第52話 影を追って……あの影はどこへ?
僕は遺跡の石畳の一部に足を付けて着地した。辺りは薄暗くあるが光苔のようなものが周囲を照らしていたために、なんとか地形を見ることができる。
薄らと肌寒く、地表付近には白靄が漂い、若干不気味な雰囲気だ。そして、僕はここに人影を見た。コレは、より不気味に拍車がかかる事実提供だろう。
「あの影は、確かあっちに向かっていったな」
僕は1つの柱を視界にとらえる……目の前に横並びにある3つの柱。その右からの3番目の柱……その柱の角を影が折れて曲がっていくのを僕は見た気がしたんだ。こんな地下迷宮みたいな古ぼけた場所に人がいるなんておかしな話なんだけど、幻覚を見るほど僕の脳みそはボケちゃいないはずだ。
ただ、僕の溢れる好奇心は、その正体を突き止めたかった。なにぶん、学生ですから知識欲には飢えているのよ?
……え、ただのガキ特有の好奇心だって?
フン! なんとでも言え!
こんな地下で、人間の気配を感じたら探したくなるでしょうがぁあ! この、バカちんがぁあ!
僕は歩き出し、そして影が消えた角を同じように曲がる。そこからまっすぐ歩く。すると左右には崩壊する遺跡の残骸に溢れかえっていたが、正面を見据えれば一本道の通路のようなものが続いている。
とにかく、あの影がどこへ行ったかはわからなかったが、真っ直ぐ進んでみよう。その内に気づくことがあるやもしれんし……当たって砕け散ろだ!
さてさて……何が出てくるのかな?
「…………ッ!!」
「……ッ……?!」
…………ん? おっと?!
しばらく歩くと声らしきモノが聞こえてきたぞ。その雰囲気を読み解くと、どうも2人の人物の会話だな。もう少し近づいてみようか。
「定期報告だ。俺はコレから上に出て、物資の補給組と合流してくる。そっちの状況は……?」
「女は静かだ。眠ってるみたいだよ。昨日はあんなに騒がしかったのに、ボスに痛めつけられてだんまり……ギャ〜ギャ〜ピ〜ピ〜やかましかったからちょうどいいさ」
僕は瓦礫に背中を預けて聞き耳を立てる。おそらく、この裏には誰かいる。人数は2人。両方男だ。何話してるんだろう?
「俺はもういくぞ。見張りを怠るなよ」
「見張りも何も誰もきやしね〜だろ? こんなところ……」
「そっちの心配じゃない馬鹿野郎。女を逃がすなよって言ってるんだ」
「逃げようがないだろう? 縛ってあるんだから。丸腰で逃げたってあんな嬢ちゃんに何ができるってんだ」
「はぁぁ……一応、忠告はしたからな」
「へいへい。とっとと行けよ〜」
「——ッチ!」
うん。ごめんなさい。誰も来やしない場所にしみったれたクソガキ1名侵入して聞き耳立ててるんだが、これは彼らにとっていいことなのだろうか?
てか、あの男達はなんなんだ? 言葉はなんか野蛮な感じがするし……盗賊か何かか? じゃあ、なんだ? ここは、盗賊の隠れ家だって言うのだろうか? だとすると、学園管理のダンジョンと盗賊の隠れ家が繋がってるって——とんでもないことのような? よく今まで気づかなかったな?
まぁ、僕以外あの崖を越えてはこれないから物理的な交流を果たせるかは些か疑問だけどな。
と、しばらく聞き耳を立てていると、ここで足音が1つ離れていく。なんか上に行くとかなんとか話してたけど、つまりこの壁の向こうに居るのは、現在男が1人ってことか……?
ふむ、ちょっと覗いてみましょうか?
僕はゆ〜〜くりと瓦礫の隙間から奥を覗いてみる。すると……やはり1人の男がいる。石のブロックに腰を落としてこちらに背を向けているぞ?
でも、待ってくれ……あの服装は……
うん。あれ、冒険者だな。たぶん……
だって、服装はなんか街で見かける冒険者と大して変わらないんだもん。だとすると、不可解なのが……冒険者の憧れは世がチュートリアルダンジョンをラストダンジョンと勘違いしているあの塔だと思うんだけどな。何故、塔に登らず地下に潜ってるんだか。意味は分からん。
う〜〜ん。よし……
ちょっと、僕としては大胆だけど……
あの男を脅してみましょうかね!
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