第三十六話 保護者、現る

「今日の昼御飯は!これ!じゃっじゃーん!珍味三種盛りデラックス弁当!」


『うおおおぉぉぉぉおーーーー!!!』

『豪華すぎー!!」

『流石に贅沢すぎて草』

『草』

『珍味三種盛り?一周回って不味そうw』


今日も星空は隣で配信しており、三重になったお弁当箱を広げて紹介していた。


珍種三種盛りデラックス弁当?

贅沢すぎるだろ。そんなものが食堂に売ってるのか。


「このお弁当、年に一度だけ売られる超高級弁当なんだよー!凄くない!?」


『凄すぎー!』

『年に一度だけ?よく買えたね!』

『すげー!」


年に一度だけ売られるのか。本当によく買えたな。


トリュフ、フォアグラ、キャビア。


俺はどれも食べたことないぞ。


「いやー、本当に大変だったよー。30000DPも使ったからねー」

「は?」


『は?』

『は?』

『三万DP?』

『高杉ーーー!!』


珍味三種盛りデラックス弁当の値段を聞いたコメント欄が大騒ぎとなる。


俺も口を開けて驚きで動けなくなる。

30000DP?一食で?


学校の飯で出していい金額じゃねぇだろ。

30000DPあったら一ヶ月は過ごせるぞ。


そんなことを思いながら俺はパンを貪る。

何という貧富の差か。

俺は100DPのパン二つに飲み物一つで昼を凌いでいるのに、かたや一食で30000DPも使っているとは。やはりパーティーは儲かるのか。


そんなことを思っていると、星空は俺の方を向く。


「そして、これを何と!ワン君と一緒に食べたいと思いまーす!」

「何ー!?」


俺はバッと星空を振り向き、大きい声を出す。


『おー!』

『感想待ってますー!』

『いいねー!』

『三万DPも使ってご飯奢るとかめぐたん太っ腹!』

『ワン君の大きい声、初めて聞いたw』


コメント欄が爆速で動いているが俺はそんなことを気にかける余裕もない。


「奢ってくれるのか?まじで?」

「うん!日頃お世話になってるからねー」

「まじか!ありがとう!」


『ワン君嬉しそうで草』

『ワン君、いつもパンだったからねw』

『喜んでるワン君かわいい』

『ワン君喜びすぎて草』


そりゃ喜ぶだろ。タダで30000DPの飯が食えるんだぞ。


「本当に太っ腹だなー!」

「ふふーん!感謝しなさい!」

「ありがとう!」


俺は即答で感謝の言葉を述べる。いやー楽しみだ。


俺は改めて珍味三種盛りデラックス弁当の中身を確認する。


熟成された美味しそうなステーキの上には薄くカットされたトリュフが乗っており、その横にはフォアグラがのったハンバーグが鎮座している。


別の重箱にはちらし寿司が入っており、その上には贅沢にキャビアが大量に乗っかっている。


もう一箱には彩りの一口サイズのオカズが仕切りに区切られてある。


これ、絶対うまいやつ。


「いただきまーす!あー……」

「ちょっと!ザ・ワンとかいう奴いる!?」

「ん!うっまー!これ美味すぎるんだけどー!」


屋上への扉が乱暴に開けられ、女子生徒の声で呼ばれた気がしたが、そんなことよりもキャビアが乗ったハンバーグが美味すぎる。


「ワン君、呼ばれてるよ」


『無視w』

『ガン無視で草』

『無視で草』

『無視するほど美味しかったのかw』


「星空、お前も食ってみろ!これうんめーぞ!」


俺は星空にハンバーグを勧める。


「ちょっと!いるんなら返事くらいしなさいよ!」

「は?」


すると、いつの間にか梯子を登ってきていた少女に怒鳴られる。

誰だ。俺の知らない人間だ。


「うわっ!今配信中だよ!?生放送してるよ!」

「知ってるわよ!確認してからきたんだから!」


星空が慌てて問いかけるが女子生徒は髪をかきあげながら自慢げな顔でいう。じゃあワンいる、とか言ってくるなよ。知っててきてるじゃん。


「え、顔とかも大丈夫?」

「別に問題ないわよ」


問題ないのかよ。星空といい、花園といい、こいつといい、顔を晒すのに抵抗ない人多すぎないか。

星空の配信何人見てるのか知ってるか。一万人だぞ。生放送だけでそんだけの人間が見ていて、アーカイブが残ったらその数十倍の人間が見る。


その結果、街中ですら声をかけられるという面倒臭い事が起こるのだ。


一人が好きな身としては寒気がするよ。


「それで、あんたがザ・ワン?」

「そうだよ。そう呼ばれている」


誰が言い出したのか知らないけどな。気付いたら広まってたし。


「あんた、ちーちゃんにおかしな事吹き込んだでしょ?」

「ちーちゃん?」


誰だそれは。そんなやつは知らない。


「花園千草!私のパーティーメンバーの!」

「ああ花園のことか」


花園のパーティーメンバーということはSクラスか。まさか今度はパーティーメンバーまで来るとは。


『保護者来たーーーーー!!』

『ママだ!』

『ママ来た!』

『お母さん登場!』

『これは神回過ぎるw』


「花園さんのパーティーメンバー?それにその赤い髪……もしかしてSクラスの火焔姫?」

