第9話 ファーストキス〜廉〜
廉がシャワーを浴びて部屋に戻ると、結衣は寝息を立てている。向日葵柄のワンピースは、この夏、何度か彼女が好んで着ていたもの。
廉は結衣のそばにいられるよう、ベッド脇の椅子にどかりと腰をおろした。カロリーメイトをもくもく食べるが、何の味もしなかった。
今、目の前で寝てるこの子に、何かしてしまったとしたら。
自分を信頼してくれているとわかる。そりゃ、そうだよな。元生徒会長の肩書きは伊達じゃない。校内でのいろいろな面倒を引き受けてきたし、いろんな我慢もしてきた。
「けどな。結衣。俺は『兄貴』じゃないから」
優しく、彼女に向かって呟く。そして、眠っている結衣の隣に一緒に横になる。結衣を引き寄せて、その頬にほんの少しだけ、唇を押し当てた。
ほんの一瞬だけの罪深い行い。
結衣は目を覚ましてはいない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます