登録者100万人の大物YouTuberに気づけば外壁を埋められていて....⁉︎
りと
第1話 数年の時を経て
YouTuber......どうやらそれは今となっては世間では当たり前になっている職業らしい。
広告や案件、そして配信のスーパーチャットなどでお金を貰える職業だ。
だが昔はそんなことはなく、散々な言われようだったのだ。
ニートだの、楽して金を稼ぐ社会不適合者など、まぁとにかくすごい言われていたのだ。
まぁそれも正直仕方がないことだとも言える.....昔はそもそもYouTubeという文化があまり浸透していなかったし、YouTuberの努力を知らない人がたくさんいたからだ。
「だが、YouTuberの1日などという動画で裏の努力をみんなは見ていたりしてたら、そんなことも言えなくなるよなぁ......」
そう.....人気YouTuberというのは本当に大変だったのだ。様々な仕事が飛び込んでくるし、日々継続しないとお金は入ってこないし、心ないコメントの戦いもあったりするのだ。
本当にYouTubeでお金を稼ぐ人は尊敬する。
......だが。
「ぶっちゃけ......テレビだけでも良くないか?」
だって単純に考えて、質は確実にテレビの方が良いだろう......だというのになぜ小学生や中学生はYouTubeを見るのだろう。
(※これはこいつの勝手な主観です。YouTubeはとても素晴らしいコンテンツであり職業だと思っています。)
それが実に不思議なのだ......いや、もしかしたらあれなのかもしれない。テレビの番組はスマホで見ようと思えば見れるが、色々とアプリの設定をしないといけない....が、YouTubeはそんなこともなく、アプリさえ入れれば簡単に見ることができるし、単純に面白い。
だからこそ、手軽なYouTubeを見るのだろう。
だが手軽にテレビをスマホで見れたらみんなYouTubeを見なくなるのか?
「いや......それは確実にないんだろうなぁ」
だって、歌手や女優、俳優にファンがいるように......YouTuberにもれっきとしたファンがいるのだ。だからこそそんなことはないんだろうなぁって考え事をしながら歩いていると.....。
「えとっ......あ、あのっ!」
背後からいきなり声をかけられた。
何だろうと思い後ろを振り返ると......
知らない女の子がいた。
(.......いや誰だこいつ)
まぁきっと人違いだろうと思い、俺はその子を無視して歩き出すと......
「いやいやっ!待って待って!絶対気づいてたよね今っ!?」
少女はいきなり声を荒げて、そして俺の手を急いで掴んできた。
人違いだろうと思っていたが、どうやらお目当ては俺だったらしい。
「えーと......誰ですか?」
「えと......あのあのあのっ!」
俺の記憶にこの少女とあった記憶はないため誰なのかと聞いたのだが、「あの」しか言わなくなってしまった。
正直困るのだが......
「えっと......り、りとさんですよねっ!?」
「誰ですかそいつ」
「あ、あれ?......人違い?」
するとその少女はスマホと俺を交互に視線を前後させる。
全く......なんなんだ一体。
「いや.......りとさんですよね??」
「違いますけど?」
「いやでもこれ」
するとその少女はスマホを俺に見せつけてくる。そこには俺そっくりな顔が映っていた。
「....だれです?こいつ」
「りとっていう人ですけど....」
「あはは、人違いだと思うよ」
「そうなのかな......いやでもあたしの細胞全てがこの人をりとさんだと言ってる....」
最後の方は触れちゃいけないと思い何も聞いていないことにして、一体何なんだろうこの少女は。
「じゃあ俺用事あるからさぁ、もう良いかな」
正直これ以上関わるのはリスキーだと思い、特に用事などないが、口実を作りその場から逃げようとする。
「ちょ、ちょっと待って!!」
するとその少女は突然目を見開く。
「い、今っ!頬を手でかいた!」
「いやそれぐらい誰でもすると思うのだが...?」
「りとさんはよく言っていたよ!嘘をつく時頬を手でかいちゃうんだって!」
.......っち。
「絶対りとさんだよね!いや、絶対にそう!あたしの細胞が!遺伝子が!子宮が!りとさんだと告げてる!どうなの??あなたはりとさんなの??」
.......おおう。目にハイライトがないんだけどこの子。なんかまるで......もう逃げれないんだと錯覚させられるような感覚だった。
