第24話


 ただ、動じなかった。


 以前までのクラウスなら感情的になっていたかもしれない。


 しかし今日は違う。


 何度も対峙している相手だ。


 実力差が開いているとはいえ、まずは自分のスタンスを貫かなければならない。


 ジークハルトの言葉自体も、できるだけ耳に入れないようにしていた。


 その方が、平常心を保てられるからだ。




 ボッ




 一気に出力を上げる。


 タイプ2は持久戦に向かない。


 身体能力のベースを上げられる分、持続できる時間は限られている。




 ジークハルトは構えた。


 最初に見せたクラウスの動きよりも、恐らく“速い”。


 緩急をつけることで、視覚的な要素を取り入れていた最初の攻撃に比べ、今回は完全に静止した状態からの「動き」だ。


 予測できる分、防御も取りやすい。


 ベース自体が速くても、予測できるのとできないのとでは大きな違いがある。



 どんな動きを見せるか——



 ジークハルトなりの期待があった。


 クラウスには、天性の野生味がある。


 動きが直線的になりがちではあるが、戦いの中で修正していく能力が、他の者たちとは一味違った。


 反応速度、距離感。


 いくつかの要素の中で、柔軟に対応できる部分が多い。


 それこそ、相手の攻撃や動きに対して咄嗟に対応できる部分は、生まれ持った“才能”と言っても差し支えないだろう。


 大抵のファイターは、決まった「型」の中で自らのスタイルを構築していくが、クラウスにはそういったものはなかった。


 目の前の出来事に対して、「思考」ではなく「体」で動く。


 その「柔軟性」が、他の生徒たちよりも格段に優れていた。

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