レベル1の呪われ戦記 邪神の呪いを祝福に
天風 繋
序章 スライム草原
【統合版】スライム草原で
序章がとても長くなっています。
本編は、24話からになります。
それまでは、延々に主人公:聖しか出てきません。
淡々とした物語になりますので、読み飛ばしで第1章からをお勧めします。
------------------------
はぁはぁはぁ
僕は、肩で息をしていた。
目の前には、水色のブヨブヨした生き物がいた。
多分、ブルースライムだと思う。
手に握る短剣の柄に力が入る。
短剣で切りつける。
ぶにょっとした感触がする。
ブルースライムの身体が半分に割れる。が、直ぐに元の形に戻ってしまう。
「切れない」
何度も何度も切りつける。
でも、その度に元に戻ってしまう。
「なんでだよ…」
そう呟いた瞬間。
スライムが、僕にタックル?をしてきた。
僕は、咄嗟に短剣を突き刺した。
パァン
風船の割れるような音がして、スライムが破裂した。
はぁはぁはぁ
僕は、地面にヘタレ込んだ。
彼是、5分ほど戦っていたみたいだ。
右手の中にある短剣の柄。
僕は、柄を離せずにいる。
力を籠めすぎて、握り手を弱めることが出来ない様だ。
左手で、ゆっくり指を開いていく。
カラン
金属の乾いた音がして、短剣が地面に落ちる。
右手の感覚がちょっと無い気がする。
僕は手を振る。
手は、血が通っていないように青白い。
「スライムは、切っちゃダメなのか…次からは突き刺そう…突き刺す…スライムは風船…」
僕は、反省点を反芻する。
やがて、空を眺める。
多くの浮島が、視界に入る。
どう見ても、知らない空だ。
空には、大小様々な島が浮いている。
と言っても、かなり上空だ。
視線を下ろす。
僕の周りには、草原が広がっている。
地平線が見えるほどに何もない。
いや、草はあるから何もないわけではないか。
見渡す限りの草原。
拝啓。
父さん、母さん。
それに、ペットのにゃあ助。
宮前
敬具。
1時間ほど前。
僕は、気が付いたらこの草原に放り出されていた。
どうやってここに来たかは、知らない。
僕の傍には、血のような赤黒い封蝋の施された手紙が置かれていた。
『やあやあ、宮前 聖くん。
君は、これからこの草原にいるモンスターと戦ってもらうよ。
見事全滅させられたらいいことがあるから頑張ってね。
ああ、そうそう同封したカードの中に必要な物は入れてあるから確認してよ。』
そんな内容の手紙と手紙にも書いてあった名刺サイズのカードが同封されていた。
僕は、カードを手に取り眺める。
上下左右とじろじろと見る。
ドサッ
何かがカードから落ちる。
ナイフ…短剣、革袋のような物、名刺サイズの別のカードだった。
革袋は、ぶにょぶにょとする。
ああ、液体が入っているのか。
多分、水袋ってやつかな。
氷嚢みたいなものか。
名刺サイズのカードには、僕の名前やステータスが書かれていた。.
宮前 聖
レベル1【封印】
HP10
MP10
攻撃1+1 防御1+2
器用1 敏捷1
魔力1 幸運1
武器 無銘の短剣 攻撃+1
防具 ただのTシャツ 防御+1
防具 ただのジーンズ 防御+1
称号 異世界人、邪神に呪われし者
レベルの横の【封印】ってなに?
邪神に呪われてるの?僕。
僕は、訳が分からなかった。
うーん、悩んでもわからないものは分からない。
僕は、水袋をカードに押し込む。
うん、入るな。
取り敢えず、こっちのカードはストレージカード。
で、あっちはステータスカードかな。
それから、僕は草原を彷徨ってさっきのブルースライムに出会ったんだ。
---------------------
ブルースライム【1/100】
【無効】斬撃、水、風
【弱点】刺突、雷、火
【反射】打撃
【スキル】再生、分裂
-------------
ブルースライム1体だけなのに凄く疲れた。
僕は、足を伸ばして座り空を仰ぐ。
そういえば、太陽の位置が変わらない気がする。
ぐるりと周囲を見渡す。
大小の浮島、太陽…あれ?あっちにあるよな。
こっちにもある。
僕は、目を見開いた。
空には、2つの太陽が昇っていた。
僕から見て、左右の空にある。
もしかすると、ずっと日中なのかもしれない。
若干の夕日と朝日が存在するかもしれないけど。
右の太陽が沈んでも、もう1つの太陽が空にあるだろうな。
きっと繰り返すのだろう。
1体どれほどモンスターがいるんだろう。
スライム以外もいるのだろうか?
