恋の天使と恋の悪魔、どうやら俺は恋をしないと死んでしまうらしい
ゆきいろ
第1話恋の天使との出会い
キューピッドとは恋の神、人の恋を叶えると呼ばれている。俺の両親もよくキューピッドが運命の出会いをさせてくれたなどとメルヘンチックな事を言っておりそれを子供の頃によく聞かされていた。
だがそんな両親に育てられた影響で俺は高校生になったがまだ恋というものが分からずにいた。
「あの……
これはよくある展開だ、目の前の女の子が赤い顔をしてもじもじと体を動かしていた。
「よかったら読んでもらえませんか」
そして手紙を差し出してくるいわゆるラブレターだ、俺はそのラブレターを受け取ると彼女は颯爽と駆けて行く。
「困った……」
そう呟く俺はこの学校に先月入学してからこうしてラブレターを受け取るのは五回目だ。
しかも今さっきラブレターを渡してきた彼女も今日初めて話したこの学校の女生徒だ。確か上級生のフロアを歩いている時に見た覚えはあったのできっと先輩なのだろう。
「お主も中々困っておるようじゃな」
そうして元凶である金髪の幼女が屋上から笑みを浮かべて白い翼を出しておりてくる。
「これも全部お前のせいだろうがこの恋のバカ天使が」
「な……な……バカとはなんなのじゃ、恋の天使たる私が折角お主を助けてやっているというのに……それにバカって言った方がバカなんじゃぞ」
わめき散らすこいつの事は今は放っておいてこいつと出会った時の事を話そう。この恋のバカ天使と俺、
「天界から数百年振りに人間の世界に降りてきてみたが中々どうして、世の中の娯楽というものも数百年で目覚しい進歩を遂げるものじゃ」
横断歩道で信号を無視してせんべえを口に咥えながら歩いている金髪の幼女(恋のバカ天使)が今まさに車に轢かれる所を間一髪の所で信号待ちしていた俺が助けたのだ。車の運転手は大層お怒りでなだめるのに数十分かかったが何とか大事にならずにすんだ。
「お前、わかっているのかもうすぐ車に轢かれる所だったんだぞ」
今度は俺が金髪の幼女に怒っていた、だが金髪の幼女は俺が車の運転手に頭を下げて謝っている時からずっと俺の隣でぼーとせんべえを食べて今もまた新しい袋からせんべえを一つ取りだそうとしていた。
「な、何をするのじゃ。返せぇぇぇ!!」
無言でせんべえの袋を取り上げるとようやく金髪の幼女は声をあげた。
「まずは人の話を聞け」
「全く人間の分際で私を助けたつもりでいるのか」
「はぁ……?お前何言ってるんだ。てかお前一人なのか?お母さんは」
「は、母の事など知らんのじゃ、それよりも早くそのせんべえを返せぇ」
ぴょんぴょんと小さい体で飛び跳ねているが俺が袋を届かない所まであげている為とるのは不可能だろうと思っていた矢先。
「返せと言っておるじゃろうが」
突然背中から翼みたいなのが生えて俺が持っていたせんべえの袋を掻っ攫って近くの家の屋根へと飛んでいく。一体何が起こったのか驚いてしまいそのまま金髪の幼女に声をかける。
「おーいお前そんな所にいると危ないぞ」
「お前ではない、私にはれっきとしたソルトという名前があるのじゃ」
「それじゃあソルトそんな所にいたら注目されるし危ないから降りてこい」
ソルトと名乗った金髪の幼女は不満気な顔をしていたが言う事を聞いて家の屋根から降りてきた。
「それでさっきのは一体何だ?」
「さっきのとは何の事じゃ」
急に明後日の方向を見て白々しく口笛を吹きながら誤魔化し始める。
「誤魔化しても無駄だからな、さっき急に背中から翼みたいなのが出てきただろうが」
「翼……?お主何を訳の分からない事を言っておるのじゃ」
「そうか、そうやって誤魔化すってんなら」
「なんじゃ顔でも殴るか、野蛮さだけは昔から人間というのは変わらないのう」
ソルトは余裕で笑っていた、そして俺はソルトの持つせんべえの袋を奪うと袋を持って口を大きく開けて残りのせんべえを口の中にいれてバリバリとせんべえを食べた。
「どうだこれで何か喋る気になったか」
ソルトに顔を向けて指をさして自信満々に問いかけてみるがソルトからはさっきまでの余裕の笑みはなくなっていてだんだんと泣き言を言い始める
「う…う…私の…私のせんべえが…う…う…うわーん」
それからソルトは大泣きで俺は今度はソルトを宥める事になりせんべえを買って家に連れ帰ってきた。
「それで私の話だったか、お主には特別に私の話をしてやってもいいのじゃ」
「そうですか、ありがとうございます。ソルト様」
ソルトに命令されて俺はソルトの肩を揉みながら家のソファでくつろいでいたソルトは俺が買ったせんべえを一つ食べる。
「うむ、私は天界に住む人間の恋を手助けする天使。恋の天使なのじゃ」
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