第10話

呼び出されるのは久しぶりだ


「放課後ちょっと残ってて」

「え?はい」


緊張した様子を隠すように

ぎこちなく笑ってそれだけ言うと

新田先輩は一瞬で去っていった


夜子は驚いて気の抜けた返事をし

告白なのかも、と思うと同時に

顔が熱くなった


背も高く顔も好みだけど

後は何も知らない


始まりはいつもその程度だ


「夜子!帰ろー」

「あーうん」


菜々と教室を出ると

新田先輩が夜子を待っていた


「あっ」

と、小さく声を出す菜々は

何かを察したように


「先に行くね」

と目を輝かせてキラキラの笑顔になった

菜々は眩しい


目を新田先輩に向けると

こちらもまた目を輝かせて

満面の笑みでこちらも見ている

少し眩しい…



「俺と付き合って欲しい」


返事は後日でいいというので

フワフワした気持ちのまま帰った


すぐOKするつもりだったのに

「考えて返事ちょうだい」

と言われお預けされた気分になった


甘え上手ならここで

相手をうんと待たせて

絶妙なタイミングでOKして

相手を夢中にさせて

追いかけさせるのだろう


夜子は何となく

この恋も長くは続かないだろうと感じた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る