第32話 クソガキと 親バカと……
『——え!? どういう……??』
『まぁ、君のその反応も分かる。私も君が娘を誑かす様なクソ野郎なら、こんな話はしてなかったからな』
え? なんだって?? 娘を……アイリスを僕の奴隷にしろだって?? 頭にウジでも湧いてるのかこのオッサン!! てめぇの娘だろうが!!
『まぁ、聞いてくれるか? これにも訳があってな』
『…………』
まぁ、とりあえず理由を聞かせてもらおうか?
『そもそもだ。決闘が例え非公式だったとしても、敗者が見返りを支払わないのはあってはならんことだ。これは貴族として、そしてストライド家として、厳守する義務と誇りがある』
『そ、それは、貴族の習わしで……僕は一般市民だから、そもそも同じ土俵に立ってないと思うんですけど……侯爵令嬢とでは……あ!? 生意気に言い返してすいません』
『いやいい……ここには他人の目はないんだ。君の
『はぁ……』
て、言われてもな。やっぱり言いづらいよな? 思わずポロッと言っちゃったけども……侯爵様なんだもんな。
『それでだ。君の言う不釣り合いな条件は当然罷り通ることはない。だが……この約束はアイリス自身がしてしまった。これを反故にするのは貴族としてあってはならない行為だ。そして、これはうちのメイドであるティスリ、あとは学友の2人が聞いていたのだろう。これで言い訳は通用しなくなった』
うん……まぁ、わからなくもないな。約束を反故にする貴族なんて、信用ならんし、発言には責任が伴うだろうしな。
『例えそれが子供の決闘でもだ。アイリスにもこのあと叱りつける予定だとも』
それは、ご愁傷様だ。今後、善良なクソガキを虐めない様に反省してもらわないと。
『よって、アイリスは条件通り。ウィリア君——君の奴隷にならなくてはならないんだ』
『え!? いや……でも……』
だからって、その条件はどうなのよ!? 公爵家としての体裁もあるだろうに? そもそも、自分の娘でしょう! いらねぇ〜よ。お前の娘! まだ金の方が嬉しいな。あなたの娘いらないんでお金ください——って、言ってみてもいいかな?
『君が動揺するには分かる。だが……アイリスにはこの機会に罰を受けて反省してもらいたかったのだよ。今回のことを教訓として、あまり出過ぎたことをしない様にね』
『でも、公爵家としての体裁とか、評判があるでしょう?』
『それは当然だ。だから、彼女には勘当を言い渡した』
『……はぁあ?!』
『侯爵家の令嬢としては名乗らせないつもりだ』
おいマジか!? いいのかそれ!!
『幸い。うちには3人息子がいるからな。家督や政務の面は問題ない』
いや、そう言うことじゃなくて!?
『在学中の席は貴族として扱う。が……卒業と同時に彼女は貴族ではない。一般人と同じだ』
『あの……それは父親としては……どう、思って……』
『ん? なんら変わらん。彼女の身分がどうなろうとも、あの子は私の娘だ』
……?
『あの子は、前々から冒険者を志していたからな。これで、思う存分「夢」を叶えられるだろう』
まさか……このオッサン……
『剣を折られたと聞いた時……ふと、思ったんだよ。もう、娘を縛りつけるべきではないのでは……と。あの子は、私より、母親の血が濃い。いずれは、こうなる運命だったのかもしれん』
僕を理由にしようとしてるのか? てか、まとめにかかってるな!? 待て待て待て——僕はまだ了承してねぇえぞぉお!!
『だから……娘を……』
『あの〜〜それですけど……お断り……』
『娘をよろしく……』
『だから、お断りしたいと……ッ——ッイテ!!??』
『よろしくたのむよ! ウィリア君!!』
このオッサン、背中叩いてきやがった!! そうですか……そうですかぁあ!! 拒否権はないんですかぁああ!! スッゲェ〜〜めんどくせぇ〜〜んだけど!! 断らせてヨォ〜〜お!!!!
『……ツツシンデ、オウケイタシマスゥ……』
『そうか、引き受けてくれるか〜〜はっはっは!!』
——クソ! 白々しい!!
もうここまで言われてしまったら断れないじゃないか。無理に抵抗したら殺されてしまうかもしれないし。一旦は享受するしかない。後でどうするか考えよう。
あぁ、どうしよう。令嬢を奴隷なんてどうしたらいいんだよ。
『まぁ、君はアイリスを適当にコキ使ってやってくれ。でないとお仕置きにならんからな』
だから、どうしたらいいんだよ!?
『期限は特に設けないが……適当な機会で、再び『決闘』を受け、負けて開放してあげるといい』
あら……そうですか。なら、明日にでも……
『ちなみに、すぐ開放するのは仕置きにならんからな。適当なことはしてくれるなよ』
ダメですか……そうですか……
『あと、もう一つ1番大切なことがある』
ぁあん?? まだ、何かあるのかこのオッサン??
『奴隷とは言うがな……もし、うちの娘に不埒なことを働いてみろ……容赦はしなからな。ふふふ……』
は?? 不埒?? アッハッハ〜〜ありえないだろう。あんなヒステリック女になんか。それに、侯爵令嬢に手を出す様な愚行をする訳ねぇ〜〜だろうが。
『ははは……大丈夫です。絶対に手を出す筈ないですから♪』
その点、安心するとよろしい。オッサン。僕は天地がひっくり返ろうとも変なことはしませんとも。
そもそも、僕は……
『なにぃい?! うちの娘が可愛くないって言うのかァア〜〜?!』
——って、なんでそうなる!? なに? これ、なんて返せば正解だったの!!??
『あ!? いえ! そういう意味では——! 美麗な女性だと思います!!』
『ほほう……つまり、娘に手を出すと〜〜?』
だから、なぜだ! なぜそうなる!! このオッサン、ただの親バカなのか?!
——誰か、誰かぁああ!! 正解を教えてくださぁあああい!!!!
『いえ、だからそれはありえないんですって!!』
『ありえない……君はなぜそう言いきるんだ!?』
『それは……だって……』
そもそも僕は——……
『——ッ!? え? そう……なのか?』
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