気まぐれの遼
はくすや
だまっていても新学期はやってくる
新年度新学期始業式、校舎前に貼り出されたクラス分けを見て一喜一憂する生徒たちに混じって
一学年八クラスもあるから同じになる確率は低い。そんなことくらいわかるだろう。
「――てか、遼、A組じゃん」
「みたいだな」
それがどうした?というのが遼の感覚だった。
しかし
目を耀かせて遼がA組になったことを喜ぶ
その
明らかにテンションが落ちている。気分が乱高下するのが星のキャラだが、落ちすぎじゃないか。
A組以外は成績がほぼ同じになるように調整されているはず――と言ったじゃないか。何をそんなに気にするのだと遼は思った。
「担任、
西脇は、担任団でただ一人の男性教師。西脇が担当するクラスには問題児が集められるのだという。
「――お前のことじゃないだろ?」
「当たり前じゃん!」
いじる兄と怒る妹。双子の兄妹のいつもの光景だった。
二人はそれぞれの教室に向かうために別れ、遼は二年A組の教室に入った。
クラスの三十六名中十一名がもと一年A組だったらしく、はじめから大きなグループができていて、教室は賑わっていた。
遼の元クラスメイトもいるにはいたが、話をした記憶がない生徒で、毎年のことだが、遼はひとりぽつんと指定された席について眠気まなこをこすり、あくびをかみ殺した。自分から他者と関わることのない性格はそうそう変わるものではない。
遼は他人に興味がなかった。それでも遼に話しかけてくる者は必ずいる。目立ちたくはないがどうしても目立ってしまう。無愛想で無表情にしていても学年で五指に入る容貌の良さが視線を集めた。
「
胸元の名札を見て彼が
くりっとした目がよく動く。その目が遼と周囲の生徒たちの両方を行き来していることを遼は気づいた。
「俺は感激するようなたいした奴じゃないぞ」
朝から遼のまぶたは半分近く垂れ下がっていた。
その目で見られると萎縮して近寄らなくなる者もいたが小山内はそうではなかった。
「いやいやいや、頭脳明晰イケメンが何を言う」
それが接近してきた理由なのか遼にはわからなかった。ただ、相手にすると疲れる人種であることは間違いないと遼は思った。
やがて担任と副担任がやってきて、始業式前のショートホームルームが始まった。体育館での始業式が終わったら、再度教室でホームルームを行うという。
その担任が今までA組の担任を務めてきた教師でなかったことが生徒たちの間で一つの話題になっていることが遼の耳に入った。
「今年は例年と違うサプライズが多いみたいだよ」と小山内が意味ありげに囁いたが、何のことだかわかるはずもない。それにも増して、他人がサプライズだと言うものに遼は興味がなかった。
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