これは、夢の中で神の力を使い災害を止める物語
夢実
プロローグ
間宮 速太 25歳 平凡な毎日を送るごく普通の会社員だ。
両親は物心が着く前に亡くなり、叔父叔母が引き取り育ててくれた。
今は実家に近いワンルームのマンションで暮らしている。
特に秀でたものはなく、すべてがあまりにも平均点である僕。
会社でも営業成績は可もなく不可もないそんな人間である。
高校生の時には特別に憧れたが、今は平凡であることを受け入れて、真面目に働いている。
その日は課長との飲み会だった。
「おい間宮、お前は真面目だが、真面目すぎる。もっと気楽にクライアントに対して接した方がいいと思うぞ。」
なぜこうも、おじさんという生命体はダメ出しが好きなのだろうか。お節介である。
「そうですか。承知いたしました。」
「飲み会で承知いたしました、なんていうやつはいないぞ昨今では。」
そりゃこれも業務ですから。真面目に回答しますよ。
「間宮も、星野を見習ったらどうだ。」
星野は僕の同期で今はリーダーになっている営業だ。
誰にでもフランクに接して憎めない性格の彼。
「はい、彼は本当にすごいですもんね、」
事実本当にすごい。彼はあの歳で課長補佐になっているのだから。
その後も課長の話は続き、こっちのターンにはならなかった。
その日は家に23時に着いた。
シャワーを浴びて、明日の準備をして、眠りに落ちた僕は、奇妙な夢を見た。
目の前には、田んぼだろうか、その奥には転々とした家に、川。
そしてもっと奥には森のような茂みの様なものがある。
月明かりしかなく、とても暗いが、たくさんの木々、田んぼと畦道。なぜか幻想的だ。
しかし、その幻想的な風景をぶち壊すように遠くから沢山の悲鳴が聞こえる。
悲鳴の方角の茂みを見ると、暗くて見えないがこちらに多くの人が走って向かってくる。
まるで何かから逃げているように。
どうすればいいかわからず立ちすくんでいると、みるみるうちに人が近づく。
月明かりで人物が確認できるぐらいになった。50人以上はいるだろうか。全員が全力でこっちに走ってくる。
そして走ってくる夫婦の声が聞こえてくる。
「早よ走れ、隣の村にはあの人さいるから」
「ここから行って3里の道のりをどういけっていうんか」
遠くからは悲鳴と何かが潰れる音が聞こえてくる。
彼女らの話し方と、服装や髪型、そして自分の周辺に目をやると、家があまりにも古いことに気づいた。
まるで絵や時代劇で見たことのある江戸時代の風景のようだった。
「これは、夢か?」
ふとつぶやいていた。あまりにも現実に近い夢だった。
なんでこんな夢見るんだ…………ドンッ。
「痛たい……あっすみません!」
「
すまん、すまん……って誰だおめぇ」
あれ?痛い。そしてこの人は僕に話しかけている。
「僕は……。」
遮るように彼は言う。
「今はいいから、はよ走れ、向こう側に」
そういった彼は逆の方向を指している。火事とは逆の方向を。
「何があったんですか?」
問おうとしたが、彼は走り去っていた。
時代劇にしてはあまりにも彼らの目は必死だった。
もう何がなんだかわからいが、言われた通りに、走った。
普段走ることのない僕は、みるみるうちに彼らにおいていかれる。
そして大きな音がして後ろに目をやると、月明かりに照らされた彼らが逃げていたものの正体がわかった。
3メートルはあるであろう、巨大なサルの顔に尻尾が蛇の妖怪であった。
目があった瞬間にこちらへゆっくり歩いて来る。月明かりが奴を神々しく見せた。
そして自分の足がすくんで動けなくなっていた。体感は10秒ぐらいだろう奴は僕の正面で止まった。
一瞬で死を悟った。これまでの人生を振り返ると、挑戦はしなかったものの平凡に楽しく生きられていた。
何も成し遂げていないが。死にたくないな。
妖怪の牙が腕を掴む。痛みが襲ってくる。
このまま全身を食べられるのだろう。死ぬとわかっても力がなく何もできない自分。
目を瞑っていると、なかなか痛みがこない。
(まだか?)
(あれ?まだ食べない?俺あんまり美味しそうじゃなかった?)
そうして目を開けると、妖怪の顔が右を向いている。
(どこ見てるんだ、お前の餌は目の前にあるぞ。)
そんなことを思っていると、妖怪が突然大きな声をあげて、腕を噛む力が弱まる。
「右に逃げて。」
妖怪の右側から声がする。言われた方向に逃げると、白髪の長い髪で大きな剣を持った青年がいた。
「僕の後ろに」
とにかく従った。彼が手を合わせると妖怪の周りを台風のような風が囲む。
彼は振り返って僕に行った。
「大丈夫かい?あの子は悪さをする子じゃないのに」
「ごめんね、巻き込む形になってしまって。」
その青年は悲しい眼差しで僕を見つめた。
「いえいえ、ありがとうございます。助けていただき。」
なんのことかわからないが、とにかくお礼が口から出ていた。
「今はとにかく戻ろう君の世界に」
腕からは結構な量の血が出ている。それを見て痛みが追ってくる。
「痛い、腕が、」
「ごめんね、今はあの子がいないんだ、村人の避難で。とにかく君の世界に戻ろうこのままだと」
「戻るって?」
「そうかわからないよね。ごめんね少しだけ痛いかも。」
そう言われると、首の後ろから鈍器で殴られるような感覚が走った。
意識が朦朧とするなか、彼は言う。
「明日の夜にはもう一度会える。とにかくちゃんと説明するよ。」
これが彼との出会いであり、これからここに記す大事な僕の話である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます