花に宿る願い

緑みどり

第1話

ある静かな村に、一人の少女リリアが住んでいました。リリアは幼い頃から特別な力を持っており、触れたものの心の声を聞くことができました。この力のために、村人たちからは疎まれ、孤独な生活を送っていました。


ある日、リリアは森の奥深くで、美しい不思議な花を見つけました。その花の心の声を聞くと、「私の力で願い事を一つ叶えてあげるよ」と囁いてきました。リリアはずっと孤独で、友達が欲しいと願っていました。そこで彼女は花にこう頼みました。「友達が欲しいの。私を理解してくれる誰か」。


すると、花の力で現れたのは、同じく孤独な少年レオンでした。彼もまた特別な力を持っていて、周りの人々から避けられていたのです。二人は互いの痛みを理解し、すぐに親友となりました。毎日森で遊び、悲しみや希望を分かち合いました。


しかし、二人の幸せは長くは続きませんでした。花の約束には代償があり、リリアとレオンが共に過ごす時間には限りがあったのです。半年後、花の力が消えそうになると、レオンもまた消える運命にありました。リリアは必死で花に頼みましたが、その力はもう無くなっていました。


リリアとレオンが出会ったとき、リリアは自分と同じく特別な力を持つ彼に強い親近感を抱きました。レオンの力は「心の痛みを和らげる力」でした。彼は触れた人々の苦しみや悲しみを、一時的に取り除くことができたのです。


しかし、この力はレオン自身の心に大きな負担をかけるものでした。彼が他人の痛みを和らげるたびに、自分自身がその痛みを感じなければならなかったのです。このため、レオンは自分の力を恐れ、孤独に生きていました。


リリアと出会った後、レオンは初めて自分の力を喜んで使うことができました。リリアが感じる孤独や悲しみを少しでも和らげたいと、優しく彼女に触れるたびに、二人の絆は深まっていきました。リリアもまた、レオンの心の声を感じることで彼の苦しみを理解し、慰めの言葉をかけました。


こうして、リリアとレオンはお互いの特別な力を通じて、深い絆を築き上げました。それが彼らにとっての救いと喜びだったのです。でも、だからこそ、別れは一層辛く感じられたのです。


「さようなら、リリア。僕は君のおかげで、初めて幸せを感じることができたんだ。」レオンの体が薄れていく中、彼は静かに微笑みました。リリアも涙を流しながら微笑み返しました。「ありがとう、レオン。君と過ごした時間は私の宝物だよ。」


レオンが消えた後も、リリアは森を訪れます。あの不思議な花の場所で、彼女はレオンとの思い出を胸に、また一人静かに過ごしています。しかし、彼女の心の中には確かに、彼との絆が輝いていました。

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