第24話 ジレンマ 16時30分

応接室の柱時計が

コツコツコツと時を刻んでいた。


「それで。

 これからどうするんだ?」

松平がソファーに背をあずけて

大きな欠伸をした。

「私達がこのまま一所に集まって

 お互いを監視しておけば

 無事にこのゲームを終わらせることが

 できませんか?」

塚本が控えめに提案した。

確かに少女の主張はもっともだ。

しかし・・

利益が相反する者同士が

協力することがどれほど難しいことなのか、

僕は良く知っている。


「全員一緒だって?

 冗談じゃないね」

案の定、平原がすぐに不満を口にした。

「殺されるよりマシだろ、婆さん?」

それに対してすかさず西岡が突っ込んだ。

「さっきから

 『婆さん』『婆さん』て失礼だねぇ。

 近頃の餓鬼は言葉遣いもなってないね」

平原が西岡を睨み付けた。

「お、落ち着いて下さい・・平原さん。

 それよりもお食事の準備をしませんか?

 厨房には豊富な食材が揃っていましたし。

 先ほども仰ってたじゃないですか?

 昔は料理人として働いていたこともあるって」

塚本が平原を優しく宥めた。

「それならアタシも手伝うわ。

 実はアタシ。

 こう見えても料理は得意なの」

そう言って手を挙げたのは意外にも菅野だった。

「ほう。

 そいつは有難い。

 何せ朝から何も食べてないからな。

 それに儂は料理に関してはまったくダメだ。

 カップ麺にお湯を入れることしかできん」

松平が「わっはっは」と

大きく口を開けて笑った。


その時、

応接室の柱時計が

ボーンと16時30分を告げた。


直後、扉が開いて

血相を変えた六条が飛び込んできた。

「た、大変ですっ!

 部屋に鍵が掛かりません!」

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