第12話 一階右棟

僕達は廊下を玄関まで戻って

さらに真っ直ぐに進んだ。


途中、退屈そうな西岡が廊下の壁を

コツコツコツと叩いていた。


正面にドアが見えた。

丁度、玄関を基準として

応接室と対称の位置に当たる部屋だった。

そしてその部屋の前で

廊下は左に折れていて、

その先に3つのドアが見えた。

つまり

1階の右半分にも4つの部屋があった。


僕はこの風変わりな建物について

思考を巡らせた。

おそらくこの建物は

真上から見ると凹のような形を

しているのではないか。

そして左棟の部分だけが

2階建てになっているのだ。



松平がドアを開けた。

その部屋の間取りはワンルームで

入ってすぐ左手にトイレがあった。

その隣にバスと洗面所があって

部屋の奥にはベッドがあったが、

他の調度品はなかった。

あまりにも殺風景で

とてもペンションの

ゲストルームとは思えなかった。

部屋自体は

応接室と同じ広さで

当然、窓もなかった。

「刑務所みたいだな・・」

西岡がポツリと呟いた。

僕と松平はそれには答えず部屋を出た。


次も、そのまた隣の部屋も

同様のワンルームだった。

問題は次の部屋だった。


その部屋のドアは廊下の一番奥にあり、

これまで等間隔で並んでいたドアとは違って

随分と離れていた。

そしてそのことから、

この部屋はおそらく遊戯室と同じ広さの

部屋だと想像できた。

さらにこの部屋のドアだけが

他の部屋と違い鉄製で、

しかもそのドアには鍵が掛かっていた。

松平が何度かノブを回して

押したり引いたりしていたが、

ドアはビクともしなかった。

松平は諦めて首を振った。


その時、廊下に光が射し込んできた。

見ると、

廊下を挟んで鉄製のドアの対面にある

もう一つのドアを

西岡が開けたところだった。

ドアの先に外の世界が見えた。

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