第6話
「佐々木君との会話は、このくらいですね...」
「うーん...」
話しながら飲み進めて空き缶になったコーヒーを地面に置くと、熾条さんは、缶の縁を咥えたまま椅子の背もたれの上に両腕を置いて生返事をするだけだった。
「どうですか。何か分かりました?」
「うん。昨日調べ物をした甲斐もあって、大体分かったね」
熾条さんはそこで言葉を区切ると、僕と同じように空き缶を地面に置いた。
「最初に言っておくと、夕君の予想通り二人の生徒の死は夕君と関わったことが原因で間違いないね」
「......そう、ですか」
明確な理由や確証があったわけではないが、熾条さんに面と向かってはっきり言われたことで胸にずんと重いものがのしかかったような気がした。
「でも、これは夕君が悪い訳じゃないんだよ。夕君の体についている
「呪いのようなもの...ですか?」
「そう。私らの界隈じゃ人によっては加護だとか才能だって言う人もいるけど、そういうのを全部ひっくるめてその人自身が苦しんでるなら私はそれを呪いと呼ぶ。おそらく夕君にかけられた呪いは、君と関わって、いくつかの条件が満たされると発動してしまうみたいだね」
僕には呪いがかけられている?正直、昨日から熾条さんの話は非現実的すぎて頭が追いつかなくなる。
「もし熾条さんの言うとおり呪いだとするなら、それって解けたりするんですか?」
「もちろん。そのために専門家やってるからね」
淡い期待を胸に消えいるような声で顔を上げると、熾条さんは自信たっぷりの笑顔で応えてくれた。
「ほ、ほんとですか?」
「もっちろん。じゃあ早速解いちゃおっか?」
「お願いします!」
やっと誰とも迂闊に話せない何かに怯える毎日から解放される。さっき胸にのしかかった何かがすっと消えていくような気持ちが湧いてきたその時、
「そこまでだ、熾条」
ドアが勢いよく開け放たれる音と共に女性の声が教室に響いた。
ドアの方を振り返ると、そこには全身黒いスーツを着た女性が立っていた。その女性は明るい茶色の短めの髪が寝癖を付けたままのようにボサボサとさせており、少し開いた口からは鋭そうな犬歯がきらりと光るのが見えた。
「あれ?ワンちゃんじゃん」
突如現れた女性に困惑していると、険しい顔をしている彼女に対し、熾条さんは友達に話しかけるような調子で声をかけた。
「ワンちゃんって呼ぶな!あたしのことはヘルハウンド
「前から思ってたけどその呼び方、自分で言うのかっこ悪いからやめた方がいいよ?」
「うるさいな!あたしが格好いいと思ってるからそれでいいんだよ!」
自分のことをヘルハウンド梗花と自称する謎の女性と熾条さんの言い合いをただ眺めるまま呆然としていると、それに気付いた熾条さんが改めて紹介しはじめてくれた。
「夕君。彼女は
「はぁ...」
一応スーツは着ているが、とても警察の人には見えないが....。
「おい熾条。そんなことより何を勝手なことしようとしてるんだ」
熾条さんからの説明で納得したので柳さんに一つ会釈をして挨拶するも、彼女は僕が見えていないかのように無視して話を続け出した。
「勝手なことって?」
「あたしが依頼したのはこの学校で起きてる理外状況の調査だ。原因を見つけた後、そこから先どうするかはお前の決めることじゃない。
その時、柳さんと目が合った。その時の彼女は、まるで僕のことを汚い物でもみるような冷たい目をしており、背筋がぞくりと震えた。
「ワンちゃんには悪いけど、それはできない相談かな」
熾条さんは、いつもの調子で話しながら柳さんの目を見て畏縮している僕の腕に抱きついてきた。
「なに?」
熾条さんの言葉に、柳さんの顔がより一層険しくなる。
「実は、私も彼の呪いにかかっちゃって、このままだと二日後には私は死んじゃうんだよね」
突然のカミングアウトに僕と柳さんは言葉を失いフリーズした。
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