合格!
◆◆◆ (side:朱里)
私の目の前にある机には封筒が置いてある。
もちろんこれはVTOPからの手紙だ。結果が早く知りたいから中身を見たいけれど、もし不合格だったら…と思うと怖くて開封することができない。
いっそのことネットで中学受験の合格発表のように受験者番号を入力すると結果が出るようにすればいいのに。いや、それでも私は怖くて番号が入力できないか。
はぁ、こういう時にはいつも一歩踏み出せないんだよな…
二次試験を突破して面接まで来れるのは多分これが最後だと思う。だからこれで受かってなかったら私はもうVtuberにはなれないだろう。
その時はその時で割り切るしかないか…
よし、決めた!封筒を開けよう。
ここで不合格でもいい!悲しむことになるならその悲しみは早く終わる方がいいし。
そう思って私は封筒をハサミでゆっくりと切った。別に手で無造作に開けてもいいけれど、どうせVtuberになれるチャンスは今回限りだと思うから綺麗に開けたいんだ。
そして私は折りたたまれて入っていた紙を広げた。
!?…こ、これは…やっっったあ!合格だ!
私がVTOPの2期生としてVtuberになる…考えただけでワクワクしてきた。
これといった突出したものがない私をVTOPは採用してくれたんだ…私を選ぼうとしてくれた人には(誰かはわからないけれど)ぜっったいに感謝の気持ちを伝えないと。
えっと、いつから私の立ち絵とかが分かるんだろう?VTOPの1期生の人の配信を見てると結構自分の好みに合わせてくれるらしいけど…
多分どこかのタイミングで事務所に行くんだと思うからもうちょっと封筒をしっかり読んで何か書いてないか確認しよう。
なるほど…えーっと1週間後に事務所に行って説明を社長から聞くことになるのか…え?社長?
私のマネージャーになる人から話を聞くんじゃなくてVTOPの1番トップの人から話を聞かなくちゃいけないの?
それはいくらなんでもプレッシャーがかかりまくるって…
とりあえず今日はお母さんにVtuberになることになるって報告だけしておこう。どうせ「ああ、そう」くらいしか言わないと思うけど。
私はお母さんがいるはずの台所へ向かった。
お母さんは予想通り晩御飯の用意をしていた。邪魔をするのは悪いと思うけれど、今言っておきなきゃ言うタイミングを逃しそうだからちゃんと言っておかないと。
「お母さん、ちょっといい?」
お母さんは野菜を切る手を止め少し頷いた。OKということだろう。
「昔私がVtuberになりたいって言ったでしょ?私ね、Vtuberになることになったんだ。撮影用の機材とかは向こうで用意してくれるらしいからお母さんには迷惑かけないと思うから…大丈夫だよね?」
「…Vtuberね、朱里って宿題とか済んでる?ちょっと話をしたいんだけど。」
戸惑いながら私は頷いた。
「そう…じゃあ用意を済ますからちょっと待っててね。」
この後私が母から聞かされたのは衝撃の事実だった。
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