第24話
データマンとなった先崎は二人を止めることをしなくなった、今となっては先崎は一番賢明で堅実な道を行っている、その役割を果たす為、データを取るという明確な意思によってゲームと向き合っている。ここでこの二人を止めるのは残された者の役割、しかし、その巻き添えを
「ほら、あなた自身が証明しちゃってるじゃない、馬鹿は勝手に妄想してそれが全てと思い込んで、だからあなたもここを現実とせずに逃避ばかりして…」
「うるさい!」
納めることが正しいのか、いや、愚者は滅んでしまった方がいいのか、勝手に自滅してくれた方が良いのではないか、何とも言えない不快な思考が頭をよぎる。
「うるさいうるさい!」
「もういいよハク!」
「ガクはちょっと黙ってて!」
自身の正しさの証明と相手の否定、これが杉原の行動倫理感、『~であるべき』だから『~である』という主張、常に杉原の命題のようなものは自身の都合で出来ている、他者がどうではなく他者が自身に対してどう振舞っているか、そこが常に自身の正しさの証明に向かい、その結果他者の否定を行い続ける。
絶対的に自分が正しいと信じている。
「あなたは子供だからこのゲームにそぐわないの、馬鹿が入れば馬鹿な結果を招くだけじゃない」
果たしてこの場で杉原を説得できる者などいるのだろうか。
この者の都合に合わせる以外方法が無いように感じられ、全てに対して肯定し続けなければ納まる気配すらない、いかにそれが正論だろうが、いかにそれが正しかろうが、説得は敵と見なされ、論すれば必ず最終手段として殺そうとまでする。それが威嚇だったとしても、それが自衛のようなものであったとしても、人は人の内面までは知れないのだから、その行動から察するしかないという矛盾が杉原自身が杉原自身を皆から孤立するかのようなポジションに保つ。
ハクには酷だが杉原を止めるのは
「さっきから
「…うるさい」
「社会は馬鹿から死ぬようになってるわ、あなた、そんなこと続けてたら死ぬわよ」
「…うるさい」
「よくもまあそんな知能の低さで今まで生きて来れたわね、予言してあげるわ、ここで一番最初に死ぬのはあなたよ」
「うるさい」
もうやめてくれハク。
「うるさいうるさいうるさいっ」
杉原が銃を取った。
片手で銃を持ち、銃口をハクに向ける。
「まるで子バエね、
どうする、この場をどう鎮める。
「私が殺してやろうかしら、この馬鹿」
ハクがそれに対して両手で銃を持ち、杉原に構えた。
恐らくは杉原に撃つ意思は無い、銃を片手で持っているのがその証拠だ。
ただそれを理解出来るほどハクに余裕が無い、私にも卑劣な考えもよぎる、ハクがこのまま杉原を撃てば良いというそういう利害を計算してしまう。仮に杉原が架空側ならそれで良しとなるし、そうでなくとも杉原という不安分子がひとつ消えるという状況になり、そうなれば愚者のハクは弾が消費され、ハクが愚かな行為を実質できなくもなる。
待つが幸いか、凶と出るか。
「もうやめえや、どっちもアホちゃうか」
松葉が
ハク、杉原、互いに構えている、両手で構えるハクと違って杉原はまったくもって両手で銃を持つ様子もない、片手で銃口を向けたままだ、やはり杉原に撃つ意思は無い。
「島津博」
杉原がハクの名を言う、音量は控えめでそれでいて
私は思わず声に出ていた。
「杉原、死にたいのか」
これは言葉の通りそう感じたから、ある法則性のような、その杉原の特徴というかその独特な行動から無意識に
自殺のようなもの。
それは、杉原の数々の奇行や言動は、杉原自身の悲鳴と同じなのかもしれない。
「杉原優!」
銃声が鳴る、それは長く感じられ、それでいて妙な間があったように感じた。
次に額から血が吹き出る、首が後ろに持ち上げられるようにして駆動、顔が前後に揺れるように上下して即座にテーブルに落ちた。純白を赤く染め、画家が絵の具で弾く手法で描かれたモダンアートの絵画のようにして白いテーブルに赤い斑点模様が出来上がった。顔を突っ伏した状態で黒く濁った赤が漏れ、さらに顔周辺をどろどろと染めていく。
ぽたぽたと音が鳴る。
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