SF未来戦記 アルマゲドン・レスキュー
小川桂弘
第1話 承前及び各種設定
(承前)
この小説は、22世紀中盤の西暦2150年の太陽系が舞台のSF小説です。
太陽系第4惑星である火星。地球の10分の1程の小さな惑星は、遂に人類の開拓地として不適であるとの判定を受けた。
地球域国家連合は、火星開拓計画を中断し、植民者に地球への帰還を通告した。
その後に起きた不可解な火星における政変、突然の火星艦隊による地球ラグランジュ点の宇宙コロニーへの奇襲攻撃。
唐突に人類の歴史上初めての惑星間戦争が幕を開けた。
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これ以後の設定解説については、読みたい方だけが読んで下さい。
別段、読まないと本編の内容がわからない訳ではありません。
(人物設定:地球域国家連合:通称国連:略称UN)
・ジェイ・エムデン中尉、本作の主人公で、年齢28歳の地球生まれ、国籍はドイツ連邦共和国。
少しだけ気難しいけれど善良な青年です。
強烈で圧倒的な性格と能力の母親に育てられたため、いろんな意味で身の程をわきまえています。
・ンドロウワ特務少佐、ジェイと共に通常型巡洋艦エンデバー号に乗り組んでいます。
身長は2メートルに近く、鎧の様な細長く分厚い肉体を持つ年齢不詳の男性です。
見ればわかるアフリカンで、スキンヘッドの漆黒の肌、異様に彫りが深い顔に煌めくオレンジ色の虹彩と白目が強烈なコントラストを醸し出しています。
彼は常に冷静で、社交的とは言い難い冷淡の一歩手前の性格の持ち主ですが、宇宙船の操縦は文句なしに評価S。
ジェイは、ンドロウワ特務少佐を嫌っていると思い込んでいますが、実は怖がっているだけです。
・セオドア・アーキンソン大佐、ジェイ達の所属する火星遠征艦隊の巡洋艦戦隊を統括する主席編隊長です。
アメリカ合衆国テキサス州出身の55歳。白人種で身長は180センチ程。
南部訛り全開の口汚い男で、陸軍か海兵隊を希望して国連統合軍に志願したものの、宇宙生活者を歩兵のままで過ごさせる程、地球域に宇宙生活者は多くないため、不満たらたらのままに宇宙海軍に配置転換された後、士官学校に無理やり投げ込まれてからはメキメキと頭角を現して気が付けば大佐にまで昇進。
まあ、敵と戦えるのなら何でも良いかと最近思い始めた好戦的な人類の代表みたいな男。ブートキャンプの教官だった頃の癖が全然抜けてないヤバイ奴です。
・畝迫朱里大尉、ジェイの元恋人で日本人。
年齢等は不明。宇宙海軍に所属してはいるが部署も不明。
いつも陽気で、料理上手で床上手。おまけに話し上手の聞き上手。
彼女が2か月間の同棲の後に”任務だから”と書置きを残して雲隠れした後、ジェイはこの世の終わりの様に落ち込んだ。
ある意味、ジェイが宇宙海軍に引っ張り込まれた理由を作った張本人です。
・ファンデルアーネム中将、火星遠征艦隊の総司令官。
年齢は公式には65歳、身長185センチ程の、見事に逞しく静かな雰囲気の白人で、胸に大きな十字架を何故か吊っているので、熱心なクリスチャンの印象があるが、彼が聖書の喩えを使うのを聞いた者はだれ一人としていない。
国籍はオランダ、正しくはネーデルランド王国で、先祖はアーネムあるいはアルンヘムの領主だったと言うが、本当かどうかはわからない。
独特のユーモアのセンスがあります。
・パトリシア・フォーサイト少将、火星遠征艦隊の支援部門の司令官。
アメリカ合衆国出身の女性将官。年齢は公式には55歳とされているが、外見はどう見てもティーンエイジャーの少女にしか見えません。
ファンデルアーネム中将とは古い知り合いみたいで、彼の事を”おじさま”と呼びます。
細身で、身長は155センチ程。遠目には金髪の美少女ですが、近くから見ると特徴的なアイスブルーの双眸に全ての印象が持っていかれてしまいます。
・オカフェ中尉は元ナイジェリア現ニジェール・イボ共和国出身の長身で黒い肌のアフリカン、エーリンナ中尉はギリシア共和国正しくはヘレネス共和国出身で、白い肌黒く長い縮れた髪で瞳はすみれ色。
