第49話
高校生から先は
もう大人の世界
制服という重りを
小中高と着けられたかと思うと
突然、好きな服を着ていいよと
世の中に放り出される
何を着ればいいのか
どこに向かえばいいのか
自分で考えながら進めと
背中を押される
言葉を話せるから
自由に動けるから
考える事ができるからと
世の中に放り出される
覚束無い羽ばたきで
巣立った小鳥たち
自分だけはきっと上手くいくと
自分だけには幸運が訪れると
勘違いをしながら羽ばたきはじめる
上手くいかない
それが当たり前で
困難の先に
穏やかな自分が待っているだけだ
社会に放り出され
「人生」というたった2文字から
謎解きを強いられる
1人で乗り越える困難と
みんなで乗り越える困難を見分け
自分の感情や体調をコントロールしながら
論理的に問題を解決し
感情的に仲間を思いやり
より良いものを選択し
正しい相手に、正しく求め
正しい相手に、正しく与える
正しいタイミングで
正しい方法で
この全てを社会で学び
習得し実践しなければならない
教科書も先生も自分で見つけなければならない
「人生」
という教科は
生まれた時からそこにあるのに
社会に放り出されて初めて
目の前に山積みにされる
同級生や先生や後輩たちと
一通り写真を撮り終えた文月菜々は
ふぅとため息をついて
抱えきれない花たばを
ヨイショと持ち直す
「半分持とうか?」
「ううん大丈夫!ありがと」
「菜々ちゃんは打ち上げ行く?」
クラスメイトが菜々に声をかける
「うん!行くー」
「やった!行こ行こ!」
「菜々ちゃんも行く?やった!」
文月菜々はこれからも
太陽のように輝き
周囲を焦がし続けるだろう
少なくとも俺にとって菜々は
近寄るほどに自分を見失って行くような
とても危険な存在だった
この先、菜々の隣に
居続ける事が出来る人が現れるだろうか
それはどんな人だろうか
美術室の窓越しに
俺は菜々の最後の制服姿を見ていた
ふと菜々がこちらを見て微笑みかける
俺はドキリとして
軽く手をあげると
もう菜々は歩き出していた
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