迷宮学園の落第生

@kiriti

序章 迷宮学園の落第生

序話

ーー中央迷宮20階層にて。


「ファイヤーボール」


俺がそう唱えると、右手に持ったワンドから火の玉が出現し、目の前の鎧と剣を持った豚の魔物、オークソルジャーに放たれる。


「プギィぃぃぃぃィィーー!!」


ファイヤーボールはオークソルジャーの顔面に直撃し、締め殺される豚のような鳴き声を上げながら悶え苦しんでいる。


俺はそれを確認すると、俺に向かってくるもう一体の魔物、大盾と槍を持ったオークジェネラルに同じファイヤーボールをぶつける。


「プギャぁぁぁぁぁぁ!!」


オークジェネラルは雄叫びのような声をあげ、大盾を構える。

その大盾に俺のファイヤーボールが当たり、爆発する。


「どうだ……?」


そう口にし、相手の生死を確認しようとすると、再度雄叫びを上げながらオークジェネラルが煙の中から無傷で現れる。

そして、俺の攻撃が効かないと分かると、その豚のような顔をはっきりと歪ませ、突進の構えに入る。


「ソロで盾持ちに炎魔法は厳しいか」


俺はその光景を見ながら冷静に思考する。炎魔法だけでは厳しい。

ならば……。


選択セレクト


俺はそう呟き、自身のスキルを変更する。


[小鳥遊翔/レベル32]

[覚醒度:39%]

物理攻撃力 23

魔法攻撃力 56

防御力 32

敏捷性 38

[スキル]

闇魔法 レベル3

風魔法 レベル2

魔法攻撃力増加 レベル2

敏捷性増加 レベル3


「ダークネス」


スキルを変更した俺は突進を開始したオークジェネラルに闇魔法を放つ。


「プギィぃぃぃぃィィーー!!」


咄嗟に盾を構え、俺の魔法を防ごうとしたオークジェネラルだが、座標指定のこの闇魔法は盾では防げない。


オークソルジャー同様、顔面に俺のダークネスをくらったオークジェネラルがもがき苦しむ。

オークジェネラルが顔に真っ黒いモヤがまとわりつくを取り除こうと必死にもがいているが、一向に晴れる気配はない。

俺はその様子を確認し、ゆっくり近づく。


「さてと、トドメを刺すか……」


そう呟き、腰の鉄剣を抜こうとすると、背後から何か羽ばたきのような音が聞こえ振り返る。


少し薄暗い洞窟内で、音が聞こえる方に目を凝らすと、俺の方に飛んでくる何かを発見した。


「コウモリ……?」


少し不規則な動きをしながら飛んでくる物の正体。それは1メートル近い大きさをしたコウモリだった。


「こいつらの悲鳴を聞いてエンカウントしたか。しょうがない」


そう呟くと、コウモリ目掛けてワンドをかざし、再度魔法を唱える。


「ダークネス」


オークジェネラルに放ったものと同様、狙った位置に真っ黒いモヤが突然現れる。


だが、不規則に飛ぶコウモリは俺のダークネスを軽々と避けてしまう。


「それならば、ウィンドカッター」


ワンドから風の刃がコウモリに飛んでいく。かなりの速さで飛んでいったのだが、距離も遠く、相手の動きもかなり早いため、これも避けられてしまう。

このまま魔法を放ち続ければいずれ当たるだろうが、高々コウモリ一体に魔法を放ち続けるのはMPが勿体無い。


「仕方ない。選択セレクト


ステータスとスキルを変更する。


[小鳥遊翔/レベル35]

[覚醒度:42%]

物理攻撃力 53

魔法攻撃力 23

防御力 56

敏捷性 63

[スキル]

剣術 レベル3

剣聖 レベル1

物理攻撃力増加 レベル3

敏捷性増加 レベル3


ステータスとスキルが変更されたことを確認した俺は、腰の剣を抜き、構える。


「キャッキャッキャッ!」


コウモリは不規則に飛びながらももう魔法が飛んでこないとわかったのか、俺目掛けて飛んでくる。


「キーーーーーーー!!」


交差した一瞬、爪による攻撃を交わし、蝙蝠の首を刎ねる。


首の無くなった蝙蝠の死体は、迷宮の地面をゴロゴロと転がりながら壁にぶつかり、すぐに黒いモヤを出しながら消えていく。


「邪魔は消えたか。ならさっさとオーク共にトドメを……」


コウモリが消えたのでもがき苦しむオークジェネラルとオークソルジャーにトドメを刺そうとしたのだが、丁度この二体は絶命したらしく、黒いモヤになって消えるところだった。


すると、俺の身体にも変化が訪れる。血流が促進されたかのように身体が熱くなり、力が湧いてくる。


「やっとレベルアップしたか」


これでやっと23・・レベルである。

命を落としかねないダンジョン内で、俺はソロで活動している。


諸事情により魔石やドロップアイテムも交換できない為、装備もこの階層で戦う探索者達よりもよりも遥かにグレードの低い装備を使っている。


同じ理由でパーティーも組めない、俺は確実な安全マージンが取れるこの階層で戦っているのだ。


しかし、最近はレベルの上がりがあまりに遅い。もうこの階層は俺のレベルの適正階層ではないのだろう。


「次は21階に行くか」


俺はそうぼやきながら、落ちた魔石やアイテムを拾い集める。


「んーーーーー!」


一仕事終えた俺は伸びをし疲れた身体をほぐす。


「よし、レベルも上がったし帰るか!」


今日の目標は達成された。それに満足した俺はその足で帰路に着く。


東日本迷宮攻略育成高等学園、略して東迷学園のF組寮へ……。




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