迷い込んだ深い森の奥、そこには世界の真実があった。

きらみあ

第1話

俺の人生には3つのルールがある。


その1仲間を作らない事。

その2絶対に死なない事。

その3運命に遵守して行動する事。


そんな俺のルールは全部あの子の為だ。

あの子の為だったら俺はなんでもやれる。


だってそれが俺に出来る償いで生きる価値だから。



「……なんだこれ?」


白い霧が地面を這い、背丈程ある草木を掻き分けて進んだ先。

その先には木に寄りかかった鎧の姿があった。


ここは人の立ち入りが禁止されている禁忌の森。

そこに鎧があると言う事は、いつかの戦争で出た脱走兵の亡骸なのだろう。


近くで合った戦争は確か10年以上も前の侵略戦争だったはずだ。


どこの国が攻めて来たとかは覚えてないけど……意外と錆びずに保ってんだな。


それは10年という月日が以外にも短いという事なのか……。

この森が禁忌である故の何かが関与しているのか……。


そんな事をボーっと考えながらも俺は鎧を見つめ続ける。

これは俺の3つ目のルール、運命に遵守する故の行動だ。


もし運命がこの結末をすでに決定していたのなら

この人は自分の人生が幸せだったと思うのだろうか……。


この人の人生はこの人にしか理解出来ない。

もし不幸だったと運命を悔いているのなら、少しは報われて欲しい。


俺は鎧に向かって手を組み敬意を示す。


「……ちょっとぐらい綺麗にしてやるか」


鞄を下ろし、兜の上に乗った葉っぱやらを払っていく。

その瞬間、兜の中から声にならないような呻き声が聞こえた。


「……マジか、生きてる?」


俺は兜を掴み、思いっきり引っこ抜こうとする。

しかし何かに引っかかってまるで取ない。


ただでさえ鎧の知識なんてないのに焦りが一人歩きして余計に手元が狂う。


相手の状態次第じゃ手荒な真似も出来ないし……クッソ!


「……おいお前! ここで何してる!」


突然の人の声にビクッと体を震わせる。

その声の方向に振り返ると、甲冑に剣を持った女の姿があった。


「何者だ! 顔を上げろ!」


芯の通った声に威嚇され、ジリジリと距離を詰められる。

それに対し俺も立ち上がり、ジリジリと距離を離す。


国の傭兵か? クッソ見誤った!


ここで捕まってたまるかよ……。

……運命はまだ……。


「まるで猛獣と草食獣みたいですね」


「……へ?」


間隣から聞こえ何食わぬ冗談に思わず気の抜けた疑問が出る。


「なっ、なんだその鎧は!」


怯える芯の通った声に俺の顔は青く染まる。

そーっと横を見るとそこには先程まで木に寄りかかっていたはずの鎧の姿があった。


「……大丈夫なのか?」


そんな心配の声に耳も傾けず、鎧は俺と女との渦中に入っていく。


「……Alchemy」


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