非捕食者というのはこういう感覚なのだと.....思わされるような感じだった。
このままじゃいけないと思い、声を荒げる。
「あぁもう!うるっせぇな!大きな声でりとさんりとさん言うな!」
口元に人差し指を当て、しーっという動作をする。
「そんな馬鹿でかい声で言うなよ.....恥ずかしいわ」
「や.....やっぱり、りとさんなの?」
「.....はぁ」
俺はもう無理だと悟り、ため息をつく。
「全く......君はすごいね?」
「そう言うってことは.....間違い無いんですよね?」
「だから大きな声で言わないでくれ.....」
それにしても、流石に驚いた。
昔、インスタにあげたつもりがTwitterに間違って投稿した顔写真を持っていたり、何気なくつぶやいたことを覚えているだなんて.....。
「君は.....狂信者かなにかなのか?」
「あははっ、よくわかりましたね?......あたし、あなたの登録者が10人の時から見てる古参でしたから」
「そういう古参アピールする奴って、大体嘘だったりするんだぜ?」
「あたしがそういう人だと思いますか?」
「.....まぁ君に限っては違うんだろうね。そもそもその俺の癖はそれこそ古参の人にしか言っていないからな」
まぁ、説明をすると俺は昔......YouTuberだった。だが途中で色々なことがあり、俺はそれをやめた。やめてから結構経つんだが.....まさか今となってこんなことになるだなんて流石に予想外だった。
「......で?その写真と似ていたから俺に声をかけたとか、そんな感じ?」
「はい、そんな感じです。あとは乙女の勘ですね」
「よくもまぁ声をかけれたもんだな.....考えなかったのか?本当に人違いだった時を」
「考えましたけど、その程度で落ち込みませんよ、あたし」
「そりゃすごい....」
「というより、あたしはあなたにずっと聞きたいことがあるんです!!」
まぁ......そりゃあそうだよなぁ。こんなにも俺を好いてくれてるファンが、あのことをきかないわけがないよなぁ。
だが生憎と.....俺は答えたくないんでな。
「えーっと.....さっきも言ったように、用事があるんだよ」
「そうなんですか?.....じゃあこれ」
すると彼女は俺にスマホを突きつけてきた。
「これ、あたしの連絡先です.....あとで会ってくれるんですよね?」
「え、えっとだな.....」
このまま交換したら、さらに面倒なことになることは確実.....うーむ。
「.....もしかして、今どうやってこの場から逃れようとか思ってました?」
「あはは.....逃がして」
「絶対に逃しませんけど」
.....っ、まただ、またこの感覚だ。
本当に絶対に逃がさない.....そんな思いが目に現れていた。
「......あたしは、あなたのファンなんです。だから、あたしはなぜあなたがやめたのか、それを知りたい」
「もう引退してるんだから別に良いだろ...?」
「それはあなたの中だけですよ.....あたし達ファンの中では、ずっとあの時から時間が止まってる」
「投稿を辞めるのは俺の勝手だろ?」
「はい、あなたの勝手です.....ですがあたしはファンとして聞きたいんですよ」
「.....無理だと言ったら?」
「だったら、あなたは明日から投稿できるんですよね?」
「無理だな、めんどくさい」
あぁ.....本当に、めんどくさい人に捕まってしまった。いくら頭の中で策を考えても、全部うまくいく気がしない。
「.....まぁいいです、とりあえずこれ」
「.....なにこれ?」
「あたしの住所ですよ」
「ここに来いとでも言うつもりか?」
「どっちでもいいです.....あたしはきて欲しいですけどね」
これは正直好都合すぎる......どういうつもりだ?
「あたしはあなたをここで待ち続けます。
文字通り、ずっと」
「......どうして、そんなに」
「あなたは私の尊敬する人だから.....それだけですよ」
......なるほどな。もしこの住所を悪用されたりとかを考えたりせずに、俺にこの住所を教える......どうやらその思いはホンモノらしい。
「......それでは」
そうして彼女は去っていった。
「......はぁ、これを捨てるわけにもいかない、か」
そうして俺はそのメモをポケットに入れ、歩き出すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます