第55話 やられたらやり返す…恩返しだ!!
「これで全部終わりか……」
番組収録用に装飾されていたスタジオは全て撤去され、既に次の番組の準備が行われていた。
名残惜しそうにスタジオが変わっていく様子を眺めている霧島。
「霧島ぁぁ!!」
「え!?」
怒鳴り声が聞こえ振り向くとスタジオに殴り込んできたのは魔王達。
「ちょっ、アンタ達揃いも揃っていきなりどうしたのよ?……」
「文句を言いにきた…」
興奮の余り息を荒げながら魔王は告げる。
「やはり我らはこんな番組終了に納得できない!」
「…気持ちは分かるけどもう決まった事だから。それに見てよこの状況。もう<いつララ>のいの字もないくらいスタジオもさっぱりしちゃった。もう全部終わったのよ……」
「だからどうした。まだ我らがやれる事は残ってる。……正直番組に出始めた頃はこの番組に出たことを後悔した。幾ら仕事のためだからって我がやるべき仕事じゃないってな。だけどそう思う度に毎回子供達が我を見て笑うのだ。子供達が喜ぶ姿に振り回されているうちにいつの間にかここが居場所になってた。でもその居場所は無くなる。それが運命だと云うのなら抗いはしない。だがどうせ終わるなら、魔王がMCを務める番組らしく派手に終わらせる。大人になっても忘れたくても忘れないくらい最高の思い出を作って終わってやる。それが魔王である我にかけがえのない居場所を作ってくれた子供達への恩返しだ!」
「魔央……」
「じゃ、最後は生放送しかねぇわな」
背後で聞いていた間宮が意気揚々と声を上げる。
「ですねー。この際パーッとド派手にやっちゃいましょうか!!」
それに青柳も続く。
「いいね賛成。なら私もスケジュール空けなきゃね。…あ、マネージャー!?」
優菜は早速スマホを取り出し早々とスケジュールを確認する。
「奈緒美、お前はどうする?」
ただ1人奈緒美だけは黙ってこちらを見ていた。
「やんないわけないじゃん。彼氏がやるって言ってんだから…」
照れながら頷く奈緒美。
どうやらまだ春は終わってないらしい。
「フッ、決まりだな」
「アンタ達……」
「霧島さん。あとは貴方だけだ。貴方が我らと同じ気持ちならもう一度我に望め。望めば必ず叶う。そう信じて」
「……やるわよ!」
「よしっ!お前達ィ!やるぞォォォォ!!」
「オォォォォ!!」
間宮と青柳はバラバラになったスタッフ達をなんとか説得すると急ピッチで準備を進めた。
「青柳!」
「ハイ!(もしかしてまた怒られる?最近忙しくてピリピリしてるからなぁ〜……)」
「これは俺がやるからお前はあっちを手伝ってやれ」
「え?……」
まさかの答えに唖然とする青柳。
「なんだよその顔は?」
「いや、夜以外で褒められるなんて思ってなかったので。それにこれはこれはでなんか物足りないような気もして〜」
「冗談言ってないでさっさと手動かせ!コネ入社!」
「!はーい。(やっぱこれこれ。昼間はこうじゃないと!!)」
青柳は笑顔で作業を手伝いに行った。
「あれ、ここの手の振りって左からで良かったんでしたっけ?」
「いや、ここは右からぶわぁーっと広がる感じで手を伸ばす!」
「なるほど。ぶわぁーっと!!」
「そうそう。ぶわぁーっと!!」
奈緒美と優菜は各々が考えた新しいダンスの振りつけを共に合わせていく。
「霧島さん。肝心のスポンサーの方はどうなった?」
「それがさ……」
「やっぱり厳しいか……」
生放送をやるためには当然金が必要となってくる。
だが番組終了に伴いスポンサーをやってくれていた髙橋製菓との契約も終了しているため霧島は資金集めに奮闘していた。
「思ったよりなんとかなったんだよね!」
「なに!?」
「しかも髙橋製菓がもう一度だけならって特別にOKしてくれたのよ!!」
「そうか!流石は我が認めたプロデューサーだな」
「何言ってんのよ。私の力じゃない。魔央の力よ。貴方が今までしてきた無茶苦茶は無駄じゃなかったって事」
「違うぞ霧島」
「え?」
今までさん呼びだったのが急に呼び捨てに変わり唖然とする霧島。
「ここでは魔王だ」
「ふふっ。そうね魔王さま!この調子で本番も頼むわよ」
「ああ!」
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