二人は偵察巡洋艦戦隊のパイロット達で、ジェイと仲が良い友人。
・ポーラ・メルカルフェ少佐
偵察巡洋艦スカーレット号のパイロット。イングランド連合王国出身。
透き通る様な異様に白い肌、金髪で薄い緑の虹彩で美声を誇る美女、しかしながら近寄りがたい雰囲気に満ちています。
宇宙海軍の7不思議と呼ばれており、通称は”不死身の女”・・・。
(人物設定:火星共和国:略称RM)
・アルチュル・バロワン少将(元フランス人)
火星共和国宇宙海軍のトップ。慎重さと大胆さと知性を兼ね備えた名将ですが、圧倒的な物量の地球宇宙海軍に対してはどうしても不利な戦いを強いられています。
この人も独特のユーモアのセンスがあり、火星共和国宇宙海軍と言う正式名称を嫌い、火星遊撃隊(マーズレンジャー)と自分達の艦隊を呼称してます。
・ケイトリン・マクグルー中佐
木星宙域連合から移籍してきた女性。年齢経歴等は不詳で、バロワン少将が彼女を一本釣りして、宇宙海軍にスカウトした後も経歴を明らかにはしていません。
”女性の過去を知ろうなんて無粋な事はしないで”と言う彼女の言い分に、火星共和国政府はスパイのレッテルをベタベタ貼っていますが、バロワン少将以下はそんな事は柳に風と無視しています。
・石丸怜二中佐、サビーネ・バレンタイン中尉
電磁投射艦(スリンガー)ミスマルのパイロットと砲撃手で歳の差カップル。
常に好戦的な怜二に、穏やかなサビーネはかなり困ってます。
(宇宙艦設定)
・通常型巡洋艦(D型及びE型)
艦首に軸線砲と呼ばれる核融合炉直結のガンマ線レーザー砲を装備した宇宙軍艦で、全長はD型で120メートル、E型で130メートル程で大体1万3千トン程度の重量です。
平たい鏃の様な形をしていて全面に強化外殻を装備していますが、これは主にレーザー砲の攻撃を逸らすため。
軸線砲以外に、多数のミサイルと、レーザー副砲、E型のみレールガン、PDLCと呼ばれる対空レーザーを装備しています。
熟練者は一人で操縦と攻撃を熟せるけれど、それでも二人で役割分担をした方が効率が良いのは間違いないみたいです。
・偵察巡洋艦(S型)
艦首核融合炉をまるまる使う新型探査装置と呼ばれるトップシークレット装備を付けた巡洋艦。
攻撃面ではミサイルや副砲の数も少ないため通常型に劣るが、砲撃の手順が簡素になっているため、一人で全てを熟す事ができます。
新型探査装置は門外不出の装置なので、地球艦隊以外にこの艦種は存在しません。
・電磁投射艦
こちらは火星オリジナルの巡洋艦。雷神級と呼ばれています。
細長い200メートルにも及ぶ船体は、ほぼ全長が電磁カタパルトであり、その周囲を何百周も回して物体を加速する能力は驚異的。
防御面や加速性能は通常型に比べて劣りますが、攻勢時にはとても頼りになります。
・駆逐艦
全長600メートル、重量100万トンに及ぶ巨大な宇宙軍艦。
機動性による回避はガン無視。分厚い強化外殻と、リフレクターと呼ばれるレーザー防御機構で相手の攻撃を防ぎ、圧倒的な攻撃力と手数で敵を粉砕しようとする。
形状は先端は砲弾型で、後部までほぼ円柱。
実用一点張りの姿は、優美さとは無縁で、この艦種が戦いに勝利したとしても誰も褒めないだろう単なる暴力の権化、力業の極致の軍艦です。
・揚陸母艦
これも巨大な軍艦。中央部は巨大な砲弾型で、その周囲に円柱型の6つの巨大な構造物が連結した動く巨大宇宙ステーションみたいな代物。
加速力は絶望的に乏しく、運動性はそれに輪を掛けて乏しい。
火星遠征艦隊の中軸にして、究極のお荷物だが、これを火星宙域のラグランジュ6点、通称ユートピアに運び込むのが遠征目標の第一段階の目標です。
全高750メートルで、リング直径はほぼ1キロに及び、満載重量は2200万トンに及びます。
・工作母艦
ナノ鍛造装置と呼ばれる超科学的錬金術マシーンを内蔵した、計り知れない価値を持った軍艦。どんな岩石や汚泥であっても物質変換で有用な物質に作り替えてしまう事ができます。
(科学技術設定)
・核融合炉
夢の技術である核融合炉は、21世紀後半でようやく実用化できました。
