八十五話 デートだっつーのに
朝日が部屋を照らし、その光で目を覚ます。
思ったより早い時間に起きてしまいもう一度寝直そうかとなんとなく横で寝ている衣織ちゃんを抱きしめると可愛らしい声が聞こえた。
「んっ…お兄ちゃんおはよ♪」
「……おはよ」
まさか起きていたとは思わなかったのでちょっと目が点になってしまったが、気を取り直して挨拶を返した。
早朝だってのに色々と盛り上がってしまったので、事を終えてシャワーを浴びる。
学校の間は一緒にいられないしどうしても栞との時間が多くなってしまう分、今日は沢山イチャイチャしたいのだ。
まぁ隙あらばいくらでもやるけどさ。
衣織ちゃんとは今日昼まで一緒にいる予定であり、夕方から栞の元へ向かう。
「お兄ちゃんってやっぱり筋肉質だよね」
「そうか?」
朝食を食べ終え二人でソファに座ってゆっくりしていると彼女は俺の膝に座り腕やら胸やらをペタペタと興味深そうに触っている。ちょっとこしょばい。
触っているだけかと思いきやいきなり服の裾を握って脱がせてきた。いやーん。
「ぐふふ…お兄ちゃんの胸板はいいねぇ……♪」
俺の体を見ながらどうにも人に見せてはならないような顔をしている衣織ちゃん。鼻の下がだいぶ長い……でも可愛い。
そのままペタペタと触り始めたのは先程通りだが、しばらくすると頬ずりまでしてきた。ひゃーくすぐったいって。
「すんすん……ん…」
「ぅおくすぐったい」
頬ずりだけでは飽き足らず匂いを嗅ぎ始め、しかもペロっと舌を這わせてきた。くすぐったくて思わず ビクッと震えてしまう。
「んへへ♪十分堪能したしぃ、じゃあお兄ちゃん……ほらぁ♪」
俺の体から顔を話した衣織ちゃんは俺の手を取って自身の胸に当てた。ふよふよという感触が手に伝わってくふ。
それに応えるように俺は空いた手を彼女の腰に当てる。
「ん……脱ぐ?」
「いや、そのままで」
彼女の腰にて添えつつふよふよとした感触を楽しむ。その度に衣織ちゃんは艶やかな声を出していて妙に色っぽい。
普段は艶っぽさを感じさせない快活な女の子だからこういう時って妙にソレっぽく見えるんだよね。ギャップってすごい。
「んん……もう我慢できない!」
そう言って彼女は服を脱ぎ捨て唇を思い切り重ねてきた。
「荷物おっけー?」
「おっけーだよ♪」
スッキリした俺たちは今からお昼を食べに外へ行くところだ。お家デートもいいけど一緒に歩くのもいいよね。
まぁ昨日遊園地デートしたわけですが。
それはそれとして二人で手を繋ぎ街へ繰り出しどの店にしようかとアレコレ見ていた。
まぁ無難にファミレスでもいいかな?まだバイト代も入ってないしそうガッツリ使うのは気が引ける。
そもそも学生の身分であまり高いところを選ぶとかはちょっとアレである。見栄の張り方は間違えてはならない。
そうこうしていたのだが、ここでちょっと面倒事が起きる。
「あれ、長名じゃん」
「おっ、ほんとだ」
「あっ、ッチ……」
衣織ちゃんのクラスメイトと思しき三人組の男たちが声をかけてきて衣織ちゃんが露骨に舌打ちをして嫌悪感を露わにしている。んーこれは……
その中の一人は随分と爽やかな風体でにこやかに彼女に近付いた。
「やあ長名さん、こんなところで奇遇だね」
「あーそうだね奇遇だね、それじゃ」
人あたりの良さそうな笑顔を彼女に向けて俺には一瞥もくれることなくソイツは声をかけている。衣織ちゃんは全く喋る気がないらしく手を振りながら別れを告げた。
「ちょっと待って、少し喋ろうよ」
「見てわかんない?私いま忙しいんだけど」
それを引き止めるように俺たち……というか衣織ちゃんの前に回り込んで絡んでくるソイツに彼女は やはり突っぱねる。コイツはなんでそうもしつこくするんだ?
「ちょっとだけでいいんだ、この間の返事をして欲しくて……」
ソイツは俺にチラリと視線を向けてすぐに戻した。返事とは告白のことだろう、それをここで言うようなヤツはロクじゃないな。
周りの
そんなのを連れているコイツも大概だな、そんなのに告白される衣織ちゃんも大変だ。
しかしここで俺が介入するのは簡単だが、ろくに関わらない俺が何やら言ったところで解決にならない。本人である衣織ちゃんからきっぱりと断る他ないのだ。
というか夏休みの時も似たようなことあったな、その時は
「返事って……ソレ私 断らなかったっけ?また答えなきゃいけないわけ?っていうか こんなとこでそんな話するとか意味わかんないしやめてくんない?」
「いやぁ、厳しいなぁ……」
ソイツは頭に手を当ててヘラヘラとしている。
何か企んでんのかと勘繰ってしまうくらいには怪しい。
今まではその顔とヘラヘラとしたやり方で何人もの女を食ってきたんだろうが衣織ちゃんには当然通用しない、底の浅さが知れてるからな。
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