。あの魔法名をアンチホールと呼ぶ。ま、見ての通りやばい魔法だ』
「そ、それであれをどうすればいい?」
『まぁ、色々方法はあるが今回は光魔法の使い手であるお前がいるのであの方法を試すことにする』
光魔法と闇魔法。コイツラは相互関係にあると言ってもいい。光なくては闇生まれず。闇なくては光は輝かないってな。物理的にも存在するルールは、無論魔法でも通用する。
「でもわたし、ライトボールしか出せないよ? 攻撃とかもっと無理だし」
『問題ない。そのライトボール、飛ばして好きなところに浮かせられるか?』
「そ、それはできるけど。何個も出来ないよ?」
『なら、私の合図でライトボールをあのアンチホールの近くに動かしてぶつけろ。その後は魔法を練ってライトボールを作れ』
何を企んでるとでも言うような顔をするカンナに私は笑いかけ、後ろにいる黒フードの男に視線を合わせる。こいつ、見たことあると思ったら前回の誘拐犯じゃねぇか。
『おい、お前はあの女がカンナを補足しづらいように抱えて逃げろ。お前たちは私のために隙を作れ』
「え、あ、はい!」
『魔法さえどうにかしてしまえば、もう敵じゃねぇ。後は全部私がどうにかできる』
頷く男はカンナを抱えて走る。私と反対側に回りながら、あの女にも補足しづらいように。これで準備は整えた。よーし、じゃああの文献が正しいのかどうか試してみようじゃないか。
『カンナ! やれ!!』
「! ライトボール!!」
私の合図通りにライトボールがアンチホールの近くに飛んでいく。そして、ライトボールとアンチホールがあと残り数メートルという距離になった瞬間、アンチホールが食いつくようにライトボールの近くまで飛び飲み込んだ。やっぱりな。
「ええ!? なんでアンチホールが動いて!」
『カンナ! 驚くのは後でにして速く練ろ! すべてのアンチホール近くにライトボールを飛ばしてなるべくアイツとの距離を離せ!!』
「は、はいぃい!!」
ネネ・ゴールデンの近くにアンチホールがあるのは正直、魔法で近づくのが難しくなる。だが、ここでライトボールを使いなるべく外に寄せれば……。
「! 中央が空いた!」
『フッ、そうだなよくやった』
アンチホールがさきほど同じ数で増えないということは、それがあの女の限界値。本能的に死なないよう魔法を練らないようにしているのだろう。お陰でへっぽこ光魔法で対処できるようになった。
『千先・幽界渡』
身体強化魔法を発動させ、ライトボールを盾にしながらアンチホールをくぐり抜ける。死水刀を練りながら、ネネ・ゴールデンの近くに潜り込んだ。
『終わりだ。デットライン!!』
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