第十五話 決断

「コピー?コピーって……あのコピー?」

「どのコピーか知らないが、俺は他人のステータスをコピーできる」

「えー!凄いじゃん!そんなスキル聞いたことないよ!」


やはり迷宮に詳しい星空でも聞いたことないらしい。そうだと思ってたけどな。


「俺は他人のステータスをコピーして使うことが出来る。それが俺が持つスキルだ」

「じゃあもしかして私のスキルとかも……」

「昨日コピーした。すげぇじゃん。スキル3つもあるなんて」

「え、あ、ありがとう。まあ私は動画でステータス公開してるけど」


そうなんだ。見てないから知らないけど。


「それが小鳥遊君の能力……」

「ああ、だから初日俺の前にいた坂田って奴のステータスをコピーしちまった。結果的には良かったのかもしれないが」


世界初の能力が世間に晒されてあれこれされるよりも最弱として過ごした方がまだマシだ。


「と言うことは最強の人間をコピーしたら最強になれるってこと?」

「さあな。どうだろ。理論上はそうなるが実験してみないことには何とも言えない」

「それやばいじゃーん!絶対試した方がいいって!」


そんなことは言われなくとも分かってる。それよりもだ。


「しつこいようだが、この事は絶対に他言無用だ。誰かに言ったら……」

「分かってる!絶対誰にも言わない!配信でも言わない!」


星空は拳を握りながら断言する。

ちなみに言っても何もしない。俺の利益のために彼女を利用するのだ。だから彼女が裏切っても俺が悪い。

仕方がない。注目を浴びることになっても金儲けは出来るだろうし。


「それで、お前に」

「ちょっと待って!」


俺が頼みたいことを言おうとすると、星空が待ったをかけて来る。


「何だ?」

「その、お前って言うのやめて」

「今?遅くない?」

「今まではちょっと距離感あったし、まあまあって感じだったけど、秘密を共有したのならちゃんと名前で呼んで!」


俺はあまり自分の名前に頓着がないが、星空にとっては違うのかね。まあそれは問題ない。


「じゃあ星空でいいか?さん付けした方がいいか?」

「いや、呼び捨てでいいよ!それより下の名前で呼んで!メグたんかメグメグで!」

「それはない。星空でいいんだな。じゃあ話戻すぞ」

「ドライ!」


俺がメグたんとか言うわけないだろ。自分で言ってる姿を想像するだけで鳥肌が立つ。


「俺が星空にして欲しいことっていうのは、俺が手に入れたアイテムを星空が代わりに売って欲しいってことだ」

「ふむふむ」

「そのDPを俺に渡してくれ。もしくはアイテムとかに交換してくれ」

「あー、なるほどー!って言いたいところだけど、それはちょっと難しいんじゃないかなー」

「何故?」


個人間のDP交換は記録に残るため足がつく。しかし、アイテム交換ならば生徒の持ち物までは学園側も把握していない。

それならば足がつかないはずだ。


「だって君、ソロだよね?」

「ああ、一人で潜るつもりだ」

「私、PTで潜ってるんだよね」

「……ああ、なるほど」


PTで潜っている以上、彼女が狩っているモンスターや、アイテムなどは仲間に把握されていると言うわけだ。


「私のDPが異常に増えてたら、その、言いづらいんだけど変な誤解与えちゃうから」

「あー、そうだな。そっちのこと考えてなかったわ。すまん」


ダンジョンに一緒に潜って同じモンスター倒しているはずなのに、何故か一人だけ金持ちになってたらそりゃネコババ疑われるわな。


「じゃあどうするかー……」

「うーん、考えたんだけど、私と一緒に迷宮潜らない?」

「は?何言ってんだ?」


別にソロにはこだわりはない。ただ、レベルの高い星空と俺が組んだら、それこそ意味がない。


「俺が星空と迷宮に入ったらそれこそ怪しまれるだろ。一緒にゴブリン退治でもするのか?」

「いやそうじゃなくて、配信をしながら私と同じ階層で戦ってちゃんとアイテムを手に入れるの!」

「うん?」


何を言いたのかよくわからない。


「そんなことすれば俺が1レベ以上の強さってバレるんじゃないか?」

「うん!その通り!」

「全然ダメじゃねぇか!何がその通りだ!」


思わず突っ込んでしまう。期待したのに俺が隠したいこと全然隠せてない。だが、星空は俺のツッコミを予想していたのか動じずに話を続ける。


「でもー、何もかも隠したいものは全て隠して欲しいものは何もかも手に入れる、そんな都合のいい話はないと思うよ?」

「ぐっ……」


星空のくせに一丁前に正論かましてきやがった。


「君がこの学園で一番やりたいことがお金稼ぎ、そして絶対に隠したいことがコピースキルとレベルが上がること。ならこの二つを満たすのって、私と迷宮で配信をしながらの狩りだと思うんだよね」

「いや、意味が分からない。何でお前と配信する事になるんだよ」

「証拠を残すためだよー。私と二人で行っても私が狩ったのもらっただけって思われるかもだけど、証拠を残せば君も下層で戦えるって証明になるじゃん!グッドアイディア!」


星空は指をパチンとしながら自画自賛している。だが、俺は無表情から変わらない。


「いや、なら俺一人だけの動画でいいだろ。何でお前との配信に出る事になる?」

「疑われた時味方がいた方が良くない?確かに小鳥遊君は下層でモンスター倒せてます!私が証明します!って言った方が説得力増すでしょ?」

「そんなものか?」

「うんうん!配信なのは味方を増やす為なのと、動画と違って編集出来ないから動画より説得力が増すからだよー!」

「ああ、なるほど」


星空の拳を握りながらの説得に納得しかけている。


「それで俺の実力が隠せないのは?」

「そこが問題なんだけど……、もうそこは振り切っちゃえば?」

「振り切るってお前……」

「ステータスは隠せるんだよね?レベルとかも」

「ああ隠せる。鑑定石で確認した」


今の俺のステータスは坂田のステータスだ。何があるかわからないので、ステータスは基本これで生活している。


「ならいいんじゃない?1レベルって言い切れば。証拠はないんだし」

「うーむ。しばらくうるさくなりそうだな」

「それに見合うだけの見返りはあるよ」

「……」


悩む。星空の言う事には一理あると思う。そんな俺に、星空は三本の指を突きつける。


「君が取れる選択肢は三つ」


そう言いながら、一つ目をおろす。


「まず一つ目が何もしない。このまま全部隠し通して、お金がなくなったら精々三層のゴブリンとかを狩って日々の生活費を稼ぐ」


三層くらいならまだ1レベルの弱小ステータスでも誤魔化せるだろう。コツを掴みましたとでも言えば大量に魔石を持って行っても怪しまれまい。だが、それで稼げる金額は高が知れている。


「そして、二つ目、私とこそこそ隠れながら証拠動画を撮りつつ狩りをする。これは説得力に欠けるし、女の子と二人で狩りに行ってるって間違いなく噂になる。正直私もちょっと勘弁して欲しい」


少し嫌な顔をしながら二つ目の指を下ろす。

ああ、そう思われることもあるのか。


「そして最後!ステータスは最弱でレベルは1から上がらないのに、あらゆる高レベルのモンスターを薙ぎ倒す、最強の1レベ。「ザ・ワン」として配信者デビュー!私とのPTもコラボしてるだけのビジネスパートナーで通す!どう!?」


最後の一つだけは下ろすことなく俺に突きつけ、そう言った。


「……」


悩んだ末、俺が出した答えは……。





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