私だけのヒーローをください
私だけのヒーローをくださいと、神さまに身勝手な祈りをささげたところ、たしかに、その願いはかなった。
私に危機的な状況が訪れると、ヒーローが現れ、文字通り、私だけを助けてくれるようになった。
たとえば、私が道を歩いていて、暴漢に襲われたときは、私を助けるのに邪魔だった老人を蹴り倒し、寝たきりにさせた。
ちなみに暴漢は、ヒーローの超人的な握力で頭を握りつぶされた。その返り血で、私の白いワンピースが真っ赤に染まった。
また、あるとき、ボール遊びをしていた少女が道路に飛び出し、トラックにひかれそうになったのを見つけた私が、彼女を助けるために、道路へ近づいたところ、ヒーローによって止められた。
少女はトラックとぶつかり、その首がボールのように地面を転がった。
ヒーローならば、少女を助けられたはずである。しかし、彼は私だけのヒーローだったので、彼女を助ける義務はなかった。
さらに、別のとき。私が飛行機に乗っていると、エンジンのトラブルで墜落の危機に陥った。すると、ヒーローが現れ、私だけを連れて、飛行機から飛び去った。
「子供だけでも助けてください」と、すがる母親を無視して。
結局、その飛行機の乗員で助かったのは、私だけだった。
私だけのヒーローをくださいとお願いした日から、私はトラブルに巻き込まれることが多くなった。それはそうだろう。ヒロインがピンチに陥らなければ、ヒーローがその存在を示すことはできないのだから。
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