僕は、ストレージカードから水袋を取り出して口に水を含む。
水袋の重さが変わらない気がする。
飲んだから容量が減ったはずなのに。
僕は、首を傾げながらストレージカードに水袋を収納する。
そして、立ち上がる。
地面に落ちている短剣を右手で握る。
握力は戻ったみたいだ。
「よし、頑張ろう」
僕は、索敵を始める。
耳を澄ませる。
ちょっと、遠くの方でぽよーんぽよーんと音がする気がする。
水風船が跳ねるような音かな。
この音が、スライムの音だと思う。
多分こっちかな。
僕は、音がする方へと歩いていく。
ぽよーん
ぽよーん
音に近付いていく。
やがて、姿が見えた。
緑色のボディ…グリーンスライムってとこかな。
取り敢えず、気付かれてはいない様だ。
僕は、忍び足で近づく。
右手で柄を握り、左手で柄頭を押さえ…グリーンスライムを突き刺した。
パーン
乾いた音がして、グリーンスライムが破裂した。
ふー、難なく倒せた。
短剣よりも槍とかの方がいいな。
弓矢とかでもいいけど…使い方が分からないや。
槍なら、木の枝と縄とか蔓とかあれば短剣を括ってできそうだな。
でも、見た限り木なんてない。
ずっと、草原…平原が続いている。
だから…無い物強請りをしても仕方ないな。
僕は、再び歩き始める。
ぽにょん
ぽにょーん
少し変なボールが弾む音が聞こえる。
僕は、そこへと向かう。
結構近い気がする。
どんどん音に近付いていって気がする。
やがて、姿が見えると真っ白なスライムがいた。
うーん、ホワイトスライムかなぁ。
僕は、忍び足で近づく。
近付く度に、気温が下がる気がした。
やがて、ガチガチと僕の歯が音を立てる。
寒い。
僕は、持っていた短剣をスライムに投げつけた。
パンッ
カラン
短剣が突き刺さり、スライムが破裂すると短剣が地面に落ちた。
僕は、短剣を拾いに行く。
「冷たっ」
短剣が、氷の様に冷たくなっていた。
白いスライムは、冷たい。
あのまま、短剣を持って突いていたら凍傷していたかもしれない。
僕は、短剣を拾い上げるのを止めて腰を下ろし休憩をすることにした。
------------------------
グリーンスライム【1/100】
【無効】斬撃、風
【弱点】刺突、火
【反射】打撃
【スキル】再生、分裂
ホワイト(?)スライム【1/100】
【無効】斬撃、水、風
【弱点】刺突、火
【反射】打撃
【スキル】再生、分裂
-------------
そう言えば、疲れはあるけれど眠気はないな。
それに、食欲も。
あるのは、痛みと疲れと渇きかな。
この世界は、僕の常識から外れているのかもしれない。
まあ、それにスライムじゃ食べられる気がしないし助かる。
でも、ここってスライムしかいないのかなぁ。
地面に置いていた短剣から水蒸気が上がっていく。
もう少ししたら握れそうかな。
退屈だ。
なにもない。
景色も単調で雑草しか生えていないし。
うーん、RPGとかなら薬草とかそう言ったものがありそうな気がするけど。
てか、薬草ってそのまま食べていいのかな?