それは強力な磁場で高圧を加える事によってエネルギーを抽出する装置で、発生した熱を量子熱等換装置と呼ばれる21世紀前半に基礎技術が成立した代物で電力を得ています。
惑星の大気と比べてかなり薄い密度の水素や重水素を、内燃機関の様に圧縮、臨界、熱等換を繰り返して電力を得ています。
・ミサイル
この時代のミサイルは、最高で数十分程度しか磁場絶縁が不可能な小型核融合炉搭載の宇宙艇と言える代物で、自己航走または母艦からの誘導で標的に突進します。
加速は最大で250G程度に達しており、ランダムに加速を変えて追い縋ります。
最後には、自らの核融合炉をオーバーロードで自壊させる事による100メガトン相当の核爆発あるいは後述の爆装レーザーの発生で敵艦艇の破壊を目論みます。
・爆装レーザー
20世紀末にアメリカ合衆国で計画されたスターウォーズ計画と呼ばれる、ある種の誇大妄想的な軍事構想の中で研究された核兵器を利用してレーザー光線を発生させる技術を焼き直した代物。
軸線砲のガンマ線レーザー砲がまさにそれで、ミサイルも爆装レーザーを照射して標的を破壊する事ができます。
このレベルの出力のレーザー照射により発生する高圧下では、どんな物質であろうとユゴニオ弾性限界を超えてしまうため、固体が液体の様な挙動を示すようになります。
つまり、入射角さえ適切であればほぼ全ての物理的防御は不可能と言う事になるのです。
・昇華プラズマ
自然界には存在しない、高エネルギープラズマを”冷却しない状態で結晶化”した非常に不安定な半固体物質。
その生成のためには大量の電力が必要で、保管や運用に細心の注意が必要だが、その有用性は高い。
西暦2150年時点では、主な用途は国連宇宙海軍の軍艦の艦載兵器の弾頭用ではあるが、金星近くの巨大発電衛星群の近くで、大量の昇華プラズマが作成され、火星の惑星改造用に保管されていいます。
・レールガン
この時代のレールガンは衝突エネルギーで相手を貫通または粉砕する様な物理兵器ではない。電磁加速は単に目標近くの軌道に投射される弾体を送り込むための手段であり、それらが直撃しないでも内部に封入された昇華プラズマが127ミリ口径の砲弾でさえも10メガトン相当の高エネルギープラズマ爆発を引き起こす事ができます。
・発電衛星
意外な事に、この時代の主要なエネルギー源は核融合発電ではなく、太陽あるいは木星のエネルギー輻射を利用した発電衛星です。
例えば、たくさんの焚き木に恵まれて生活している山奥の一軒家を思い浮かべて下さい。そこの煮炊き物のために、それでもガス管を引くべきだと思うでしょうか?
宇宙時代の人たちはそうは考えませんでした。
この時代の輻射発電は、21世紀に存在していた量子ドット加工されたシリコンのソーラーパネルよりも更に発電効率が高く、85%の変換効率で、材質は特殊なポリマーの表面と鉄やアルミの合金の芯でできているため、製造やリサイクルもごく簡単。
ちなみに、太陽は言わずもがなですが、実は木星も凄いエネルギー輻射を発生させる天体です。
核融合炉を必要とするのは、軍艦や高エネルギーの発振を求められる一部の製造加工施設のみです。
・ナノ鍛造装置
前述の工作母艦に搭載されている謎の装置。
国連の厳重な管理下に置かれており、その秘密を探ろうとした企業や団体には死の制裁が、国家には、エネルギーの供給や技術提供の停止等の死活問題的なペナルティが課せられてしまいます。
特にこの世界では、全世界の人口の凡そ9割である100億人が、各国の建設する巨大建造物メガストラクチャーに居住しているため、発電衛星からの電力供給が途絶えた途端に地獄の様な混乱が発生する事になります。
それでも、国家ぐるみのハッキングは発生しており、甘く見て実行してしまった国家は国連から除名を強制されて困窮しています。
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では、本編をお楽しみ下さい。
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