豆腐小僧

天川裕司

豆腐小僧

タイトル:豆腐小僧


ある山奥で、豆腐小僧に出会った。


豆腐小僧「豆腐はいらんかね〜?ねぇそこの君、豆腐食べない?このお豆腐、おいしいよ?」


なんだか昔の身なりをした子が近くまで寄ってきて、

そう言った。

でも相手が悪かった。

俺は妖怪にかなり詳しいのである。


「…あの、もし間違ってたらごめんなさいだけど、君、豆腐小僧だよね?違う?」


豆腐小僧「………そうだけど」


なんか見破られたと言う感じでその子は少し黙った後、正直にそう答えた。


「…だよね?あのさ、その豆腐、食べないよ?だって食べるとさ、体中にカビが生えて殺されちゃうんでしょ?」


豆腐小僧「……」


その子はずっと黙り込んだまま、

俺の顔を不思議そうに見ているだけ。

「どうしてわかったの?どうして僕のこと知ってるの?」

と聞いてくる。

今はいろんな情報があって、君だけじゃなく、

他の様々な妖怪の事、その妖怪がどんな能力を持ち、

どこ出身で、どんな経歴があるのか?

いろんなことを現代人は

もうすでに教えられて知ってるんだよ?

と教えてやった。


その子は落ち込んだようにまた黙り込んでしまった。

ちょっと可哀想になってくる。

編み笠をかぶり、昔に流行ってたような着物を着て、

片手に盆を持ち、その盆の上に豆腐を乗っけてる。

その出で立ちがひどく寒く、

場末のように感じられ、悲しくなった。


「もう自分の出る場所は無いのか」

なんて言った感じに悲しく立ち去ろうとした時、

「あの、ちょっと待って」

と俺は呼び止めた。

そしてアドバイスをしてやったんだ。


「食べられない豆腐じゃなくてさぁ、食べられる豆腐を持ち歩いてそれを人に勧めてみたらどう…?」と。


その子はハッと顔を上げた。

まるでそれまで気づかなかったような感じ。

それから今にウケるような豆腐のレシピを調べ始め、

今では別の出で立ちで豆腐を持ち歩き、

人に勧める形で売っていると言う。


その姿は、編み笠に昔風の着物、そして徒歩…

というのじゃなく、自転車に乗ったり

車をゆっくり走らせたりし、現代に溶け込む感じで

従来の豆腐小僧とはわからない出で立ち。

服装も、現代の洋服に変わっている。


今日もどこかでお豆腐を売ってるのかもしれないね。

ちゃんと食べられるお豆腐を。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=pZr7BJwV5GY

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豆腐小僧 天川裕司 @tenkawayuji

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