ドカ食い気絶文

ぽんぽん丸

第一夜 ドカ盛りラーメン -其の壱-

私の眼前にはその高さを標高と表現すべきほどのカロリーの火山が噴煙が如く湯気をあげていた。その質量にどんぶりや受け皿の悲鳴が聞こえた。今にも砕け散って大噴火を起こすのではないだろうか。


マシマシ、マシマシ、マシマシ、である。


もやしは冠雪した富士の威厳を思わせる様相で私の食欲を威圧する。その麓にはキャベツが爽やかな緑を茂らせるが、その春を思わせるような薄緑を覆うものはにんにく、また脂。情景に爽やかさを添える緑にさえ脅威は潜み、私の油断を誘い牙を研ぐ。その妖しく爽やかな緑を豚が花崗岩の大岩の如く押しつぶしている。その三様が結託し私の登頂を許さないと言わんばかりに固く重くどっしと聳えている。


何よりも私の目には 麺 が捉えられない。


山は表層を見るよりその内部にこそ質量を持つ。その未だ全容を見ない山を制し、さらにその下に当然いる存在こそが真の脅威だと言うのである。


潜龍伏虎。この山の下に眠るは龍か、はたまた虎か。私はそのすべてを平らげなければならない。


この身に余る好敵手に思わずゴクリ、溢れる唾液を空腹の胃に流し込む。


山も人も同じだ。


山が表層から知るよりも莫大な体積を持つように、人も見た目には写らない莫大な力を秘めている。


なにより阻むものがあればこそ輝くものだ。まさに山を越え頂から覗く日の出が最も綺羅びやかに輝くように。


山よ、龍よ、虎よ、聞け。

我は汝らを平らげ地平を燦然照らす日の出にならんとする者。ドカ盛りラーメン、いざ、いただきます。

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