第46話 はじめての……
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地下に眠る『夢想』という名のダンジョンには、チュートリアルダンジョンの高層階と繋がる抜け道がある。
『夢想』入り口。そこで横穴を潜り、遺跡の崩れた奈落を越えた先——
遺跡を跨ぎ、谷を超え通路を探せ!
それが目印。
ゲートをくぐり、正面の壁で菱形のブロックを見つけなさい。
そして、己の内にある力を示すのです。
その石に……
さすれば轟音と共に道は開く。
その先では——
一先ず見上げてみろよ冒険者……
そこは、洞窟だというのに……
星空が見えるはずさ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ってね。
冒険譚の一節を抜粋させていただきました。はい——
ここまで、僕を導く結果を生んだのはやっぱり冒険譚だったんだよ。
これは、チュートリアルダンジョンへと、こっそり忍びこむ方法の1つだ。ただ、この方法は抜け道のある『夢想』へと忍び込む必要があるため——
忍び込むために、まず忍び込む必要が発生する。
もう、これを聞いてると馬鹿馬鹿しく思えてくるだろう。笑えちゃうくらいにさ。
だから、僕はこのタイミングを選んでこうして忍び込んでいるのだ。
「……へぇ〜〜私、アルフヘイムなんて初めて入ったよ!」
「だろうな。だって僕たちは冒険者じゃないんだからな」
「……へぇえ?」
「…………」
僕の説明を聞いて、にゃはは〜と笑って、あっけらかんと言葉を口にするヴェルテ。
薄々……? いや、最初からわかっていたが……この子、やっぱりアホか?
あのさ……『アルフヘイムに初めて入ったよ!』じゃないのよ。もう少し……こう……もっと驚いたっていいじゃないか?
それにさ……普通は入れないんだよ。だって、僕たちは冒険者じゃない。ダンジョンに正規で入ることは不可能なの。君の反応はいくらなんでも楽観的すぎやしないかい?
もう一度言うよ? もっと驚いてもいいんじゃないの??
まぁ、別に驚いてももらいたいわけじゃないんだけどさ。
なんか……こう……この、意識下に残る遣る瀬なさはなんなんだろう。調子狂うな。
とりあえず、わしゃわしゃしたろ。
「きゃあ! 何、くすぐった〜い♪」
と、まぁ〜ここまで来れた経緯はそんなところだ。
だが、来たのはいいのだが……ここで1つ——疑問に思うことがあるだろう。
冒険譚の知識を活用してこっそりチュートリアルダンジョンへと侵入。その目的はダンジョン産の素材の転売なのだが……奇しくも、これは僕の本日の目的と一致しているんだ。
でだ……果たして、そんなことをしていいのだろうか?
答え——たぶん、あまり良くはないと思う。
この世の人類が、一体どこまでチュートリアルダンジョンを攻略しているか分からないんだけど……僕の予想が正しければ……
ここ……チュートリアルダンジョン第69階層——まで足を踏み入れた者はいないと思うんだよね。
それで……高階層の素材なんてものは貴重も貴重で……下手をすると、市場に出回ってない可能性が高い。そんな物を一端の学生が『はじめてのだんじょんしけん』で、拾ってくるわけにはいかないだろう。
だから、あまり良くはないと——僕は思っているんだよ。
そう……“あまり”ね。
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