ハーレム・パンツ!
巨豆腐心
第1話 お約束の朝
お約束の朝
ドスッ!
朝には似つかわしくない衝撃と、痛みでボクは飛び起きた。
「ほら、起きろ! 翼」
重い! と感じたのは、お腹の上にかかった圧か、瞼か……。
でも、むりやりひん剥かれた瞼で見上げる先には、制服をきた少女がすわり、ボクをいたずらな笑顔で見下ろしている。
「幼馴染の美少女の笑顔と、尻圧で起きるなんて……。このぉ~、果報者♥」
本人に言われると、何とはなく腹が立つけれど、腹は立っても立ち上がることさえできず、ちょっと嫌味を言いたくなった。
「毎朝、体重測定をさせられている気分だよ」
「あぁッ! 私の体重を口にしたら、殺すからね!」
そういうと、草薙 向日葵――は〝イチャつく幼馴染ムーブ〟に厭きたのか、部屋からとびだしていった。
口にださなくても、乗っかってきたら大体わかるだろ……。もっとも小さいころのそれと比べれば、大分重くはなった。
時計をみると、朝六時――。歩いて学校まで30分とかからないのに、2時間以上も前……。
衝撃で飛び起きたせいで、二度寝は難しい。渋々とベッドをでた。向日葵に乗られる前から、ずっと立っているところもあるけれど、その上に乗られなくて色々な意味でよかった……。
準備を済ませて一階に下り、ダイニングに入るとすでに向日葵が朝食を食べ終えていた。
「遅れずに学校に来なさいよ!」
そういうと、向日葵は「ごちそう様!」とキッチンに声をかけ、ボクの家を飛びだしていった。
幼馴染だけど、ボクの家で朝食? と訝しく思う人もいるかもしれない。でも、これがボクたちの日常であり、それは入れ違いで入ってきた彼女の妹、菫――も同じである。
まだ小学生の菫は「おはようございます」と恭しく頭を下げると、ダイニングにボクしかいないことを確認し、近づいてきて、そのままスッと唇を重ねてきた。ボクもそれを受け入れる。
彼女がどうしてキスするのか? それは後々語ることもあるだろう。
彼女は少し恥ずかしそうに、いつもの自分の席について、少し赤い顔をしつつ準備された食事に口をつける。
菫は食べるのが遅く、最初に食べ始めても、いつも終わるのは最後だ。
「おはようございま~す」
輪唱で入ってきたのは、木之元 メイプル、マロン――の双子の姉妹。
母親が欧州の人で、メイプルは金色の髪にブルーの瞳、マロンはブラウンの髪にグリーンの虹彩と、二卵性だ。
その後ろから現れ、消え入りそうな声、実際にはほとんどかき消された挨拶で入ってきたのは、妹のポロニア――。
ポロニアはアルビノの形質が強く、髪はほとんど銀色であり、肌も真っ白で、瞳の色が金だ。
木之元家は、幼馴染という位置づけではないけれど、こうしてボクの家にきて、朝食をとるのが日課だ。
「たっちゃん。奎を起こしてきて」
キッチンからそう声をかけられ、ボクは立ち上がった。家に人が集まる中で、ボクの妹だけがまだ夢の中……。
「奎、入るぞ」
ノックはするだけムダなので、そのまま部屋に入った。朝が弱く、声かけぐらいで起きることはない。
脱いだ服が床に散らばっている。そして、ベッドに横たわる奎は、あられもない姿だった。
どこかのハリウッド女優が「眠るときは全裸」といったのを真に受け、それを実践するのだ。
「起きろ。ほら、遅刻するぞ!」
肩を揺さぶっても、まだ小五の幼い体は大きく波打ったりしないけれど、春先の朝はまだ少し肌寒いのに布団をはだけるため、先端はつんととがっており、そこを強調する。
「早く起きないと、エッチなことをするぞ!」
それでも幸せそうな寝顔を浮かべるので、ボクはその股に手をもっていった。
「ひゃん‼」
奎は飛び起きた。その瞬間「お兄ぃのエッチ!」
「これが一番、確実に起きるだろ? 早く準備しろ。みんな集まっているぞ」
むくれる奎をのこして、ボクは妹の部屋をでた。 別に、妹の貞操を犯そうとしたわけじゃない。内股をこすり上げたのである。だってそこが一番敏感だから……。
三つの家族、その子供たちが集まって一緒に朝食をとる。今ここにいない、ボクの姉の昴、そしてもう学校にいった向日葵、さらにまだ眠っている、保育園に通う妹の張をふくめても、男はボク一人。
一見すると、ハーレム展開だけれど、せまいコミュニティで女の子ばかりになってしまうと、男としての威厳は失われ、扱いが女の子と同等となる……これはそういう話だ。
小さいころなら、それでもよかった。おままごと、お人形遊び、女の子のする遊びにも付き合ってきた。
でも、ボクも中学二年生となり、思春期真っ只中ともなってくると、話がちがってくる。
ハーレムだけど、ハーレムになりきれない。これはそんな物語である。
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