煎じたり、煮詰めたりするのかな。
でも、そんな道具はないしどれがどれだか分からないしな。
僕は、短剣に触れる。
ちょっとひんやりするがもう大丈夫だ。
僕は、また歩き出す。
耳を澄まして索敵をする。
ポヨッ
ポヨッ
ちょっと軽いボールの音がする。
うーん、こっちかな。
音のする方へと向かう。
ポヨッ、ポヨッ
ポヨッ、ポヨッ
ポヨッ、ポヨッ
音が多い。
やがて、視界に入ってくる。
赤いスライムが3体身体をぶつけあっている。
うーん、じゃれ合っているのかな。
えっと、レッドスライムでいいかな。
僕は、駆け出す。
そして、まず1体に短剣を突き刺す。
シュー
空気が抜けていくような音がした。
そのまま、次のスライムに刃を向ける。
スライムが、僕に向かってくる。
足にタックルされる。
だが、痛みはない。
布のボールがぶつかったような感じだ。
ポヨッ、ポヨッ
擦れ違いざまに、1体に短剣を突き刺した。
シュー
また、空気が抜ける音が聞こえた。
最後の1体。
ポヨッ
ポヨッ
僕に、再びタックルをしてくる。
うー、邪魔過ぎる。
僕は、スライムをサッカーボールの様に蹴る。
だが、飛距離は伸びない。
精々、1mくらいかな。
でも、これくらい離れていれば間合いは詰めやすいかな。
僕は、短剣を突き刺す。
シュー
空気が抜ける音がした。
ふー、疲れた。
僕は、地面にヘタレ込む。
短剣を地面へ突き刺す。
そして、空になった手を宙で振る。
「そうか、1体だけじゃないんだな。
でも、ダメージはない。
気を付けないとな」
僕は、呟いた。
あれが、もしホワイトスライムだったら僕は勝てなかったかもしれない。
あの冷気は、脅威だ。
僕は、ほーと息を吐く。
そして、視界を下ろす。
そこで、地面に何かが落ちているのに気付いた。
虫眼鏡…ルーペぽいな。
レンズは、20cmほどの大きさ。
僕は、気になってルーペを拾い上げる。
レンズを覗く。
うーん、ただのルーペぽいけど。
-----------------------------
レッドスライム【3/100】
【無効】斬撃、風
【弱点】刺突
【反射】打撃
【スキル】再生、分裂
ルーペ(?)
20cmレンズのルーペ
ただのルーペではなさそうだ
ルーペを翳していろんなものを見てみる。
あ、太陽はダメだな。
目が死ぬ。
そうしていると、短剣を見た時に不思議なモノを見た。
『???の牙』
変なウィンドウが見えた。
ゲームのウィンドウのような物だ。
そこには、『???の牙』と書かれている。
『【特性】不滅、不屈』
特性という物に、不滅と不屈があった。
意味的には、まあ不滅は無くならないかな。
不屈だと、曲がらないって感じかな。
『【スキル】???【封印】、???【封印】』
スキルがあるみたいだけど、今は使えないみたいだな。
なんなんだろう。
「このルーペって、もしかして鑑定が出来るってことかな」
僕は、ストレージカードにルーペを仕舞う。
代わりに、ステータスカードを取り出す。
『宮前 聖
レベル1【封印】
HP10
MP20
攻撃4+1
防御1+2
器用2
敏捷2
魔力2
幸運1
武器 ???の牙 攻撃+1
防具 ただのTシャツ 防御+1
防具 ただのジーンズ 防御+1
称号 異世界人、邪神に呪われし者』
あれ?ステータスの能力値が上がっている。
攻撃が3つ、器用が1つ、敏捷が1つ、魔力が1つと上がっている。
攻撃の3つは、きっとさっきのレッドスライムを倒したからかな。
そう考えると、ブルースライム、グリーンスライム、ホワイトスライムをそれぞれ倒しているからたぶんそれぞれに能力値があがったんだろうな。
MPは、きっと魔力が上がったことの副次性かな。
折角ルーペを手に入れたんだから次からはスライムを鑑定してから戦ってみよう。
???の牙…あー何の牙かわからないから短剣でいいや。
僕は、短剣を拾う。
折れない、曲がらない。
なら、無茶が出来る。と思う。
まあ、僕の身体の方が無茶が出来ないだろうけど。
僕は、また索敵をする。
プニョ
プニョ
なんだか、変わった音がする。
音に導かれるように向かう。
そこには、アメーバのような紫色のスライムがいた。
僕は、ストレージカードからルーペを取り出す。
そして、スライムを鑑定する。
『パープルスライム【0/100】
【無効】斬撃、風
【弱点】刺突
【反射】打撃
【スキル】再生、分裂
【能力値】幸運+1』
パープルスライム…思った通りの名前だった。
それに、【0/100】ということは100体いるってことだな。
スキルに、再生や分裂があったのか。
継戦する時には気を付けないと。
僕は、短剣をパープルスライムに突き刺す。
プシュ
缶のプルタブを開けたような音がした。
その次の瞬間。
僕は、横からの衝撃に尻餅を付いた。
ボムッ、ボムッ
空気の一杯入ったボールの音がした。
視線を向ける。
黄色い球体のようなスライムがいた。
ルーペを使っている余裕はない。
イエロースライムが、僕に向かって跳ねて来る。
僕は、短剣を前方に差し伸べるとそこに向かってイエロースライムが突き刺さった。
バーン
銃撃のような破裂音がした。
耳が痛い。
僕は、尻餅を着いたまま力が抜ける。
びっくりした。
ふと思った。
スライムには、再生と分裂というスキルがある。
でも、僕にはないのだろうか?
