十一話 1/2 栞の想い
私と
小、中と同じ学校に通っていたし、高校も同じ所を志望した。
私はあまり勉強が得意ではなかったけど、それでも絶対に好透と離れたくなくて、彼に勉強を教えてもらい受験に挑んだ。
私が好透への恋心を自覚したきっかけは中学一年の時のとある出来事。
新しくできた友達に好透との関係を聞かれたので、彼とは幼馴染である事を告げる。
そう聞いた皆は驚いていた。
「あたしも幼馴染の男子いるよー?でもさすがに手は繋がないかなー、ちょっと喋るくらいかも」
「ウチの友達にも幼馴染いるっていう子いるけど、ほとんど関わってないって言ってたよ」
話を聞いていると、大体の人は異性の幼馴染とは
それを聞いた私は、恥ずかしさよりも、それだけ好透との仲は特別なものなのだと、そう思って嬉しくなった。
その日の夜に、もし好透と疎遠になってしまったらどうなるのだろうかと想像した……してしまったんだ。
もし好透に突き放されたら。
もし繋いだ手を振り払われたら。
好透のことを好きな
「やだ…やだよ…好透…」
それを考えた私は、物凄く胸が苦しくなり涙が止まらなかった。
もし好透が離れていったら、冷たくあしらってきたら、口もきかなくなっていずれは他の女の子に好透をとられてしまうと思うと、凄く悲しい気持ちで一杯になり、彼に会いたくて仕方なくなった。
「行かないでぇ…こーすけぇ…」
私は胸を抑えて
一度姿を表した不安感は次第に強くなっていく。彼を求める気持ちは強くなるばかりだ。
しかし当時は携帯電話を持っておらず、気軽に連絡がとれなかった。
いてもたってもいられなくなりリビングに向かう。そこには母がおり、泣いている私を見て驚いた。
「ちょ、どうしたの栞!?」
泣いている私に母が駆け寄って頭を撫でてくる。詳しく話をしたいけど、今の私にそんな余裕はなかった。
「……こーすけ…こーすけに会いたい…」
私が言えたのはこれだけだった。苦しさのあまり言葉が紡げない。
「……わかったわ、ちょっとまってなさいね」
するとお母さんは好透の家に連絡してくれたようで、事情を聞いた彼はすぐさま駆け付けてきてくれた。
私は待ちきれず、外に出て彼の元に向かう。お互いに近所に住んでいるから、すぐに着く距離なのにそれすら待てなかった。
「栞!」
私を見つけた好透はすぐに私の傍に駆け寄ってくれ、そっと涙を拭いながら頬を撫でてくれた。
「どうしたの栞、大丈夫?」
「こーすけ…こーすけぇ…」
私は彼の名前を呼びながらその胸に入り込む。
色々な感情が
好透は何も言わずにそっと私を抱き締めて、背中や頭を撫でて慰めてくれる。
優しく心地の良い温もりが伝わってくると私の心は落ち着いて、次第に胸の苦しさがなくなっていった。
その時から、私は好透がたまらなく大好きなのだとハッキリと自覚した。
あれから私がそんなことを考えている横で、好透は全くいつも通りどこか素っ気ない。
それでもあの日、泣いている私をそっと抱きしめてくれた彼の優しさを知っているから、その傍にいられることがどれだけ幸せかも知っている。
その昔、好透はどちらかと言えば落ち着きがある子で私の方がわんぱくだった。
私はあっちこっちに彼を連れ回し、そんなわがままに付き合ってくれた素敵なお友達。
今では掛け替えのない大切な幼馴染で、大好きな男の子。
いつだって落ち着いたような、ちょっと素っ気ないような対応だけど、繋いだ手からは確かな温もりが感じられた。
きっと彼も私の事を好きだろうと、そうであってほしいとその温もりを感じながら思っている。
今では彼から私の手を引いてくれる。だから大丈夫、きっといつまでも一緒だと。
しかし、そんな私たちを引き裂こうとする人たちがいて、実際彼に心無い言葉を投げている人たちがいることを小春から聞いた。
それでも彼はいつも通りにしていて、登下校のときは相変わらず手を繋いでいた。
嫌なことを言われたはずなのに、いつも通りの彼。きっとそれだけ
私は、いつか想像してしまったもしもの未来を思い出してしまい、強い不安を感じてしまった。不安になることなんてないのはよく知っているけど、それでも感情がそれを許さなかった。
大好きな彼の手を離したくない、ずっと傍にいたいという気持ちが強くなって。
その時から私は彼との手を、手のひらを密着させるような繋ぎ方変えた。
中学生三年の秋、とある下校時から彼と手を繋ぐ時は必ず恋人繋ぎをしている。
いつか本当の恋人になれるようにと願いを込めて。
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