井伊の赤鬼降臨

氷川警部mk

壱 跡継ぎ

時は天文10年1541年


井伊直盛は井伊谷の領地の屋敷にいた。

この頃、武田が遠江国に強い圧力をかけてていることに直盛は危機感を抱いていた。

「このままでは駿河国を武田に乗っ取られしまい主君である義元公を失い井伊家も危ういな。」

その頃井伊家では武田軍に備えるため叔父の井伊直満や井伊直義が準備をしていた。

「私もそう長くはないな、だが私には後継ぎとなる男子がいない。」

直盛はつぶやくように言った。

そこに叔父の井伊直満が屋敷に入ってきた。

「直満叔父様、どうなされたのですか。」

「お前さんが跡継ぎがいないということを悩んでいたとお前さんの家臣から聞いておるぞ。」

「はい....。」

そして、直満は少し考えこう言った。

「わしの嫡男、亀之丞を養子にしないか?」

「本当ですか。これで井伊家の跡継ぎは安心だ」

「もちろんだ。井伊家の跡継ぎがいない危機だから見過ごすわけにはいかないな。」

直満は大きく笑った。

直盛は安堵した。

井伊家を継ぐ跡継ぎが見つかったのだ。

この井伊家を継ぐ井伊直親こそが今回の井伊の赤鬼と恐れられた主人公、井伊直政の父である。

こうして亀之丞は井伊直盛の養子となった。そして直盛は言う

「このまま私の娘と結婚させて男子が生まれれば井伊家は安泰だ。」

こうして直盛の娘、井伊直虎は亀之丞の許嫁となった。

これを直盛りは家臣たちに盛大に発表した。

しかし、それを良しとするものは少なく、婚約に納得がいかない家臣のほうが多かった。

その中で一番その婚約を良しとしなかったのが井伊家筆頭家老である小野政直である。

政直は権力の独占を目論んでいたためこの婚約には納得いかなかったのだ。

「直満が自分の息子の亀之丞を直盛の養子に出し直盛の娘直虎と婚約させ権力を自分のものにしようとしているなんて許せぬ。」

「私も長い事、井伊家に尽くしてきたというのに。」

政直は怒りをあらわにした。

「こうなったら彼らを謀反の容疑をかけて謀殺するしかない。」

その頃、直満は弟である直義と話していた。

「これでわしらも安泰だな」

「そうですね、あとは武田に負けぬようにしっかりと備えることだな。」

その近くの影で政直は二人の様子を伺っていた。その様子を見て政直は笑みを浮かべる。

「それはどうかなお前らがそう言ってられるのは今のうちだぞ。」

そうして政直は井伊家の屋敷をあとにした。






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