僕は、ステータスカードを取り出す。
宮前 聖
レベル1【封印】
HP10
MP20
攻撃4+1
防御2+2
器用2
敏捷2
魔力2
幸運2
武器 ???の牙 攻撃+1
防具 ただのTシャツ 防御+1
防具 ただのジーンズ 防御+1
称号 異世界人、邪神に呪われし者
この情報しか書かれていない。
そう言えば、ステータスカードにルーペを使ったことがないな。
これって、ステータスカードでいいのかな?
僕は、ルーペも取り出す。
うーん、ルーペの本来の名前は何だろうか。
分からない。
ルーペをステータスカードに使ってみる。
特に変わった所はなさそうだけど。
カードをひっくり返してみる。
すると、免許証の裏側みたいな罫線が引かれている。
だが、そこに何かが書かれてはいない。
ステータスカードはステータスカードであっているみたいだ。
それにしても、ルーペって使い辛いな。
眼鏡とかになれば苦せず使えるんだけど。
だってさ、片手埋まっちゃうじゃん。
はぁ、さあ次に行こう。
僕は、短剣を拾い立ち上がる。
右手に短剣、左手にルーペと言う装いだ。
そして、耳を澄ませる。
ポニョン
ポニョン
どこかで聞こえる。
少し小さな音だ。
僕は、歩き始める。
しばらくすると、音は大きくなる。
確か、この音はホワイトスライムの物だった気がする。
あれは、近づいたら危ないよな。
また、凍えちゃう。
短剣を投げつけよう。
ポニョン
ポニョン
だいぶ音に近付いた気がする。
5mほど先に、ジャンプをしているスライムを発見する。
光が当たり、輝いて見える。
あれ?白くない。
寧ろ、透明…ガラス玉みたいな見た目だ。
僕は、腰を下ろして背を低くする。
そして、ルーペで覗く。
『マナスライム【1/100】
【無効】斬撃
【弱点】刺突
【反射】打撃
【スキル】再生、分裂
【能力値】魔力+1』
なるほど、マナスライムって言うのか。
ん?ステータス以外に説明がある。
『魔法の使用が可能なスライム。
身体の色は、使える魔法の属性によって変わる。』
魔法!魔法があるんだ。
使ってみたいなぁ。
やっぱり、ファンタジーの世界にいるんだから使いたいよな。
それにしても、使える魔法で色が変わるのか。
つまり、前回のは冷気が漏れていたから氷ってことかな。
じゃあ、あれはなんだろう。
透明って何の属性があるんだろう。
僕は、ルーペをストレージカードへと仕舞う。
そして、じりじりと近づいていく。
4m…3m…2m…そして、1m。
特に、熱いとか寒いとかないな。
よし、ここまで近づければ!
僕は、短剣をマナスライムに投げつけた。
パンッ
カラン
短剣が刺さり、マナスライムが破裂した。
僕は、短剣に近付いていく。
そして、恐る恐る短剣に触れる。
うん、大丈夫そうだ。
短剣の横に、小さなビー玉のような石が落ちているのに気付いた。
さっきのスライムと同じ色…透明なビー玉だ。
僕は、ルーペを取り出す。
『変化の魔石。
道具を一度だけ別の形状に変化させることが出来る。』
お、これは欲しかったものだ。
えっと、使い方は…うーん、分かんない。
取り敢えず、ルーペに重ねてみようかな。
「変化の魔石を使用」
そう言った瞬間。
ルーペを含む魔石が光り出した。
おお、こうすれば使えるのか。
「眼鏡の形状へ」
それと共に、ルーペの形状が徐々に変わっていく。
丸眼鏡…えっとラウンド型の眼鏡になった。
僕は、早速眼鏡を掛ける。
うん、ぴったりのサイズだ。
これで、鑑定がしやすくなるぞ。
それから僕は、手当たり次第にスライムを倒していった。
鑑定が使えることで、今まで分からなかったことが分かるようになった。
まず、ここ。
『スライム草原
低級のスライムが生息する宮前 聖専用特殊エリア《インスタンスダンジョン》』
そう、ここはインスタンスダンジョンらしいのだ。
それも、僕専用の。
だから、僕しかいない。
ちょっと心に来るものはある。
それと、低級のスライムしかいない。
今まで戦ったのは、ブルースライム、グリーンスライム、レッドスライム、イエロースライム、パープルスライム、そしてマナスライムの6種類。
寧ろ、この6種類としかで会っていない。
今は、マナスライム以外のスライムと10体ずつ戦った。
結局、変化の魔石を手に入れてから1個もドロップアイテムを見ていない。
宮前 聖
レベル1【封印】
HP110
MP30
攻撃 11+1
防御 11+2
器用 11
敏捷 11
魔力 3
幸運 11
武器 ???の牙 攻撃+1
防具 ただのTシャツ 防御+1
防具 ただのジーンズ 防御+1
装飾 鑑定眼鏡(?)
