推させて下さい!3【安時梨奈】

(スカウトで池袋や原宿辺りに行くやつぁ私に言わせれば素人なんだよなぁ、私が追い求める理想の子に出会えそうなのはずばり、ココ!)


梨奈は秋葉原の駅前で腕を組み仁王立ちしていた


(モデルやってそうなイケイケ陽キャ女子なんていくらでもいるからな、そういうのじゃないんだよそういうのじゃ、やっぱりパッと見は地味じゃないと親近感が湧かないんだわ、それでいてどこか儚さがあって、そういう子が一生懸命パフォーマンスするからこそ応援したくなるんだよなあ、この子の魅力を一番わかってるのは私だけっていう感じになれなきゃダメなんだよ、まず第一条件は黒髪ロングね、前髪で目が隠れるくらいだと尚更よし、あとあんまり姿勢がよくなさそうで、常に俯きがちで会話してても目が合わないみたいな、それと…)


心の中で理想のアイドル像を長々と早口で語りながら殺気立った雰囲気で歩いていると、一人の少女とすれ違った

梨奈はハッとして振り返り、大急ぎで信号を渡って、反対側の歩道から。先程すれ違った女の子をガン見した


黒髪ロング、前髪がぱっつんでやや目にかかっている、少し俯きながら歩いていて、派手すぎない服装、スーパーの衣類品売り場で買ってそうな見た目より機能性重視っぽいリュック


(モロ好みだ…!!!!)


雷に打たれたような衝撃が梨奈の全身に走り、君が好きだと叫びそうになった

梨奈は急いで信号を渡り直して、彼女を追いかけた


そして猛スピードで彼女の目の前に立ちふさがり息を切らしながら声をかけた


「キミ可愛いね、どこ住み?良かったらお茶しない?てかSNSのアカウント教えてよ」


少女は驚くと同時に涙目になり震えながらスマホを握りしめた、画面には「110」と表示されている。


「待って!違う!誤解で!私はその、こういう者で」


梨奈は懐から名刺を取り出して少女へと差し出した


「アイドルに興味ありませんか」


梨奈は渋い顔つきになりかなり低めの声でそう伝えた、彼女こそシンデレラになる素質があると確信したからだ


少女は混乱して目をグルグル回し、口をパクパクさせていた

梨奈はとりあえず彼女を近くのカフェへと連れ込んだ

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