第39話 御呪い(おまじない)
草加部は掃除をしながら隠れキリシタンのことを想像していた。
掃除をさぼってスマホをいじる。
宮城県にも隠れキリシタンの里と呼ばれている所がある。
宮城県と岩手県の県境付近で、宮城県と岩手県にまたがっている地区が鉱山地帯だったらしく、伊達政宗公の時代に製鉄をさせたらしい。
製鉄の際に鉄鉱石がよく溶けるように”おまじない”を唱えていたらしいが、そのおまじないこそが、キリスト教の祈りの言葉だったという話しだ。
調べてみると、殉教地が実在する。本当にあった話なのだ。
”おまじない(御呪い)”
調べてみると、魔法や呪術といった意味合いがある。
実際には人智を超える力を持つものではなく、人々の心の安定や願いを叶えるための言葉や行為をさしているということだ。
”じゃあさ、大沢君が呟いていた”ゴリラ”は、おまじないってこと?”
”そういうことだよ・・・な。”
草加部の解釈ではこうなった。
”大沢君って呪術使い?” これは飛躍しすぎだ。
2:23分
トラックがエンジンブレーキとブレーキで速度が落ちて曲がろうとしているのが音で分かった。
ここからは見えない。草加部がスマホをポケットに入れ、ホウキとちり取りを手に持って、確認のために荷降ろしホームに向かった。途中で見えた。配達用のトラックが規則的に停められている合間を覗くようにすると見えた。
グリミー4号こと大森だ。この大森も3号の能見との”グリミー会”で夜間作業員の悪口を聞こえるように言っては悦に入っている。
紛れもなく、向こう側に行った人だ。
トラックのバック音が鳴る。入場テーマだ。
草加部が掃除道具を置きに休憩室の方に向かう。大沢君も音で気づいたか構内に出てきた。
「来た。」と草加部が声をかけたら、
「はい」と眠たそうな目で、ボソボソ言っていた。
すれ違いざまに聞こえてきた。
「ゴリラ、ゴリラ・・・・・。」
やっぱり、ゴリラって御呪いだよな。
草加部には分かった。本人がまだ気づいていない才能を。
そして、いつもの如くボーリングが始まった。
3:21分
相変わらずなグリミー4号こと大森は、ゴン、ゴンと高得点で終わったらしく悦に浸り、
「ウギィーギーウギッ」と満足げに片付け始め、「いや~いや」と運転席に向かって行った。
この場合のいや~いや~の意味合いは分からない。とにかく口癖なのだ。
グリミー大森のクルクル白髪頭で少し前かがみにガニ股で歩く後ろ姿が見えた。
4:12分
”グリミー会”も無事に終わったらしく北日本便の中沢さんが戻ってきた時に、
すり抜けるように帰って行った。
グリミー3号こと能見は、今日はグリミー5号の沢木が休みだったので、その代わりで、すぐそこの角のセンターの担当だった。
さすがにまだ出発しないでいたが、
「ウギャーギー」とグリミー会の余韻が残っているのか調子に乗っていて、
「沢木の野郎、すぐそこなのに、よく分かんねえ奴だ!全然余裕なんだよ」と、
誰に言っているのか分からないが、自分はちゃんとやってるんだというのをアピール的に言っているようだった。
どうやら、中沢さんに言っていたようだった。
白髪でリーゼントの中沢が事務所に向かってくるのが見えたようだ。
”向こう側に行ってしまった、グリミー化した偏った者の性なのだろう。”
中沢さんに、それが聞こえていたようで、
「あいつ早いよな。いや、早いのはいいんだけどさ、みっともねえからコンビニで足上げて寝るの止めてもらいたいんだよ。」
「なに、そんなことしてんの!」とわざとらしく言い、「すぐそこなんだからさ、そんな早くいかなくてもいいんだよ。」と、
顔を赤らめて目を細めてニヤニヤしながら話している。
”嬉しいんだろうな~”
草加部と大沢は、”真直ぐに接車”されているのを確認し、バーを外し、空台車を運び、荷降ろしを始めた。
少し時間が経ち、グリミー3号こと能見は出発した。
”別にいいんだけどさ、そんなに変わらなくないですか?時間。”
そして、北日本便の荷降ろしは終わり、仕分け作業も順調に終わった。
ドレッドヘアの緩めの感じのグリミー沢木がいない分だけ平和だった。
ーつづくー
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