迷宮学園の落第生

@kiriti

序章 迷宮学園の落第生

第一話 始まり

東日本迷宮攻略育成高等学園。


ーー20XX年。世界中に突如として迷宮が現れた。当時は政府の地下実験場だの、宇宙人の地下施設だの、地底人の国への入り口だのと、様々な憶測と共に混乱があった。


しかし、月日が経ち、ダンジョン産の魔石やアイテムが現代社会でも非常に有用なものであると認識した各国政府はダンジョン攻略を国策として打ち立てた。


その一つがダンジョン攻略を職業として生業にする探索者。

そして、日本政府は探索者を育成するために四つの迷宮攻略専門の高等学校を創設した。


北海道にある北日本迷宮攻略育成高等学園。

東京都にある東日本迷宮攻略育成高等学園。

京都府にある西日本迷宮攻略育成高等学園。

福岡県にある南日本迷宮攻略育成高等学園。


命の危険もあるダンジョンに学生を行かせることに、当時は大きな批判もあった。しかし、それ以上に通いたいと希望する生徒が多かったこと、また世界中で同じような政策がとられていたこともあり、日本政府はこれらの高等学校の創設を行った。


当時はかっても分からず学生から死者も出したが、ダンジョンの魔物の攻略が分かってからは学生の死者数は年々減っており、ここ数年は死者0を達成する程だった。


そのかいもあって年々迷宮攻略高校への志望者は上がっており、もはや、学生をダンジョンに行かせることを反対する者達の声が聞こえなくなりつつある今日この頃。


キーンコーンカーンコーン。


三限目のチャイムが鳴り終わると同時に俺は教室に入る。


「おいおい、落第生の翔が来たぞ!」

「最底辺なのに重役出勤とはお偉いことで!」

「「「はははははは」」」


同時にクラスメイトからヤジが飛んでくる。

俺はそれらを無視して、一番左後ろの自席に行き、どかりと座って欠伸をする。

教師は図々しく座った俺をチラリと見たが、何も言わずに教室を去っていく。


「おい翔、レベルは上がったのか!?」


そう声をかけられるが、俺は答えるのが面倒くさくて、窓の外を見るふりをして無視をする。


「おい、無視すんじゃねぇよ!」


そう怒鳴ってきたので、このまま無視するとさらに面倒くさくなると思った俺は仕方なくそいつの方を向き、気怠げに話す。


「はぁ、上がってないよ」


そういうと、また爆笑されからかわれる。


「だろうな!はっはっはっ!」


何がおかしいのか、彼らは笑い続ける。

世界で唯一レベルの上がらない人間。ついたあだ名が「ザ・ワン」。

だが、たまに配信などに出てすっかり有名人となった俺を彼らは妬んでいるのだろう。


「はぁ」


俺は用が済んだとばかりに肘をつき、窓の方に向き直る。

言い返す気もない。彼等の嫌がらせやイジメは今に始まった事ではないし、悪口程度なら実害はないのでどうでもいいからだ。


俺が無視した後も彼らは俺の悪口に花を咲かせている。だが、声が大きく騒いでいた為、そのすぐ近くで友人と喋っていた女生徒の癇に障ってしまった。


「はぁー、もう坂田!うるっさい!」

「ひぇー、すみません!」


机をバンと叩かれ怒鳴られた坂田達は萎縮して謝罪する。


怒鳴った少女の名前は、文月奈々美。

そして文月が怒鳴っている間、迷惑そうに坂田達を見ていたのが、如月双葉。


このクラスで一番の美少女は、と問われればこのクラスの人間なら文月か如月であると即答するだろう。


何せこの二人はこの迷宮学校に通いながら、その傍らで読モをやるほどの美少女なのだから。


文月奈々美。

一言で言えばギャル。金髪のロングに、勝気そうな顔、細長い脚に大きな胸。本当に高校一年生かと聞きたくなるほど大人びた美少女である。


如月双葉。

奈々美同様、ギャル。髪は茶髪のサイドテールによくしており、相手を見下したような挑発するような表情をしており、奈々美同様スラリとした細長い脚に大きな胸をした美少女である。


そんな美少女二人に睨まれた坂田達が萎縮するのは当然と言えた。


しかし、周りの生徒達にもすこし緊張が走り、しんとしてしまう。


彼女達二人は美人である。それに性格も勝気なこともあり、このクラスの人間は男女共に彼女達には逆らわない。


だが、それ以上に、このクラスの人間が彼女達に逆らえない理由があった。


それはこのクラスの誰よりも、この二人のレベルが高いから。この迷宮学校において、レベルは正義である。


レベルの高い生徒の多少のお痛は見逃されるのがこの学校の暗黙の了解。


逆らって殴り合いにでもなれば負けるのは坂田達なのだ。


武力、顔面偏差値、性格、その全てにおいてこのクラスの頂点。それ故に、この二人はクラスの女王として君臨していた。


「あー、もう本当辛気臭い!だからあんた達は落ちこぼれなのよ!」

「そうそう、あーあ私ももうちょっと覚醒度が高ければCクラスに行けたんだけど」


しんとした空気に我慢できなかったのか文月がそう怒鳴り、如月も同調する。


俺が通っているこの学校、東日本迷宮攻略育成高等学校には、才能、ステータスの順に五つのクラスが存在する。


上からS、A、B、C、そしてF。


東日本迷宮育成高等学園1年F組。


それがこのクラスである。

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