第42話 公安との接触
草加部はウォーキングに出た。
真夜中の住宅街。
玄関を出て鍵を締め、懐中電灯を点けた。
点きっぱなしだと景色に紛れて目立たないので、点滅モードに切り替える。
スイッチを5回半押しすると切り替わる。
点滅モードにした懐中電灯を右手に持ち歩き始めた。
上り坂を歩いて行った。
3分ほど歩くと少し大きい通りに出た。そこを右に曲がるとさらに大きな通りに出る。
北へ向かった。
左側には携帯ショップ、大型のホームセンターが並んでいる。歩道は広めに整備され街路樹も並んでいる。街灯もありまずまず明るい。
懐中電灯は要らないと感じる。
ホームセンターの前の歩道を点滅する懐中電灯を持ちながら歩いていると、後方からの自転車のシャーという音に気付く。
けっこうスピードが早いからだろうか。すぐに草加部の横に到達した。
“びっくりした。こんな夜中に自転車? まあ、俺も人のことは言えない。”
“えっ! サラリーマン?”
半袖の白いワイシャツにスラックス。薄めの黒いショルダー形のカバンを背負っていた。
抜かしながらこちらを見ている。
“えっ、何?”
その自転車のサラリーマンは、ホームセンターを過ぎたところの交差点を国道に向かって左折した。
草加部はウォーキングを続けた。草加部がイメージしているコースは、この交差点を真っ直ぐ。
“こんな時間、俺の方が怪しい。”
“そうだよな。”
けっこう広い歩道を進む。
左側には大型のショッピングセンターがあり、その敷地内にはカーショップ、映画館がある。
向こうから赤色燈の光が見えた。夜の街に広がるように。
“警察だ。”
“職務質問とかされるのかな?”
パトカーが正面から近づいてくる。
素通りして行った。
“助手席の人はこっち見てたな。”
“止められないんだな。”
そのまま進む。ここまでで12分が経った。
とにかく真っ直ぐ進むと、急に道が細くなり歩道も狭い。街灯の数が少なくなったのか暗く感じる。
“へえ~、この辺ってこうなったんだ。”
草加部が中学生の頃は、ここは山だった。今ではこんなに綺麗な住宅街になっている。
そのまま、少し下り坂になった道を進む。S字のようなカーブになっている。
意外に車通りはあった。
そのまま進むと右側に公園のトイレが見えてきた。
“公園になったんだ。” 以前はここも山だった。
この公園の向こう側は、草加部が通っていた中学校だ。
“この辺で折り返そう。”
来た道を戻り始めた。少し上り坂になっている。
薄暗い歩道を歩いていると、うっすらと人が歩いてくるのが見えた。
“へえ~人も歩いてんだな~”と思いながら点滅している懐中電灯を持って歩く。
“相手はライトに気付くだろう。”
と、狭い歩道のなるべく右側を歩いた。
向こうは車道側を歩いている。
“えっ! さっきの自転車の人?”
“自転車を置いて歩いてんの?”
“んっ! こっちを見てる。”
草加部は懐中電灯を長く持っていたが短く持ち直した。
草加部側に寄って来た。
“何?”
男の目線は草加部の顔と懐中電灯を交互に見ていた。
車道側に戻った。
すれ違う。
“ふう~ なんだった?”
「ナイトワーカーズさん。」
“えっ?” “なんで知ってる?”
草加部は振り向いた。
髪は短髪、やせ形、白いワイシャツにスラックス。薄めのショルダー型のカバンを背負っている。体は引き締まっているように見える。
「ナイトワーカーズの草加部さんですね。」
“答えていいのか?なぜ知ってる?”
驚きを隠せなかった。
「怪しい者ではありません。」と、男は丁寧な感じで警察手帳を出した。
「はい、なんでしょう?」
「そこの公園でお話しできませんか。」
「分かりました。」
2人は公園に入った。
住宅地の公園、薄暗いところで2人は立ったまま向き合う。
2:04分
ーつづくー
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