「火焔姫?」


何だそのかっこいいあだ名は。羨ましい。


「うん。今年の一年生最強の魔法使いで火魔法に特化した複数のスキルを持ってるって噂の……」

「そうよ。火魔法はもちろん、火魔法攻撃力増加、火魔法経験値増加、火魔法防御貫通。火魔法系のスキルは大体揃ってるわね」


得意げに話すその女子生徒に俺は感嘆していた。


この時点でスキル4つも持ってるのか。それはすごいな。強くなったらコピーしよう。


「そういえば名乗ってなかったわね。1年Sクラス北條院姫花。よろしく」

「ああ、是非よろしくな」


俺は手を差し出し握手する。すると、北條院は気をよくしたのか、満面の笑みで握手を返してきた。


「それで、さっきの話の続きなんだけど、ちーちゃんにおかしな事吹き込んだのってあんた?」


『あっ……』

『あっ……』

『あっ……』

『あっ……』

『あっ……(察し)』


話が戻った事でコメント欄があっ、で埋まっていく。何があっ、なのかわからないが。


「違うが?」


俺は素直にそう答える。


『いやお前だろ』

『お前だよ』

『嘘をつくな』

『お前だよ』

『普通に嘘つくな』

『嘘やめろ』


コメント欄も俺が嘘をついていると決めつけてくる。いや、嘘なんてついてないぞ。

そんな俺の態度が北條院の気に障ったのか、また怒鳴られる。


「嘘つくんじゃないわよ!こっちは配信のアーカイブ見てきてるんだからね!」


確信犯で来てるならあんた?とか聞くんじゃねぇよ。

しかし、俺の身に覚えのない話だ。

花園におかしなことなんて何も吹き込んでいない。


「強くなるためにどうすればいいのか、と聞かれたから遠回しに才能があればいいと言ったつもりだったが?」

「完全に誤解してたじゃない!しかも、漫画のセリフまで使って!恥ずかしいと思わないわけ?」

「何が?恥ずかしいところなんて一つもないぞ」

「はぁ?誤解してるって分かったのなら解いてあげるくらいしてあげてもいいじゃない!」

「本人が努力しようとやる気になってるのに、それを否定するのは得策とはいえないと思ったんだが?」

「ぐっ……」


『理論武装w』

『正論パンチで草』

『ママ涙目』

『ママ頑張れ!』

『こんな奴に負けるな!ママ頑張れ!』


何故か北條院の応援コメントが流れている。何で俺がヒール役になってるのか分からないが、いくつかのコメントが北條院の気に障ったらしい。コメント欄にキレていた。


「泣いてないわよ!」


『ママが怒った!』

『ママ、怒らないで』

『オギャーオギャー』

『赤ちゃん湧いてて草』


「うるさいわよ、あんたたち!」

「コメントにキレるなよ。しかも他人の配信の」

「あんたもうるさい!」


うるさいのはお前だろ。


「納得したのならもう帰ってくれないか?星空が用意してくれた珍味三種盛りデラックス弁当が冷めてしまう」

「元から冷たいでしょうが!」

「そうだったな」


お弁当用の具材だから冷たくても美味しい。

次はこのトリュフが薄切りになって乗っているステーキを食べよう。


「ちょっと!まだ話は終わってないでしょ!」

「何だ?まだ居たのか。もう話は終わっただろ?」

「終わってないわよ!」


おかしな事を花園に吹き込むな、だろ。おかしなことなんて吹き込んでないし、そもそも俺から花園に近寄ったりなんてしていない。


北條院達が花園を抑えれば事は済む。


それで話は終わりだろう。


『ママ……;;』

『ママ……;;』

『ママ……頑張って……』

『ワンとの会話は心が折れたら負けだよ。頑張って』

『ワンカス手加減しろ』


北條院がコメント欄に応援されているが、俺は遠慮なく追い討ちをする。


「そっちの問題はそっちで片付けてくれ。以上だ」

「くっ……あんた、覚えておきなさいよ!」


『ママーーーーーーー!!』

『ママ。可愛い』

『ママ、捨て台詞も可愛い』

『ママ、涙目で草』


そう言って北條院は校舎に入っていった。覚えておきなさいって前に誰かに言われた気がするんだけど。


誰だったっけ。


「いやー、ワン君は本当に人に好かれるね」

「どこが?」

「だってほぼ毎日のように人が尋ねてくるじゃん」


一人も招いたことないんだけど。何もしていないはずなのに大体怒ってるんだけど。


「というか星空は終始ニヤついて見ているだけだったな。途中で会話に混ざっても良かったんだぞ」

「いやー、せっかくの撮れ高を邪魔するのはちょっと……」

「撮れ高なんかあったか?向こうが突っかかってきて俺がいなしただけだぞ」

「あははは!それが撮れ高なんだよー!」


そうですか。まあ俺としては別に問題ない。俺は箸を星空に渡す。


「んじゃ、食事の続きをしようか」

「うん!」


珍味三種盛りデラックス弁当。

今度買おうか迷うくらい美味しかった。

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