第19話 郷田満

応接室の柱時計が

コツコツコツと時を刻んでいた。



死体のある部屋を調べてから

僕達はふたたび応接室に戻ってきた。


ベッドで死んでいた男の身元は

部屋にあった財布の中の免許証で

確認することができた。


郷田満(ごうだ みつる)

38歳。


男の荷物は他に見当たらなかった。



「あの男が死んだのは

 やっぱりゲームのせいかしら・・」

ソファーに座った菅野が

誰にともなく呟いた。

「郷田が

 8人目の招待客だったわけか」

隣の松平が独りごちた。

「そ、そんな・・。

 わ、わたしはゲームなんて・・。

 い、嫌だ・・。

 し、死にたくない・・

 し、死にたくない・・」

菅野の対面に座っていた六条が

怯えたように独り言を繰り返していた。


西岡は

柱時計の横の壁に背を持たせかけて立ったまま、

電波の届いていないスマホを弄っていた。


その時、応接室の扉が開いて

ステンレス製のキッチンワゴンを押した平原と

その後ろから

少女が車椅子を器用に操りながら入ってきた。

「平原さんにお手伝いをお願いして、

 厨房でハーブティーを淹れてきました。

 お話の続きは

 これを飲みながらにしませんか。

 気分を落ち着かせる効果があります」

塚本が柔和な微笑みを浮かべた。

キッチンワゴンの上には

ティーポットとティーカップが載っていた。



「それで。

 あの男を殺したのは誰なんだい?

 犯人はこの中にいるんだろう?

 さっさと名乗り出た方が身のためじゃぞ」

六条の隣に座った平原が

カップを手に部屋の中をぐるりと見回した。

「簡単に犯人が名乗り出てくれりゃ

 警察はいらねえよ。

 くっくっく」

スマホを弄っていた西岡が鼻で笑った。

「何が可笑しいんだい!!

 考えがあるなら

 何か提案したらどうだい!

 この餓鬼が!」

平原が目を見開いて西岡を怒鳴りつけた。

六条と松平の顔に緊張が走ったのがわかった。

菅野が口を押えて小さく欠伸をした。


「それより。

 この郷田っていう男は

 どうしようもない奴だったみたいだぜ」

西岡は平原を無視して

手に持っていたスマホの画面を皆の方へ向けた。

そこには

嫌がる女の服を

乱暴に剥ぎ取っている映像が映っていた。

西岡がスマホの音量を上げると

女の悲鳴が応接室に響いた。

皆の目がその映像に釘付けになった。


「な、何なのよ・・それ・・?」

菅野が露骨に嫌悪感を表した。

そこで西岡が映像を止めた。

「他にも同じような動画や画像が

 このスマホには大量に保存されている。

 恐らく。

 郷田っていう男は常習的な強姦魔だ」

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