第3部:絆と挑戦

第3章:苦悩と成長

翔太がアルティメット部に入部してから数ヶ月が経ち、毎日の練習を通じて、彼は少しずつフリスビーの技術を身につけていったが、まだまだ完璧とは言えない。特に試合形式の練習になると、ミスが目立つようになり、自分の未熟さに苛立ちを覚えることが多くなった。


ある日、部長の悠馬が練習後に声をかけてきた。「翔太、最近どうだ?」


翔太はため息をつきながら答えた。「正直、思うように上達していない気がします。特に試合になると、緊張してしまって…」


悠馬は優しく微笑んだ。「それは誰しもが通る道だよ。重要なのは、その壁をどう乗り越えるかだ。」


次の日の練習では、翔太のパフォーマンスはさらに悪化していた。何度もパスをミスし、ディフェンスでも相手に抜かれることが多かった。そんな中、奈々が気づかれないようにそっと翔太に声をかけた。


「翔太くん、ちょっと休憩しようか。」


翔太は悔しさと共にベンチに座り、奈々の差し出す水を受け取った。「ありがとう、奈々さん。でも、なんか情けなくて…」


「そんなことないよ。誰でも上手くいかない時期はある。大事なのは、その時どうやって乗り越えるかだよ。」奈々は優しく微笑んだ。


翔太はその言葉に少し救われた気がしたが、それでも心の中には不安が残っていた。


その夜、翔太は自室で一人フリスビーを持ちながら考えていた。どうすればもっと上手くなれるのか、どうすればこの壁を乗り越えられるのか。すると、ふと恭介の姿が浮かんだ。


「恭介はどうしてあんなに自信満々なんだろう?」翔太は自問した。


翌日の放課後、翔太は恭介に直接尋ねることにした。練習が終わった後、二人きりの時を見計らって声をかけた。


「恭介、ちょっと聞いてもいいか?」


「なんだ?」恭介は興味深そうに翔太を見た。


「どうして君はいつも自信満々でいられるんだ?僕は試合になると緊張してしまって、うまくいかないんだ。」


恭介は一瞬考え込み、それから真剣な表情で答えた。「自信か。俺だって最初は緊張してたよ。でも、それを乗り越えるには練習しかないんだ。ミスを恐れずに、何度も何度も挑戦することだよ。」


その言葉に翔太は少し勇気をもらった。「ありがとう、恭介。僕ももっと練習するよ。」


次の日から、翔太は今まで以上に熱心に練習に取り組むようになった。ミスを恐れず、何度も何度も挑戦し、少しずつ自分の限界を超えていった。恭介もまた、そんな翔太の姿に刺激を受け、共に成長していった。


ある日、部長の悠馬が全員を集めて言った。「次の大会が近づいている。みんなで力を合わせて、最高のパフォーマンスを見せよう。」


翔太はその言葉に力強く頷いた。「はい、全力を尽くします!」


翔太は足が遅いことを自覚していたが、持ち前の体力を活かして相手を追いかけ、食らいつくスタイルのディフェンスを確立していた。彼の粘り強いディフェンスはチームにとって大きな力となり、次第にその存在感を増していった。


奈々もその努力を見逃さず、ある日の練習後に翔太に声をかけた。「翔太くん、最近のディフェンス、本当に素晴らしいよ。みんなも感心してる。」


「ありがとう、奈々さん。でも、まだまだ改善の余地があります。」翔太は謙虚に答えたが、その目には自信が宿っていた。


大会の日が近づく中、翔太は自分の成長を実感していた。試合形式の練習でも、以前のような緊張感は薄れ、集中してプレーできるようになっていた。そして、恭介との絆も深まり、お互いに助け合いながら成長していくことができた。


大会当日、翔太は胸を張ってコートに立った。自信に満ちた表情で、仲間たちと共に戦う準備が整っていた。彼の心には、奈々や悠馬、そして恭介から受けた数々の助言と励ましが刻まれていた。


「よし、行くぞ!」翔太は力強く叫び、試合に臨んだ。


その瞬間、彼はもう一人の初心者ではなく、チームの一員として戦う覚悟ができていた。翔太の苦悩と成長は、彼を新たな高みへと導く力となった。









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