第37話 呪物-JUBUTSU
22:54分
グリミー大森の1回目の横持ちの対応が終わり、発送のトラックも出発した。
朝方にはパレット物がいつもより多く入るのでスペースの確保にも気を使った。こういう段取りがいざという時に役に立つ。
「大沢君、パレットを置くところは頭に入れとけよ。」
「はい、大丈夫です。余裕ありますから。」
「じゃ、OKだね。」
「はい、じゃあ受付に行きます。」
「あっ、そうだ、忘れてた。」
大沢は受付に行った。
草加部は、北日本便が何時頃になるか休憩室のパソコンでチェックすることにした。金曜日は寄らずに集約店に直行することがある。その時の気分なのだ。週末は疲れが溜まってるので、その確率が高い。
パソコンの画面に出た。
集約店に持って行く荷物も積んでるので、おそらく来ないだろう。
草加部はいつもの席に座りスマホをいじる。
“そうだ、カケルさんに贈り物。”
“暗殺計画”
ひっそり企んでいた。
殺意を抑えきれないでいた。
“呪物”をプレゼントして、
その呪いの力で・・・。
草加部はスマホで“呪物”を検索してみた。
“あるんだ、こういう通販サイト。”
“The・JUBUTSU(呪物)”
草加部の表情は殺意に満ちていた。恐ろしく、醜くく、目付きにも現れていた。
“どういうのがあるんだ。こういうのはあからさますぎる。
プレゼント用のはないかな。
数珠。・・・これいいな。”
大沢が戻ってきた。
休憩室のドアを開けながらガラス越しに草加部の様子が見えた。
“何?この空気。気持ち悪い。”
草加部が大沢に気付き、「どうもね。」と声をかけた。
大沢は、「あっ、いえ。」と言って、手を洗いに台所に向かった。
手を洗い終わり、いつもの席に戻りながら、草加部のスマホの中身が目に入った。
“(呪物)って書いてる? 何? えっ!”
“さっきの空気感。”
草加部は隠すつもりはなかったが、サイトを閉じようとした時に見られてしまったようだ。
スマホを閉じ大沢君を見る。“何?その顔!”
「大沢君どうしたの?何かあった?」
「えっ!いやっ、草加部さん、呪物ってなんですか?」
「んっ、あ~これね。カケルさんにお守りをプレゼントしようかと思って調べたんだ。」
「えっ?カケルさん。」
そうだ、そういえば、まだ言ってなかった。
「まだ、言ってなかったな。ほら、こないだ大沢君が言ってたじゃない。カケルさん辞めるって。それで仁田さんに聞いたらさ、」
と、昨日の話しの内容を説明した。
「所長に確認したら、そうだって言ってた。だから、金運アップのお守りをプレゼントしようかと思ってんだ。」
“さっきの空気感”
大沢君も驚きは隠せなかったようで、少し間が空いたが、
「そういうことですか。本人は深刻でしょうからね。」
「よし、順番に行くよ。
まず、北日本便が来るなら24:10分頃。でも寄らないような気がする。
次は、来週の火曜日の朝礼で所長から話してもらうけど、グリミー連中がその時から反発勢力になる可能性が高い。だから、護身術を毎日5分ずつ練習することにしたから。」
と、仁田さんに話した内容を同じく説明し、同じように練習した。
「いい感じだ。疲れちゃうからこれで終わり。」
「はい、わかりました。」
このあと、クワガタ虫を子供達にプレゼントの話しをした。が、
「小説は読まない。」と言われた。
大沢君が考えてる顔をして、
「もう少し練りましょう。」と、仁田さんと同じことを言った。
「ところでさ。」と草加部が口を開いた。
「自動で消滅って何?」
「えっ?あっ、あ~~あれですか。いやいや遊び心ですよ。」
と、大沢はニヤケながら笑って答えた。
「うん。なかなか面白かったよ。いい仕事だ。
同じように今日の話しも連絡しておいて。超極秘扱いで、よろしく。」
「わかりました。」
話しが終わり少し待機という形を取ったが、やはり北日本便の中沢さんは寄らなかった。二人は食事を済ませ、少し寝た。
24:41分
草加部が目を覚ます。
タバコを吸いに行った。大沢君はまだ寝ていた。
今日は晴れていた。星も見え、月もはっきりと見える。空を見ながらタバコを吸う。
“所長は決断してくれるだろうか。”
“数珠を注文するなら受け取りはコンビニにしよう。家とか車に入れたくない。”
“コンビニは会社の近くのあそこだな。”
“火曜の朝礼次第だな。発表なるか。”
“相当な迫害らしいからな。カケルさんも堪ったもんじゃないよな。”
タバコを消した。ホームに上がる階段を昇り休憩室に向かった。
ーつづくー
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