称号 異世界人、邪神に呪われし者
ステータスも少しだけ伸びた。
もうスライムに遅れは取らない…はずだ。
なんだか、索敵も慣れてきた。
音だけじゃなく、なんとなく気配のような物を追えるようになった気がする。
それにしても、ここに来てから半日近くが経つ気がするんだけど。
やっぱり、お腹は空かないな。
喉の渇きは、あるけど。
確か、探索系のRPGで
この内の飢えだけが多分感じられない。
寒さに関しては、マナスライムの氷個体と戦った時に感じられているし、渇きとスタミナ、疲労に関しても分かる。
体調?あー、分からないけど状態異常だよね。
マナスライム次第な気がするんだよね。
マナスライムが使える魔法がどんなものかで変わる気がする。
もしも、毒属性…状態異常系の魔法とか使える個体がいたらわかるだろう。
でも、毒とかになったらどうしたらいいんだろう。
これは、毒消しとか探した方がいいだろうか。
目を凝らせば、鑑定が出来るから探すことも可能かもしれない。
もしもの時の為にも、あった方がいいかもしれないよな。
僕は、キョロキョロと辺りを見渡す。
だが、都合よく見つけることは出来なかった。
「まあ、見つかるわけないよな。
さて、次へ行こうかな」
僕は、休憩を終えて再び歩き始めた。
それにしても、このインスタンスダンジョンってどんな大きさなんだろうか。
しばらく歩くと、騒がしい音が聞こえた。
うーん、音が混ざってるな。
多分、5体くらい溜まっている気がする。
僕は、ゆっくり接敵する。
名前だけの鑑定がされる。
ネーミングバッジの様にモンスターの上に出ている。
レッドスライム、イエロースライム、グリーンスライム、ブルースライム、パープルスライムのカラースライムが勢ぞろいしている。
スライムたちは、すりすりと身体を擦り合わせたりタックルし合ったりとじゃれ合っている。
取り敢えず、マナスライムがいないなら大丈夫だな。
僕は、まず端でぼーとしているパープルスライムに接敵する。
そして、短剣を突き刺す。
プシュ
プルタブを開けるような音がした。
それを聞きつけてか他のスライムが僕にタックルしてくる。
仲間を倒されたから躍起になったかな。
でも、タックルされても痛くはない。
防御力が上がったのもあるが、ボールのようなスライムではダメージを感じない。
レッドスライムが大きくジャンプをして僕の目線の高さまで来た。
僕は咄嗟に短剣を突き刺す。
シュー
空気が抜ける音がした。
横っ腹に、大きなボールの衝撃が来てよろける。
く、イエロースライムか。
お前だけ、空気圧が違うんだよな。
破裂の音も一番でかいし。
僕は、イエロースライムを一番後にする為に足元にタックルしているブルースライムを先に倒すことにした。
ブルースライムを蹴り上げ、短剣で突き刺す。
パァン
乾いた花火のような音がして、ブルースライムが破裂する。
その瞬間。イエロースライムのタックルが増す。
ダメージは無いが、衝撃でよろける。
あれ?イエロースライムが増えてる…あ!分裂か。
僕は、急いでグリーンスライムに短剣を刺す。
パーン
イエロースライムの次くらいに大きな音を立ててグリーンスライムが破裂する。
あとは、イエロースライムだけだ。
短剣は、まだ握っていられる。
もう、前みたいに無駄に力を籠めていない。
力加減が分かるようになって、継戦出来るようになっていた。
イエロースライムは、破裂の音が凄いから覚悟しておかないと。
鼓膜もそうだけど、心臓に悪いからな。
ボムッ
ボムッ
バウンドするボールのようなイエロースライムが僕にタックルしてくる。
僕は、短剣を突き刺す。
バーン
爆発音のような破裂音がこだまする。
あー、耳が痛い。
僕は、すぐにもう1体のイエロースライムに向き直る。
そして、直ぐに短剣を突き刺した。
バーン
再び、爆発音のような破裂音がこだました。
はぁ、疲れた。
固まっているのは、相手にしたらダメだな。
分裂…めんどくさ。
どれほどの時間が流れただろう。
だいぶ、スライムは倒したと思う。
時間の感覚がもうほとんどない。
ずっと、日中だからだ。
夕日なのか朝日なのかわからない茜色の空はあるが。
睡眠欲が無くなっているからもうわからない。
取り敢えず、ステータスカードを確認してみよう。
『宮前 聖
レベル1【封印】
HP 510
MP 110
攻撃 51+1
防御 51+2
器用 51
敏捷 51
魔力 11
幸運 51
武器 ???の牙 攻撃+1
防具 ただのTシャツ 防御+1
防具 ただのジーンズ 防御+1
装飾 鑑定眼鏡(?)
