成蝶する人間
@Shiraseoka
成蝶する人間
私が幼い頃の話。
お母さんにおじいちゃんは今度私の知らない場所に旅立つって教えてくれた。
「おじいちゃんはどこにいくの?」
「さぁ。どこだろうね」
おじいちゃんは言葉を濁した。私はおじいちゃんが面白い所に黙って行くと思っていた。
――おじいちゃんは空に旅立った。
おじいちゃんが最後に私にくれた言葉がある。「○○ちゃん、人はね。大人になった後に空を飛べるはねをもらえる。だから、どこへだっていけるんだよ」
「私、飛べるの!」
「あぁ。どこへだってその羽があればいけるよ」
私は羽があったらどこにいこうかな。友達のところかな?あんなとこ。それとも・・・・・・。
「おじいちゃんはどこに行きたいの?」
「わしはどこにもいかんよ」
「えぇー。おじいちゃんつまんなーい」
おじいちゃんは微笑ましいものを見ていた。
今日は大事な商談の日。彼女の昇進がかかった大事な日。私は大人になってからおじいちゃんの言葉を思い返していた。
「大人になった後に空が飛べるのか――。確かに大人になって色んなとこに行けるようになったけど――。ははっ。」
おじいちゃんは結局。どこかに行っちゃたよ。私が届かない、私が見えないとこに――。
「おじいちゃん頑張るから見守っててね」
空高い所から一人の男性が女性を見守っている
「○○ちゃんは今日も頑張っているな」
女性の頑張っている姿を見て喜んでいる。男性の背には立派なはねが生えている。男性ははねを授かった。翅を――。
「天使の羽じゃないけどこんな翅でも見守ることしか出来ないけど。どこでも見守ってるから。大丈夫。――ちゃん。」
わしはどこにもいかんから――。どこに行ってもこの翅で――。
「よしっ。頑張るか」
成蝶する人間 @Shiraseoka
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