彼女は取られたくない

エリートぱんつ

第1話

      ブー  ブー  ブー

 起床の時間を知らせるスマホのアラームを止め、俺はスクリーンに写っている日付を確認する。

       4月7日 月曜日

          6:30


 「今日から高校生か…」新しい環境へと身を投じる高揚感と若干の緊張を感じつつベッドから出て大きく背伸びをする。まだ若干の寒さの空気が体を覆う。体調は悪くないな、とそんなことを思いつつ部屋を出て一階のリビングに降りていく。


 「おはよーご飯できてるわよ」

 「んーおはよ、あれ父さんは?」

 「もう出勤したわよー、透也とうやの入学姿が見れなくて残念がってたわよ」

 「それはお気の毒に」

 

 母親と会話をし、椅子に座り朝食を食べ始める。テレビではお天気キャスターが今日の天気予報をしていた。

 「北陸では冷たい風が吹き、今年は例年より寒く桜が咲くのはもう少し後になりそうです。」


 ウチの住んでいる市は全国でも指折りの桜観光地であり、毎年この時期になると通学路や近所の家の庭などに植えられている桜がぽつぽつと咲き始め4月の中旬となると満開になりお祭りが行われている。


 通学しながら桜を楽しむのはもう少し後だなと思いながら俺は食べていた朝食の残りを口に詰めごちそうさまと言い2階の自分の部屋へと行き、登校の準備をし始めた。

 しばらくして、俺は準備が終わり一階へ降りてきた。


 「ハンカチティッシュは持ったの?忘れ物な

  い?」

 「俺は小学生か!大丈夫だよハンカチも持ったし、ティッシュも持ったし、忘れ物は多分ないよ」

 「そお、ならいいけど」

 「お母さん後で美紗都さんと一緒に行くからね」

 「あぁ、了解。じゃあ先行ってきます。」


 母親との会話を済ませて家を出て歩いて駅に行き、電車に約20分間揺らされながらも高校に着いた。校門には入学式と書かれた看板が置かれており教師が保護者の案内や新入生への挨拶をしていた。俺は校門をくぐり抜け、人たがりのある玄関の方へと足を運んだ。


 「さて、俺のクラスは何組だ?」


 クラス表は玄関に掲載されていた。一学年は合計八組あり一組から六組が普通コース、七組と八組が、勉学に力を入れる特進コースとなっていて、入試の際の点数でクラスが別れる。俺は人に揉まれながらも一組から自分の名前を探す。え、八組から探さないのって?バカなことを聞くんじゃない。俺は勉強が苦手なんだ。ただでさえこの学校は進学校で入試も難しいと言われている。この学校を受験すると言った時は先生も親もそりゃ驚いていた。しかし必死こいて勉強した結果見事に受かった訳である。だから俺の名前が特進の組にあることはまず無い。ほら三組に俺の名前があった、と自分の名前を見つけたと同時に後ろから誰かに肩を組まれた。


 「おっはー、来るのはえーな」

 

 いつも聞き慣れた声に俺はすぐにその人物が分かり返事を返した。

 

 「おはよ、恭介は何組だった?」

 「透也と同じ三組だったわ。これで合計四年間一緒だな」

 「何気に一緒だよな」


 肩を組んできたのは浅川恭介あさかわきょうすけで恭介とは中学の三年間ずっと同じクラスだった俺の親友だ。

 この学校を受験したのも恭介がここを受けるから俺も受けたという感じだ。

 

 「早く教室行こうぜ。登校してきた時結構可愛い子多かったから楽しみ」

 「恭介、彼女に怒られるぞ」

 「ん、あぁ一週間前に別れたわ」

 「…」

 恭介は女癖が悪い。しかしそれが許させているのは恭介がイケメンだからだろうか、いやイケメンだからと言って許されてはいけない。そう、いけないのだ。

 

 「いいからいくぞ」


 あいあいさーと抜けた声で答える恭介と共に玄関を後にする。その時俺は八組に“廿楽紗奈つづらさな”という名前があるのを確認し教室へとむかった。



 

 


 


 




 






 


 


 



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る