第6話 協力者の登場

鈴木誠は、家族の安全を確保するために警察に通報し、家の周囲に警備を依頼した。彼の心には依然として高田の遺志が重くのしかかっていたが、それを背負ってでも戦う覚悟は揺るがなかった。


翌朝、鈴木は議会事務所へ向かった。斎藤知事の脅迫にも屈せず、高田の残した証拠を元に調査を進める決意を新たにしていた。議会事務所に到着すると、同僚議員の松本和也が待っていた。


「鈴木さん、おはようございます。昨日の会議の後、何か進展はありましたか?」松本は真剣な表情で尋ねた。


鈴木は頷き、昨日の出来事を簡潔に説明した。「高田が残した証拠を基に、斎藤知事の不正行為を追求する準備を進めている。しかし、知事から脅迫を受けたんだ。」


松本は驚きの表情を浮かべた。「それは一大事ですね。安全対策は大丈夫ですか?」


「警察に通報し、家の周囲に警備を依頼しました。家族の安全が第一ですから。」鈴木は毅然と答えた。


松本は深く頷いた。「それは良かった。これからどうしますか?」


「次のステップとして、百条委員会で証拠を提出し、斎藤知事の不正を公にする予定です。」鈴木は力強く言った。


その時、議会事務所のドアが静かに開き、一人の女性が入ってきた。彼女は落ち着いた表情で鈴木に歩み寄った。


「鈴木議員、初めまして。私は斎藤知事の秘書を務めていた佐藤美咲と申します。」彼女は静かに自己紹介した。


鈴木と松本は驚きの表情を浮かべたが、すぐに冷静を取り戻した。「佐藤さん、どうしてここに?」


佐藤は深呼吸し、意を決して話し始めた。「実は、私は長い間斎藤知事の不正行為に気づいていました。しかし、知事の圧力と脅迫に屈して何も言えなかったのです。でも、もう黙っているわけにはいきません。高田県民局長が命をかけて告発したことを知り、私も真実を明らかにするために協力したいと思いました。」


鈴木は感謝の意を込めて頷いた。「佐藤さん、あなたの勇気に感謝します。私たちと一緒に戦ってくれるということですね。」


佐藤は強く頷いた。「はい。知事の不正行為について、私が知っている全てをお話しします。そして、これが私の持っている証拠です。」彼女はバッグから数枚の書類を取り出し、鈴木に手渡した。


鈴木は書類を受け取り、中身を確認した。そこには斎藤知事が県内企業からの贈答品を受け取っていたことや、公職選挙法に違反して選挙活動を行っていた証拠が詳細に記されていた。


「これで決定的な証拠が揃いましたね。」鈴木は松本に向かって言った。


松本は力強く頷いた。「これで斎藤知事を追い詰めることができる。佐藤さん、本当にありがとう。」


佐藤は微笑みを浮かべた。「私もようやく肩の荷が下りた気がします。これからは皆さんと一緒に戦います。」


鈴木は佐藤の手を握り締めた。「ありがとう。私たちと共に、正義を取り戻しましょう。」


その後、鈴木と松本、佐藤は次の百条委員会の準備に取り掛かった。証拠を整理し、プレゼンテーションを作成するために、事務所は忙しさを増していた。高田の遺志を継ぎ、斎藤知事の不正を暴くために、全員が一丸となって取り組んでいた。


夜が更ける頃、鈴木は再び書斎に戻り、佐藤から受け取った証拠を見直していた。高田の遺書、音声データ、そして佐藤の証言と書類。これらが全て揃った今、鈴木の心には確かな希望が灯っていた。


「これで決定的だ。高田、君の遺志を無駄にはしない。」鈴木は静かに呟いた。


翌朝、鈴木は議会事務所に戻り、百条委員会の準備を進めた。証拠を提示するための計画を練り、議員たちへのプレゼンテーションを練習した。佐藤もまた、証言の準備を整えていた。


そして、百条委員会の当日がやってきた。議会には多くの議員とメディア関係者が集まり、斎藤知事の不正行為についての調査が開始された。鈴木は心を落ち着け、壇上に立った。


「本日、我々は斎藤知事の不正行為についての証拠を提出します。高田県民局長が命をかけて告発したこの事実を、皆さんにお伝えしたい。」鈴木は力強く語り始めた。


佐藤が壇上に立ち、知事の不正行為についての証言を行った。彼女の詳細な説明に、議員たちは驚きと共に耳を傾けた。次に、鈴木が高田の遺書と音声データ、そして佐藤の提供した証拠を提示した。


議会内は静まり返り、全員が真剣な表情で鈴木の言葉を聞いていた。斎藤知事の不正行為が明らかになるにつれ、議員たちの表情は次第に厳しくなっていった。


「以上が、我々が集めた全ての証拠です。斎藤知事の不正行為を許すことはできません。正義を取り戻すために、適切な処置を講じることを求めます。」鈴木は最後にそう言い切り、壇上を降りた。


議会は鈴木の言葉に応え、斎藤知事の不正行為についての徹底的な調査と処罰を決定した。鈴木の心には安堵の気持ちが広がったが、それと同時に、高田の死を悼む思いもあった。


「高田、君の遺志を果たすことができたよ。これからも、君のために戦い続ける。」鈴木は心の中で静かに誓った。


鈴木、佐藤、そして松本は、これからも光陽県の未来のために共に戦い続ける決意を新たにした。彼らの心には、高田の遺志と正義を守る強い信念が宿っていた。

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