称号 異世界人、邪神に呪われし者』
そう、マナスライムには全く会えていない。
今まであったのは、氷、火、水、雷、土、岩、闇、影、光とあの透明な個体だ。
属性持ちは結構苦労した。
火のマナスライムは、とにかく熱かった。
暫く、短剣が逃げれなかった。
まあ、それは氷のマナスライムの時と同じだ。
雷のマナスライムはジャンプをしてから地面に投げつけた。
アースのような効果になって、痺れずに済んだ。
まあ、痺れるだけで済むかはホント分からない。
水のマナスライムは、倒した後に大量の水が溢れてきた。
土のマナスライムはかなり脆かった。
その代わり、岩のマナスライムは硬かった。
まあ、この2体に関しては接近戦で倒すことが出来た。
岩のマナスライムは、石礫のような物を投げつけてきた。
当たることもなく、倒せたが。
闇のマナスライムは、闇のオーラ?みたいな黒い靄が立ち込めていたし、影のマナスライムは影を出たり入ったりしてた。
光のスライムは、正直日中の太陽の下だったから光ってる?って感じだった。
デイライト電球みたいな明るさかな。
暗い所では会いたくない相手だ。
属性って、どんだけあるんだろうと気にはなってる。
たぶんだけど、透明なマナスライムは無属性だったんじゃないかと思っている。
それにしても、変化の魔石以来ドロップアイテムを見ていない。
こんなに幸運値が高くなったのに落ちないのはなんでだろう。
--------------------------
レッドスライム【50/100】
ブルースライム【50/100】
イエロースライム【50/100】
グリーンスライム【50/100】
パープルスライム【50/100】
マナスライム【10/100】
カラースライム【250/500】
------------------
僕は、ここに来る前の記憶があんまりない。
ふと思い出すと、思い出せないことに気づいた。
覚えているのは、フルダイブのVRゲームでは
その戦闘スタイルが、今の行動に反映されている気がする。
そんなことは思い出せるのに、いざ家族の事や他の事を思い出そうとしても霞が掛かったように思い出せない。
まるでそこまでの人生がなかったかのように。
さながらゲームキャラが新規プレイを始めてチュートリアルをしているようなものかもしれない。
僕という存在は、ある意味この世界では希薄な存在なのかもしれない。
とにかく、思い出せるのは名前とそう言うゲームをしていたことくらいだ。
僕は、それからも黙々と戦い続けた。
ステータスが上がったことでスライムたちとの戦いもだいぶ楽になって来た。
カラースライム達との戦闘は、危なげもなくこなせるようになった。
『宮前 聖
レベル1【封印】
HP 1010
MP 110
攻撃 101+1
防御 101+2
器用 101
敏捷 101
魔力 11
幸運 101
武器 ???の牙 攻撃+1
防具 ただのTシャツ 防御+1
防具 ただのジーンズ 防御+1
装飾 鑑定眼鏡(?)
称号 異世界人、邪神に呪われし者』
これが、今のステータスである。
先程、カラースライム各種と出会ったら【100/100】と表示された。
もうこの辺りに、スライムの気配はしない。
スライムを500体以上も倒したと言うことだろう。
それなのに、魔力だけは上がっていない。
それもそのはずで。
どこを探してもマナスライムを発見することが出来なかったからだ。
それでも、あと90体はいるはずなのだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます