九十一話 デートを終えて
二人で雑談をする程度ではあるが、それでも充実した時間をすごした。
「あっ、
「ん?何の話かな?」
店を出た俺は素知らぬ顔で財布をしまった。
デートに来て女の子に出させるなどありえない、出させるくらいならそもそもデートなんてしないよ。
「えっと……ごめんね、出してもらっちゃって」
「何を気まずくなってんのさ。せっかくデートに来たんだから、小春さんは余計なこと考えなくて良いの。だからそんな事言わないで」
変な気の遣いかたをする小春の頭を撫でながらそう笑いかける。
当然だが悪いことをした訳じゃないので、お礼を言うのなら分かるけど謝る必要など一片もありはしない。
「こっちこそ、誘ってくれてありがとうだよ。これはそのお礼だと思って受け取ってよ」
「はぅっ……あっありがとぉ……」
更に続けると彼女は顔を真っ赤にしてお礼を言った。なんか熱いよ、風邪?なんつって。
そこまで照れるようなこと言ったか?正直な気持ちなんだけど……まぁいいか。喜んでくれたならそれで。
段々ニマニマとしはじめちゃくちゃ可愛くなっているが、俺は屈しないぞ。破壊力がすごいけど手は出さないからな……!
「あっ、ウチはこっちだから……」
「分かった」
家に帰る最中のこと、小春が交差点でそう言ったので真っ直ぐな軌道をそちらに変える。
すると彼女がきょとんとしていたが、行動の意味が分かったところでまた顔を真っ赤にしていた。
「あっ、えっと……送ってくれるの?」
「一緒に帰りたいだけだよ」
「はぅ……ありがとぉ……♪」
わざわざ 送る と言うのではなく、そう言った。
また気を遣われても困るのでそうしたのだが、それを聞いた小春がまたニマニマとしながら顔を真っ赤にしている。
繋いでいる手の力が少し強くなったと思うと、そのまま俺の腕を抱いてきた。えっちょ……
「もうちょっとだから、このままでいさせて?」
「……はいよ」
まぁこの際だ、喜んでくれるのならやれる事はやるさ。エスコートするのも紳士の役目ってね!
まぁ俺は紳士ではなくただの学生だが、それでも少しくらい気取ってもいいだろう。
まぁ小春の家は知らないのでエスコートというよりただ ついていってるだけだが、細かいことは気にしない。
「ウチの家はここね」
しばらく歩いていると、意外とすぐに彼女の家に着いた。
名残惜しそうにしながら俺の腕を放す……が手は握ったままだ。
「今日はホントにありがとね、すっごく楽しかった♪」
「こっちこそありがとう、喜んでくれたのならなによりだよ」
「えへへ♪もしよかったらウチに来てよ、歓迎するから♪」
さすがにそれは……と思ったが栞がいるのなら来ても良いのか。あくまで友達ですからね?その距離感は守らせてもらうよ。
「その時は栞と来るよ。それじゃ、また明日」
「むぅ……じゃあね!」
少し残念そうな顔をした小春に手を振りながら帰路に着く。
別れ際に見た彼女の
長名家の近くに来たところで栞に連絡する。
どうやら準備は出来ていたようで、彼女の家に着く頃にはすでに外に出てきていた。
「こーすけ!おかえり♪」
「はいただいま」
俺を見るなり満面の笑みで飛び込んでくる栞を抱き締めてキスをする。もはや俺たちの間では恒例の挨拶である。
彼女の荷物を持って家に向かい、夕飯の用意を始める。
「小春とのデートは楽しかった?」
「まぁね、といってもパフェ食べただけだけど」
用意をしつつ先程のデートについて話すが、正直そこまで特殊なことは無かった。まぁせいぜい手を繋いだことくらい?
「さすが好透、相変わらず
「そりゃ知ってるけどさ、でもせっかくなら楽しんで欲しいじゃない?それに刺されたら……その時はその時だろ」
もちろん刺されるとかない方が一番なのだが、俺が一線の引き方が下手だったせいで勘違いさせてしまったり、それによって悲しませてしまったからそうなったのならば自業自得なんだよな。
もうちょっと立ち振る舞い考えた方がいいのかもしれない……
「まぁ小春なら好透のことはよく知ってるから大丈夫だとは思うけどさ。多分ファンサービスみたいに捉えてるんじゃない?」
「えぇマジ?」
「うん、だってあの子好透のこと推しっていつも言ってるし」
えぇなにそれそんなこと言ってるの?まぁ好かれるのは素直に嬉しいけどさ、とはいえほどほどの距離感でお願いね?とか思ってみたり。
「そういえば、小春さんが是非家に来てくれって言ってたな」
「えっ、小春ってば絶対手を出す気だと思うよ。ちゃんと私が目を光らせとかないと」
まさか本気でそんなことはあるのだろうか?
どっにしろもし行くとするなら栞としか行かないので間違いが起きるなんてことは無いと思うよ。
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