第13話 ツンツンなあの子の家に訪問

体育祭が終わり、文化祭が近づいてきた10月。

今日もいつものように過ごす...そう思っていたが。


「冬流、おはよー!元気してるかー!」

「朝からうるさいな...。」

「いや、酷くね!?」

「本当の事だし、酷くないぞ。」


そんな会話を交わしながら教室に入る。

しばらくして授業が始まるが、愛が来ない。


「愛がいないな、休みか...?」


愛の事を気にしていると、いつの間にか一日が終わり、放課後になっていた。


「もうこんな時間か...」

「冬流、来てくれるか?」

「あ、はい。今行きます。」


担任に呼ばれ、担任の近くに行く。


「今日、隣の席の愛が休みだろ?手紙届けてくれるか?」

「いいっすけど、熱とかですか?」

「らしいぞ。」

「あざす、じゃ、行ってきます。」


教室を後にし、愛の家に行く。

正直担任に愛の住所を渡された時はどうなのかと思ったが、スルーしよう。


「ここか...。」


インターホンを鳴らす。が、誰も出てこない。


「いないのか...?いや、病院に行ってる可能性もあるか。しょうがないけど、ポストに入れておこう。」


愛に渡してくれと頼まれた手紙をポストに入れ、その場を去ろうとすると、愛の家の中から音がした。


「ん...?」

「えと、遅くなってごめんなさ...って、なんだ、冬流か...。」

「俺じゃ悪いか?」

「そうじゃなくて...それで?要件は?」


念のためと買っておいた、愛が小さい頃から好きなプリンが入っている袋を差し出し、ポストから手紙を取り渡す。


「担任から頼まれてな。プリンは...俺の奢りだ。それ、好きだったろ?」

「あ、ありがと...ってか、なんで覚えてんのよ...。」


愛の少し引いたような目が俺に向けられる。


「あぁ、ご、ごめん。」

「別に...でも、ありがと。」

「おう、じゃあ俺、そろそろ行くな。」

「待ってよ。」


愛に呼び止められ、後ろを振り向く。


「あたし...動くの結構辛くてさ、だから...おかゆ作ってくれない?冬流が良ければだけど...。」

「え?あ、あぁ、いいぞ。でも勝手に入っていいのか?」

「うん、入って。」

「あぁ、お、お邪魔します。」


家に入ると、女の子らしい綺麗な部屋、そして良い匂いが...って何考えてんだ俺。


「結構綺麗だな。」

「もっと汚いと思ってたってこと?」

「あ、いや、そうじゃなくて。」

「じゃあ何?」


愛に問い詰められ、思っていたことを伝える。


「ちゃんと女の子なんだなって思ったっていうか...なんというか...。」

「えぇ...。」

「あ、ご、ごめん、キモイこと言ったよな、は、はは...。」


最悪の空気だ。口を慎め俺!!!


「ま、いいや、とにかくおかゆ作ってよ。」

「あ、あぁ、分かった、台所借りるぞ?」

「うん、ちょっとは期待しとくね。」

「期待はしない方が良いぞ。」


そう言って、調理を始める。

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