第40話 困った時の魔王頼み

「槇乃が結婚!?マジでか!」

「しかも相手があのILSOKの御曹司って。槇乃さんも中々やりますね〜」


 内容が内容だけに間宮達はとても驚いている。

 そんな大声で騒いでいたら通路にまでまた丸聞こえだな。


「声が大きいぞ…だが肝心の本人はあまり乗り気ではないらしい。玉の輿にも興味がないって言い切ってたからな」

「ええーー勿体ない!私だったら喜んで結婚するのに」

「これ以上金持ちになってどうすんだよ、社長令嬢のコネ入社が!!」


 間宮は槇乃の頭を思いっきり叩く。


「だからコネ入社じゃありません!!お金なんていくら持ってても良いじゃないですか。それにその人性格までいいんでしょ?そんな良い人滅多にいませんって」

「だが束縛は強いみたいだぞ。結婚したら仕事を辞めて家庭に入るのが条件らしいからな」


「ゲッ……前言撤回。今時いるんですね。そういう人」

「そんなんなら私も結婚しないでいいや」


 会ったこともない御曹司にあからさまに嫌悪感を抱き共感する女性2人。


「なら槇乃が結婚したらこの番組を辞めるってことか?」

「そうなるな」


「マジか。それは困る!!アイツがいなかったら誰がこの番組成立させんだよ」

「我がいるだろ」


「バカ言え。お前じゃ無理だよ」


 間も開けず即答で答える間宮。


「何故だ!自分で言うのもなんだが最近の我は調子がいいと思うんだがな〜」

「そう思えてるのも槇乃がいてくれるお陰ってことだよ。誰がお前のめちゃくちゃなアドリブを上手く番組内で処理してると思ってんだ」


「まぁ確かに、槇乃さんがいなくなったらもっと番組がしっちゃかめっちゃかになっちゃうかもですね……」

「それにただでさえイヤな噂が広がってるってのに」


「イヤな噂?」


 優菜の発言に思わず魔王が聞き返す。


「あ、知らない?もしかしたら近々<いつララ>が終わるかもって話」

「ええ!!番組終わるんですか!?間宮さん、本当ですか!!」


 オーバー過ぎるリアクションで間宮を問い詰める青柳。


「俺が知るか。それにただの噂だろ。この時期は大体どんな番組で似たような噂が必ず出るもんなんだよ。気にしてたら拉致があかないぞ」

「でも、少し前に霧島さんが上役らしき男に呼び出されてるところを見たって人もいるらしいですよ」


「上役に呼ばれることくらい会社員してたら珍しいことじゃないだろ」

「でも間宮さん呼ばれたことないですよね?」


 間宮の目が泳ぎ始める。


「……まぁな。って俺のことはいいんだよ!でも、本当に槇乃の奴が辞めたらその噂も本当になっちゃうかもしれないぞ」

「大変じゃないですか!どうしましょう!」

「どうしましょうって俺に言われてもな〜」


 間宮は優菜の方に視線を向ける。


「私に聞かれても〜……魔王どうすんのよ。なんとかしなさい」

「っ、相変わらず魔王使いが荒い部下達だな……」


「誰が部下よ」

「誰が部下だ」

「誰が部下ですか!」


「グハッ….」

 3人の息のあった一撃が魔王を襲い黙らせた。


「なるほどねー…………」


 その様子を1人の男が外から聞き見を立てていた事を我は気づけなかった。

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