真夜中の電話相談室

菊池昭仁

第1話 「夫婦喧嘩が絶えません、どうすればいいでしょうか?(女性)」

 「もしもし、悩みがあるんですけど」


 「はい、どうぞ」


 「主人とケンカが絶えないんですが、どうすればいいでしょうか?」


 「別れた方がいいですね、以上です。

 おやすみなさい、さようなら」


 「それじゃ相談にならないじゃないですか!」


 「だからケンカになるんですよ、すぐに怒るんだもん。

 シャレですよシャレ。

 スマイルスマイル。

 喧嘩の原因は何ですか?」


 「色々です、ご飯が不味いとか、ドラマよりバラエティが観たいとか、私の髪型がダサイとか・・・」


 「それは喧嘩ではなく、ご主人の好みの問題ですよね?

 つまり、あなたとは好みが合わないわけですよ。

 だったら無理ですよね? どうして結婚したんですか?」


 「どうしてなんでしょう? どうしてだと思いますか?」


 「男が欲しかった? 性欲は強い方ですか?」


 「まあ、普通です。

 でも当時はそんなに不自由はしていませんでした、けっこうモテていたし」


 「旦那さんはイケメンですか?」


 「ええ、とっても!」


 「それでお仕事は?」


 「公務員です、県庁職員です、年収560万円の」


 「なるほど、つまりイケメンで高収入、しかも親方日の丸で倒産の心配もなしですかあ、

 羨ましいです。

 つまりあなたは外見と条件に惚れたわけですね?」


 「それだけじゃありません! やさしいところもあるんです、彼」


 「たとえばどんな?」


 「えーとえーと、ゴミを捨てに行ってくれるとか、子供の相手をしてくれるとか」


 「奥さん、そんなのどんな旦那さんでもやってますよ。

 よほど辛い仕打ちを受けているんでしょうね? 奥さんはドMではないんでしょうね?

 不倫とかしてないんですか? 旦那さんは?」


 「この前、寝ている時に携帯の指紋認証を解除してみたら、役所の女の子とのハメ撮りが・・・」


 「お気の毒に。

 それじゃ喧嘩も絶えませんよね」


 「そうなんです、どうしたらいいでしょうか?」


 「わかりました、奥さんが悩むのは別れたくないからですね? お子さんもいらっしゃるし」


 「別れたくありません」


 「セックスは週何回くらいです?」


 「週というより、年に2回です。

 誕生日の時とハロウィンの時です」

 

 「不満はあるが、別れたくないわけかあ」

 

 「はい」


 「では答えは簡単です、セフレを作ればいいんですよ、奥さんも。

 ダブル不倫。

 そしていろんな不満をそのセフレとのセックスで解消すればいいんです。

 人は不倫をすればするほど、何故か配偶者に優しくなるものです。

 罪の意識がありますからね、そうすれば喧嘩もなくなるはずです。

 でも、チャラオでは駄目ですよ、ゲス不倫は駄目です」


 「セックスだけならそれでいいじゃないですか? セックスが上手ならそれで・・・」


 「奥さん、保険ですよ保険。

 万一、ダンナさんに捨てられてもいいように、ハイスペックでやさしいセフレを見つけないといけません。

 そうすれば、そのセフレさんが良ければご主人をポイすればいいんですから。

 人間、大切なのは心に余裕ですよ、ははははは」」


 「なるほど」


 「ではどうすれば自分に合う男性かどうかを知るかですが、『Oリング法』ってご存知ですか?」


 「いえ、知りません」


 「相手のチンチンを左手で握り、右手の人差し指と親指で「O」の形を作ります。

 そう、OKというあれです。

 それをセフレさんに両手で引き離してもらうのです。

 すんなりと人差し指と親指のリングが離れたら、お二人の相性は悪いということになります。

 今のダンナさんにも試してみて下さい」


 「やってみます」


 「ちなみに食材や薬などにも応用できますからお試し下さい。

 では、良い人生を!」


 「ありがとうございました!」


 「おやすみなさーい、ハイ、次の方どうぞー」



 

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